ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜楽譜の難易度表について

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今の曲が仕上がってきて「さあ、次は何を弾こうかな」と思ったときに、楽譜出版社の難易度表などを参考にする人も多いでしょう。

ところが、この難易度表があまり参考にならなと感じている人は、たくさんいると思います。でも、全く使えないというわけでもなさそうですので、そのあたりを見ていきましょう。


曲の難易度を何で判断するか

楽譜の難易度表について見る前に、普段の選曲の際に、どういった基準で判断していますか?ピアノを習っている人なら最も多いのは「次はこの曲にしましょう」などと言われて、ピアノの先生が決めるパターンかもしれません。
これが良いことだとはそれほど思いませんが、生徒の実力を把握している先生の提案なら、難易度という点においては極端に外していないと言えるでしょう。
また選曲のレベルも、今回は生徒の実力より少し難しく・発表する目的なので余裕を持たせて少し簡単に・発表目的だけど難しいものを・簡単だけど曲中に重点目標がある……といった感じで、自在にコントロールしてくれている指導者もいるでしょう(もちろんそんなこと全く考えていない指導者もいるでしょう)。

思ったよりも簡単

そうではなく、自分で選曲をするときはどうしていますか?

CDなどのピアノ演奏を聴いて「この曲は弾けそう」「これは今は無理かな」などとわかる人は、よほどの実力の持ち主であり、普通はあまり見当がつかないと思います。
それは、本当は難易度の高い曲を簡単だと思ってしまいがち…とは限らず、実はそれほど難しくない曲を、聴いただけで無理だと思い込んでしまうこともあるようです。

楽譜を見ての判断でも言えます。ペラペラと数ページをめくってみて、「これは今の自分のレベルにピッタリだ」なんて分かる人は、結構凄いですね。
でもこれも聴くのと同様に、普通は判断が困難です。音符がぎっしりと並んでいたり、シャープやフラットが沢山あるだけで、「これはダメだ」なんて思い込んでいる人もいるかもしれません。逆に、隙間があいているような曲なら、簡単に弾けると思ってしまうこともあるでしょう。

このように、よほどのピアノ熟練者でないと、曲の難易度と自分のレベルとのうまくかみあった判断は困難なので、楽譜出版社の難易度表が頼りになるはずなのですが。
では実際の難易度表はどうなっているのか見てみると……


楽譜の難易度表を見てみよう

楽譜の難易度表の分け方と、実際の曲はどのレベルにランクされているのかを見てみましょう。
ここでは日本で一般的で誰でも手に入れやすい全音楽譜出版社(略して全音)と音楽之友社(略して音友)を中心に取り上げてみます。(手持ちの楽譜があれば、見比べてみるといいと思います)

基本のレベルわけと実際の曲

全音は大きく3段階を、6段階(ピース版も)で、音友は大きく3段階をそれぞれさらに5段階の計15段階で分けています。

全音楽譜出版社 音楽之友社
基本段階 6段階(初・中・上級の3段階をそれぞれ2段階)で区分けしている。 15段階(初・中・上級の3段階をそれぞれ5段階)で区分けしている。
難易度表 初級 第1課程・初級 第2課程
中級 第3課程・中級 第4課程
上級 第5課程・上級 第6課程
初級 (E1〜E5)
中級 (M1〜M5)
上級 (H1〜H5)
記号と表記 楽譜の背に★の数で
中級第3課程なら★★★
1曲売りのピース版では易しい方からA・B〜Fと6段階
注)ピース版は以前はA〜Dの4段階だったようです
表紙一枚をめくると、記号で表示されている
収録曲にあわせて段階で E3〜M2 などと
安川版の大きな「メトードローズ」などの裏表紙の裏面には、わかりやすい表が掲載されているでしょう。
曲集難易度例1 J.S.バッハインヴェンションとシンフォニア  全音ピアノライブラリー
J.S.バッハインヴェンションとシンフォニア 全音ピアノライブラリー

中級第3課程と中級第4課程
バッハインヴェンションとシンフォニア―原典版
バッハインヴェンションとシンフォニア―原典版

M1〜M5(中級の1〜5)
曲集難易度例2 メンデルスゾーン無言歌集  全音ピアノライブラリー
メンデルスゾーン無言歌集 全音ピアノライブラリー

中級第4課程と上級第5課程
メンデルスゾーン無言歌集
メンデルスゾーン無言歌集

E5〜M5(初級の5〜中級の5)

このような分け方になっています。6段階と15段階ではかなり異なった難易度表にも思えますが、大きく初級・中級・上級という3段階の区分というのは、どちらにも共通しているようです。

曲の難易度は適当か

しかし、問題となるのは実際の曲や曲集に対しての難易度の付け方でしょう。そこでピアノレッスンで使用されることが比較的多いものを二つ例にあげてみました。(曲集難易度例1と2)

例1は「バッハのインヴェンションとシンフォニア」です。表を見ていただくとわかるように、これは両出版社ともに中級レベルの難易度をつけています。ほぼ同じといっていいでしょう。
そして、実際に弾いた人ならわかると思いますが、この付け方はだいたい妥当なところでしょうか。2声のインヴェンションでも初級というには少し難しいですし、3声は人によっては苦労するかもしれませんが、上級レベルとまではいかないでしょう。

例2は「メンデルスゾーンの無言歌集」です。どちらの曲集も無言歌と呼ばれるもの全てを収録しているわけではないのですが、代表的な曲が入っている点では同様です。
ですが、難易度の判定はかなり違うようです。全音は6段階で4と5にまたがっていて中級から上級ですが、音友は15段階の5から10(E5〜M5)で、初級の終わりから中級の終わりくらいとしています。

これはかなりの違いなので、実際に収録されている曲をみてみましょう。当サイトでも曲目解説で紹介している「ベニスのゴンドラの歌 op.30 6」は、どのくらいのレベルでしょうか。メロディーを美しく歌うように表現するには、ピアノを始めたばかりの人では余裕がないでしょうが、決して難しい曲ではありません。ブルクミュラー25練習曲を弾いている人なら、十分に弾ける曲です。
ですから、この曲単独では、初級の上くらいに位置づけてもいいでしょう。事実、全音のピース版ではA〜Fの6段階中でBとなっているので、これは妥当だと思います。ところが、全音の無言歌集の曲集になると6段階で4からですから、かなりの違いです。

この例2のメンデルスゾーン無言歌集に限って言えば、音友のE5〜M5の判断の方が無難だと思います。他にも多数の曲が収録されていて、かなり難しいものもあるのですが、上級レベルというほどの難曲は見当たらないように思います。

1曲のピース版について
上記のメンデルスゾーンの例ではピース版は妥当な難易度でしたが、これも曲によって合っているかは異なります。「黒鍵」「革命」「別れの曲」「木枯らし」などのショパンのエチュードは、全て最高難度のFにされていますが、一般的には「別れの曲」と「木枯らし」は難曲に入るものの、「革命」は難曲というほどでもなく、「黒鍵」は意外に弾きやすいものです。
他の例ベートーベンの「ソナタ1番」とドビッシーの「版画より雨の庭」は、同じDになっていますが、曲の質は全く異なるものです。しかも、一般的には「雨の庭」の方が、難易度が高いと思われます。
このように、ピース版の難易度もひとつの目安だと思って、前後に1レベルの幅があると思っていていいでしょう。

難易度表をどのように活用するか

上記ではたった2つの例を見ただけですが、これだけでも楽譜の出版社によっての難易度の付け方の違いがあるのがおわかりいただけたでしょう。また、実際にピアノで弾いたときにはもっと感覚的に判断するので、難易度表との誤差を感じる人も多いと思います。

他の例をあげると、全音はツェルニーの練習曲50番は上級5課程60番は上級6課程と順番に並べています。
ところが、音友はツェルニー50番と60番をともに、H1〜H4と同レベルに判定しています。かなりの違いですね。
これも実際に弾いた人ならわかるでしょうが、ツェルニーの50番と60番を同等と感じるかは人によって異なるでしょうが、難易度的には大きな差はないと思われます。

でも全音の分け方も悪くないと思います。ツェルニー30番からを第3課程から順に位置づけることによって、ピアノ学習者にはわかりやすい表になりますし、先の目標が見えやすいという利点もあるでしょう。もしかしたら、昔にツェルニーの練習曲で基準を決めてから、難易度表を作成したのかもしれないですね。

このように、楽譜出版社のよって曲にどのような難易度をつけるかは、かなり異なります。ですから、有名な曲なら複数の難易度表を参考にしてみるのも、ひとつの方法でしょう。
また、数字などでの表した難易度では、曲の質や表現の難しさまでは表せません。上記の表を例にすると、インベンションとメンデルスゾーンをどちらも中級としても、どちらが弾きやすい曲なのかは、弾く人によって違うでしょう。

他にも、音符が楽譜上にたくさん並んでいるようなピアノ曲でも、弾いてみると意外に弾きやすい場合もあります。理由としては譜読みが面倒なことと弾けるかどうかは別問題ですし、奏者の手に合っていることもあるでしょう。それに、どんなに音符がいっぱいの曲でも、その瞬間に弾いている音というのは、それほど多くはないものです。

まとめ

難易度表を見て選曲する場合のまとめです。

全音楽譜の難易度表を活用するときは、前後に1つの幅があると思っていていいでしょう。中級第3課程に属していたなら2〜4のレベルの認識です。

音楽之友社の15段階難易度は元から幅をとって付けてあるので活用しやすいですが、人によって感じ方には差があるので、ひとつの目安だと思いましょう。

結局弾いてみないと普通は分からないものです。楽譜出版社の担当者や編纂者の方も、実際にすべて弾いているわけではないでしょうし、ピアニストに意見は聞いているかもしれませんが、そうだとしてもそのピアニストの個人的な判断です。主に指の動きで判定の場合あれば、音楽的な表現の難しさも考慮している場合など、曲目によっても違うでしょう。
ですから、「自分がこんなに難しいと感じた曲が、難易度表ではこんなに簡単な位置づけになっていたなんて…」などと思う必要は全くありません。逆に、難易度表で上位に位置づけられている曲を弾くことと、ピアノが上手く弾けることとは、何の関係もありません。

ご注意
楽譜の難易度で実際の曲がどのレベルに属しているかは、手持ちの楽譜や資料を中心とした内容で掲載していますので、楽譜の出版時期によっては変更されている可能性もあります。
上記のメンデルスゾーンの例ではピース版は妥当な難易度でしたが、これも曲によって違います。 当サイトの楽曲や教則本や練習曲紹介のページでも、★の数で一応の難易度をつけていますが、これもあくまで単なる目安です。楽譜出版社の付け方とは異なる場合もあります。

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