ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜特集バイエルを考える3〜それでも使うとき

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教則本考察特集
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これまでみてきたように、バイエルはピアノの初歩教則本としては、適していないといえるでしょう。
しかし、全く出番が無いかというとそうではありません。

私もバイエルは手元にあります(あるから内容を書いているのですが)。それはバイエルでレッスンをして欲しいという希望が、時々生徒からあるからです。
以下にその例をあげてみます。


大人のピアノレッスンでの希望

ピアノ初心者や初級者にバイエルを使用していないのですが、それは原則であり全ての場合ではありません。
そのひとつの場合が、大人の方からのバイエルを指定された時です。これが一番多いでしょう。

大人の方からのバイエルでピアノレッスンをして欲しいという希望は、意外と少なくありません。多くの場合は、理由も似ています。
それは、「子供の頃にピアノを習いたかったけど習えなくて、友達がバイエルを持ってピアノ教室へ通っているのがうらやましかった」というものです。

この話を最初に聞いたのは、高校生からピアノをはじめた人からでした。いろんな曲集から高校生でも退屈しないような初歩ピアノ曲を選曲して、順調に上達していると思っていたのですが、その高校生はある日バイエルをやりたいと言ってきたのです。
もちろん、バイエルについては説明をしました。しかし、高校生の小学校時代のあこがれを優先させたい思いましたし、弾くピアノ曲の決定は生徒にあると思うので意見を尊重します。

これと似たようなケースをもっと年配の大人の方でも遭遇しましたし、他のピアノ指導者の方にも、同じようなことがあったと聞きます。皆がバイエルをやっていた時代というのは確実に存在していたので、それにあこがれをもっていた人が多くても、納得はできます。
ですから、このケースではバイエルを使ったピアノレッスンをします。他の曲も常に併用が望ましいことや、バイエルの欠点の説明も少しします(少しがポイントです。バイエルをやりたい方に欠点をたくさん言うのはやはり避けるべきですね)。

バイエルを普段使っていない先生でも、指導者から見れば簡単に弾ける教本ですから、あらかじめ勉強しておくのにも時間はかからないでしょう。


生徒の親からの希望

生徒の親(多くの場合は母親ですが)から、「初心者なので、バイエルからお願いします」または「バイエル終了くらいは弾けるようにしてあげてください」と言われることがあります。どちらの言い方も、初歩教材はバイエルが当然であるように思っています。

これは大人の方が自身がバイエルをやりたいケースと違って、少し難しいケースです。バイエルは使用しないことと、その理由を説明しても、わかっていただけるのはどれくらいの確率でしょうか。また、その場で納得したようなことを言う親もいますが、本心ではない人もいるでしょう。

親が「バイエルで」という理由は、なんとなくわかります。一番多いのは、ピアノの指導者のケースと同じで、親自身が昔、バイエルでピアノを習ったからでしょう。ですから、息子や娘がバイエルをやってくれると、同じでうれしいのかもしれませんし、以前に弾いたことがあって耳慣れているので、何となく落ち着くというか安心するのかもしれません。

それが、子供の弾くピアノが聞いたこともないような名前の教則本や曲集を使って、聴いたことのないメロディーや変わった和声の曲が響いてきたら、何となく落ち着かないでしょうし、もしかしたら不安なのかもしれません。

この親の希望では、無理にバイエルを否定するのも難しいので、親との会話で様子を見て判断するしかありません。一応、バイエルはピアノ上達の近道ではないことや、上達のためには他のものを使用した方が効果的ということを、あまり強調しない程度に説明しますが、バイエルがピアノ教則本の決定版と思っている人を、初対面で十分に納得させるのは至難の業なので、ほどほどにすることにしています。

親のバイエル要望を断れなかった場合は

納得が得られずに、子供をバイエルでレッスンすることになったとしたときの対策は考えておきます。
ひとつはやはり常に別の曲集や曲の併用。そしてもうひとつが、バイエルをできるだけ早く終わらせることです。

別のものを併用するときは、こちらがメインだということを生徒に強調します。これでバイエルはサブ教材ということになり、バイエル的音楽にはまるのを防ぎます。

次のバイエルを早く終わらせるというのは、1曲の演奏が完成しないうちに次の曲へ進むわけではありません。同じようなタイプの曲を飛ばすのです。
例えば、全音版のこどもバイエルの番号でいうと、30番と31番が見開きで左と右にあります。この場合、31番を弾いてもらい、30番はカットとします。子供の生徒さんには「31番が弾けるから30番は飛び越えて大丈夫」というような説明をします。これでいやがる子供はいません。

そうやって少しカットしながらバイエルを進めると、かなり早く終わらせることができます。バイエルを全部弾くより、ピアノの上達には他の曲を弾いた方がいいわけですから、悪いことどころか良いことだといえます。また、曲を飛ばしても親からのクレームは今のところありません。


いかがでしょうか。これが主にバイエルをピアノレッスンで使用するときの例です。大人自らの希望のときは、比較的じっくりとバイエルに取り組むこともありますが、次の教則本としてツェルニー100番のようなタイプのもの、要するにバイエルの延長線上の教則本や練習曲集に進むことを希望する人は、少ないかもしれません。その時は、バイエルを終了したらもっと良いものへ移行すればいいでしょう。
ただ、バイエルを終了したから、他の違った曲集などへの移行というのは、思ったほど簡単ではありません。バイエル的単純奏法に慣れきってしまうと、実際には簡単なのに音域が広い曲や和音が連続するような曲を、難しいと感じてしまうこともあるからです。
ですから、上記のバイエルを使うような状況でどちらのケースでも共通することは、レッスンの主軸をバイエルに置きすぎないことでしょう。

続きの「ついた先生がバイエルをつかっていたら」はこちら→特集バイエルを考える4