ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜教則本考察 グローバーピアノ教本

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グローバーピアノ教本 3
グローバーピアノ教本 VOL.3

初歩初級から中級手前程度まで使えるアメリカのグローバーピアノ教本シリーズをみていきましょう。

アメリカのデビット・グローバーによるグローバーピアノ教本シリーズは、教本を軸として小曲集や併用曲集、テクニック、ドリルブックなど多彩なラインナップのシリーズ教本です。
ここでは、シリーズの核となる「ピアノ教本」と、シリーズ全体の印象についてみていきましょう。


グローバーピアノ教本の内容

概要

シリーズ全体としては、導入編とVOL.1〜VOL.6までの構成となっていて、程度としては幼児の初心者から中級手前程度まで使えるシリーズです。

ピアノを学ぶ初級の段階から楽典や和声を強く意識させているのがこのグローバーシリーズの特徴だと言えます。例えば、ピアノ教本vol.3では含まれている曲の程度としては初級の短い曲であり、ブルクミュラー25練習曲などよりも簡単なものですが、音程や調の解説とそれに合った曲を弾くような構成になっていて、楽典と実技を両面からピアノと音楽を学べます。

曲の長さと特徴

例として、ピアノ教本VOL.3を見ていくと、1ページから2ページの曲が多いのですが、3ページの簡単な変奏曲や協奏曲の編曲.物も含まれています。音符が大きめで見やすいので、どの曲もページ数よりは短く感じるでしょう。

例として、“ピアノ教本VOL.3”の各曲を見ていきましょう

楽譜はだいたい読めてピアノは少し弾けるけれど、しっかり弾くのは初めての方にはピアノ教本 VOL.3くらいから(または余裕を持つためにはVOL.2から)始めることもできます。
各曲には重点的な練習のテーマ設定がされている場合が多く、曲を弾く前段階の小さな練習曲がついている場合もあります。
では、ピアノ教本VOL.3の内容を見ていきましょう。

赤いドラム(交差)
手と手が交差するように弾く(インターロッキング)の練習のための曲です。リズムとクレッシェンドの練習にもなります。
子象の行進(3連符)
基本的な和声でできている短い曲です。3連符のリズムとしっかり弾きましょう。
戴冠式(3連符)
こちらも3連符の曲でいろんな曲に見られるような3連符のアルペジオ曲になっています。ペダルの練習にもなる曲です。
凧のうた(黒鍵)
黒鍵に指を慣らすようなための曲で、このグローバーシリーズの特徴でもあります。ダンパーペダルを踏んだまま弾くというのも面白いですね。
トランペット吹き(移調)
この曲の前に移調の説明を簡単な移調演奏の練習があり、この曲で実際の曲の中に同じテーマで調の違うところを感じて弾くようになっています。
オアシス(短和音とペダル)
この曲の前に短和音の説明と練習があり、この曲で実際に短和音と和声音階が使われている曲を弾きます。ペダルもソフト(シフト)ペダルとダンパーペダルの両方を使う練習です。
ミンカ(変奏曲)
主題の後に変奏を弾いていく、変奏曲の練習です。とても小さな規模の変奏曲ですが変奏曲の大まかな形を理解するのは十分な曲となっています。
イ短調の協奏曲より
VOL.3の教本の最後の方は名作曲家の紹介と演奏になっていて、これはグリーグのピアノ協奏曲の簡易編曲版です。調は原曲と同じイ短調なので雰囲気を味わうことはできます。
悲しみ・農夫のダンス
こちらはカバレフスキーの紹介と練習で、1曲目の悲しみはユニゾンの練習、2曲目の農夫のダンスは和音のバランスと表現の練習になっています。

特徴と有効性

VOL.3は初級くらいで弾ける教本でありながら、広い音域とペダルを効果的に使う曲が多く、ピアノの楽しさを実感しやすい教本となっています。

譜読みがしやすい
初級教本としては広い音域と使っている曲が多いのですが、音符が込み入った複雑なリズムは少ないので、初級者が譜読みに苦労しない程度に弾けるようになっています。
幅広い曲想
リズミカルな曲が多く、基本和声で簡素な曲や黒鍵だけの曲、短調や和声短音階の曲、そして名作曲家の曲と幅広い曲想のピアノ曲を含んでいます。
また各曲の前には楽典的な説明と簡単な練習曲を配置している場合もあり、曲での重点目標がわかりやすい構成になっています。
指使い
曲や練習曲には音階、アルペジオ、和音に基本的な指使いが書いてあるので、初級者は迷うことなくこれらを習得することができます。原則的に守って弾くといいでしょう。
ペダル
ペダルの指示が初級教本としては多くあります。これらはペダルを使うことによってピアノの響きを初級段階から実感するためであり、またピアノを弾く楽しさが実感しやすいでしょう。
技術
VOL.3の教本では当然ながら難しいテクニックが要求されることはありませんが、手の交差やスタッカート、和音の弾き方などを学ぶことができます。
音楽の知識
教本の中には和音や音程、音階などの知識が適度に入っていて、説明が丁寧でわかりやすいため、ピアノ曲や練習曲でそれらの楽典の知識と確認しながら弾くようになっています。知識と演奏の両面からピアノを学ぶことができます。

このようなところが、グローバーピアノ教本(VOL.3)の特徴でしょうか。単に曲を弾いていくだけの内容ではなく、総合的にレヴェルアップしていくような内容になっていると言えるでしょう。


少し気をつけたい点

上記のような特徴を持ったグローバーピアノ教本ですが、少し気をつけながら使うことも必要です。以下にポイントをあげてみましょう(以下は、VOL.2などの内容も少し含めた注意点です)。

音階的な動きが少なめ
ピアノ教本のVOL.3では、和音や分散和音の曲は多いのですが音階的な動きが少なめですので、これ1冊では少し物足りない印象もあると思います。(そのために、併用のテクニックなどがあるとも言えます)
イラストや曲想が少し馴染みにくいことも
日本人の一般的な感覚では少し馴染みにくい曲想の曲があるように思います。例えば、VOL.2では「祈り」という曲が2曲入っていますが、イラストように祈っている場面はいかにもアメリカの教本といった感じであり、人によって異なりますが日本の小学生には少し馴染みにくいかもしれません。他にも「クイーンをたたえる歌」や「シルバーベル」などといった曲もありますが、教本には特に説明もないので指導者がおおよその意味をわかっている必要があります。
使う年齢を考慮しましょう
紹介したVOL.3もまだ初級の段階ですが、和音の転回や長短調、移調などの説明も多く、VOL.2やVOL.3教本の曲を弾けるくらいの方でも年齢によっては十分に本の内容を理解できないこともあるかと思いますので、指導者が生徒の年齢や理解度を十分の考慮して使うといいでしょう。
シリーズ全てを使うと高額に
グローバーピアノシリーズは、教本の内容を十分に理解しながら弾き進めるため、またより幅広い音楽体験のために、併用曲集やテクニック、小曲集、ドリルブックなどがあり、一緒に使いながら進めるとより効果的です。
特にドリルブックをVOL.6まで使うと、基本的な楽典の知識は無理なく理解できるので教本と一緒に使うこともおすすめです。
しかし、シリーズ全てを使うと生徒の教材費負担はかなり高額になってしまうことも事実ですから、教本を軸に適度に併用するといいでしょう。

こんなところに気をつけてみるとよいでしょうか。シリーズに全部を使用するよりも、生徒の進度に合わせて小曲集やドリルブック、または他の曲集や教本などを併用するのも効果的です。


効果的に使用するには

このグローバーシリーズのような教本とドリルブックなどの併用スタイルは、内容がしっかり関連しているので楽譜の理解度を向上させながらピアノを弾くことに非常に効果的です。
実際のレッスンでもドリルブックと教本の内容を関連を確認しながら、知識とピアノ演奏が直結したものとして生徒に実感してもらることができると思います。

既に他の古典的なピアノ教則本(「グルリット初歩者のための」や「バイエル教則本」、「メトードローズ教則本」など)を使用している生徒には、このグローバーピアノ教本を併用の曲集として使用するのもひとつの方法です。古典的な教本とは異なるタイプの曲が多く収録されていて、特に和音を弾くことが多いグローバーは幅広いテクニックを初級段階から体験することにも役立ちますし、音楽の基本的な知識を身につけることもできます。

このような内容のピアノ教本ですから、子供だけではなく中学生や高校生、大人の初級者にも使いやすいのですが、こうした総合的な教本は指導側にもしっかりとした音楽の知識が備わっていることが大事ですから、ただ単に曲を進めていくだけのレッスンにならないように、有効に活用したいものです。
先生が生徒に使う場合や独学でピアノを始める方は、教本VOL.1〜VOL.6のどの程度から始めるのか、実際に楽器店などで確認してみるといいと思います。

尚、アメリカの総合系ピアノ教本シリーズという意味では、こちらのページで紹介しているバスティンピアノベイシックスのシリーズなどもありますので、初級者の方などや指導者の方は見比べてみるといいでしょう。

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