多くのピアノ指導者が使用していると思われるバーナム。そこで、初級時期や基本テクニックの習得と確認に、曲集などと併用されることが多いバーナムピアノテクニック1についてみていきましょう。
バーナムには「バーナムピアノテクニック」と「バーナムピアノ教本」のシリーズありますが、このコーナーでは「バーナムピアノテクニック1」について述べています。ここからはバーナムというのは、特に断りの無い限りはバーナムピアノテクニック1のことを指します。
バーナムの概要
アメリカの作曲家でありピアノ教育家の エドナ メイ バーナム 氏によるバーナムピアノテクニック(A DOZEN A DAY 1日12曲)は、アメリカではかなり前から多く使用されている教本であり、日本にも中村菊子氏の訳と紹介によって出版されるようになってから、急速に普及しました。
バーナムピアノテクニックは、ピアノの基本技術の習得を目的とした短めの曲のテクニック練習教本であり、一方のバーナムピアノ教本は、初歩の楽譜の読み方からメロディーや伴奏を伴う曲を順番に弾いていく、曲集教則本のようなタイプです。
テクニックには単純な線で描かれた、曲想をあらわしたつもりの絵のようなものが、教本には挿絵がついています。
日本では教則本や曲集は別のものを使用して、バーナムピアノテクニックを併用される人が多いと思いますがので、ここではバーナムピアノテクニック1について述べていきます。
内容を確認
テクニック1は5個のグループから構成されていて、各グループは12曲からなっています。
多くの場合、各曲をレガートとスタッカートで弾くように指定しています。以下に簡単に内容を。
音階系 | アルペジオ系 | 和音系 | 指練習や連打や動き系 | 総合練習系 | |
---|---|---|---|---|---|
グループ1 | 1 6 | 2 9 10 11 | 3 4 5 | 7 8 | 12 |
グループ2 | 2 3 9 10 11 | 4 | 1 5 | 6 7 8 | 12 |
グループ3 | 3 5 11 | 8 | 1 2 7 9 | 4 6 10 | 12 |
グループ4 | 2 11 | 5 | 1 6 | 3 4 7 8 9 10 | 12 |
グループ5 | 4 11 | 6 7 | 1 2 5 | 3 8 9 10 | 12 |
大まかに5種類に練習曲のタイプを分けてみるとこの表のような感じです。どれに分類するか迷うものもありますが、それほど正確でなくても、おおよその傾向はつかめるでしょう。
分類した表や各曲のつくりと、実際に弾いてみた感想を踏まえて、内容を見ていきます。
曲の構成
- 大譜表両手で広い音域も使用します。
- 各曲は4から8小節のものが中心で、長くて12小節くらいです。
- 全てハ長調です。ハ長調の調子の範囲と半音階ときのみに、臨時記号(シャープやフラット)がでてきます。
- 各曲に標題がついていて、一応それを表現するように弾くことになっています。
- ほとんどが初見で弾けそうな簡単な曲ですが、中にはそうではないものもあります。
- 音階練習に偏ることなく、アルペジオや和音・腕の大きな移動が必要な曲なども多く含み、ピアノを弾く必須テクニックを早くから慣れることを目的としているようです。
- 曲によってはペダルも仕上げに使用します。
- グリッサンドが1回でてきます(無理をしないようにと書かれている)。
- 各グループの最終12番が、まとめの役割をしているようです。
以上が簡単にまとめたバーナムピアノテクニック1の内容とまとめです。
有効性と不満点
生徒の使用感や実際にレッスンで使用した印象なども踏まえての有効に活用できた点と、使いにくさを感じた点をあげてみます
有効に感じる点
ハノンなどの指練習本とは違って総合的な内容で、ピアノの基本的なテクニックである音階やアルペジオと和音といったことが網羅されているので、初級レベルの人には年齢に関係なく、これらの習得と動きの慣れに大きな効果があるでしょう。このテクニック1だけを完全に弾ければ、かなりのピアノテクニックレベルです。
また、ある程度ピアノが弾けているような人でも、こういった技術の再確認と準備運動にも使えます。意外と困難で苦手とする動きなどがあるかもしれません。
連打や3度の進行など、普通は初級レベルでは出てこないような内容も出てくるので、これも面白さのひとつです。
各曲の始めにワンポイント的な注意点が書かれていて、これはかなり大事です。アルペジオなどの指使いを間違って覚えている人にも、注意を喚起する役目があります。
どの練習曲も短いので、数種類のテクニック練習を短時間に何度もできます。ピアノのテクニックを上達する上で一定回数の反復練習は必要な場合が多いので、バーナムはこの点でも有効です。
不満に思う点
このバーナムを他の曲や曲集と併用して使用している場合には、それぞれに役割があるので不満を感じることは少ないでしょうが、少し気をつけたいことをいくつかあげてみます。
全てハ長調で書かれていますが、著者のバーナム氏はまえがきで1巻を終えたら移調して練習することを薦めています。しかし、それを指導者が生徒に課すかは本人の実力とも相談ですし、やらないケースも多いでしょう。
そうだとしたら、全てがハ長調ですから他の曲集で多くの調の練習や、近親調への移調練習くらいをしていれば良いのですが、「バーナムは簡単に弾けておしまい」という日々の練習では、上達には遠いものがあります。
これは教則本よりも指導の問題でもあるのですが、総合テクニックを初級からここまで出しているのならば、多くの調をもっと盛り込んだ方が現実的のだとは思います。
もうひとつはバーナムピアノ教本とのかかわりです。教本の1とテクニックの1では内容の程度に差があるので、併用するときは教本の1とテクニック導入書やテクニックミニブックとの組み合わせの方が妥当だと思われます。これはシリーズものとしては選択の際に迷うので、単に番号がついていればいいというものではないでしょう。
続きはこちら→バーナムを使う2の使用のコツへ。