ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜特集バイエルを考える2〜どうして使うの?

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教則本考察特集
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バイエルはト音記号・両手の位置固定・ハ長調・似たような音型で構成されていて、練習しても他の曲に対処できないようなピアノ教則本を、なぜ現在でも多くのピアノ指導者は生徒に対して使用するのでしょうか?


じゃあ何でピアノの先生はみんな使うの?

そうなのです。バイエルの欠点はピアノ教育の専門家でなくても、使用したことのある人や中身を見たことのある人ならすぐにわかるのに、なぜ今でもたくさんピアノ指導者によって、ピアノ教育の現場で使われているのでしょうか。

理由はいくつかあると思います。

ピアノの先生自身が、バイエルでピアノを習ったから

実はこれが最も大きな原因だと思います。日本では以前は現在よりももっと多く使われてきたので、現在のピアノ指導者もバイエルで習ってきた人は多く、自分が習ったものを、何となく教えている人もいるでしょう。
また、自分が学んだ教則本を否定する(またはされる)のが、いやな気持ちもあると思います。

他のものを探してはいるが、結局はバイエルになってしまうというピアノ先生

これは先ほどにもあげたように、他のものをもっと探して勉強するという姿勢が無い人の場合もありますが、変わりの決定的なものがないという人です。

バイエルに欠点はあるが良さを活かして工夫もしているというピアノの先生

具体的にどんなふうにバイエルの欠点を補うかというと、ハ長調が多いという点については、バイエルを移調して勉強するように指導。同じような曲が多いということについては、バイエルを変奏して対応するなどです。左手と右手を入れ替えての練習というのもあります。

バイエルはピアノの教育の正統だと考えている先生

日本では昔からバイエル教則本が多く使用されてきたせいか、「音楽やピアノの正統的教育=バイエルを使うこと」だと思っている指導者も多くいるようです。


理由にもならない理由

上記のようなバイエルを信奉しているピアノ指導者の考えを検証してみましょう。

自分がバイエルだったからは問題外

一つ目のピアノの先生自身がバイエルを習ったからですが、これは全く話になりません。自分の習ったものしか教えられないピアノ指導者は、指導者として疑問です。
そんなことをしていれば、習ったことの無いものは教えられ無いことになり、指導できるレパートリーは極端に少ないでしょう。

習ったことのみにしがみついていては、新しいものを吸収できません。常に新しい楽譜を読むのが仕事といってもいいくらいなので、読譜をしない先生は論外です。

変わりが無いのではなく、探していない

次の、他にバイエルに代わる教則本が無いという人。
これも変な話です。そもそもピアノ初心者の決定的な教則本なんてあるのでしょうか。

初心者や初級者用の教則本は数え切れないほどあり、メトードローズ・バーナム・グローバー・アルフレッド・三善メトード・トンプソン・グルリット・ミクロコスモス・フレッチャー・バスティンなど、指の練習系にはリトルピシュナ・ツェルニー・ハノンなど、他にもまだまだたくさんの教本や練習曲集やテクニックの本もありますが、どれも一長一短で、絶対的によいものなど無いのです。
それでも、できるだけ良いものを選択し、中から役立ちそうなものを随時使用していくことを試みる方が、バイエルを1番から順番にやっていくことよりも、何倍もピアノを上達させます。それをやらずに、何となくバイエルを使用するのは、ピアノを指導する人としては不勉強すぎます。

バイエルの良さを生かし、欠点を補うというが

三つ目の、バイエルの欠点を補い良さを生かしているというピアノの先生です。
こういった考えは、最近は以前より多くなったような印象があります。バイエルを批判するよりも、良いところを生かすレッスンとか、いろんな使い方で欠点を補うという考え方です。

具体例を挙げてみましょう。
バイエルの欠点を、他の教則本や曲集の併用で補うというやり方。これは最もな意見であり、曲集を複数同時に進行することには賛成です。しかもこれなら、バイエルに無いようなタイプの曲を弾くので、いいレッスン方法のような気がします。

他に、バイエルを移調や変奏で変化をつけるいうレッスン方法。ハ長調が多いなら、移調して練習することを覚えればいいし、単調で同じようなパターンの曲でも、変奏を考えて変化を付けて弾くというもの。これならバイエルを生かしているように思えます。

この、他の曲集を併用とバイエル自体を変化させるという方法は、どちらも悪くはないように思えます。
しかし、それはバイエルの欠点を気がついている証拠であって、そこまで気がついているなら、バイエルの使用をやめるべきでしょう。

バイエルは正統でも何でもない

四つ目の、バイエルを音楽やピアノ教育の正統と考えている先生ですが、それは全然違います。
既に特集バイエルを考える1 中身を確認で書いたように、バイエルは現在では日本のみで使用されているので、世界の主流でも正統でもありません。バイエルが正統教育なら、世界中の子供達やピアニストは皆、正当から外れた音楽教育をされてきたことになりますが、日本以外の世界中から一流ピアニストは誕生していますし、バイエルをやらなくても趣味でたくさんの曲を弾けるピアノ愛好家はいます。
そもそも、初歩・初級の教則本や音楽教育に「正統」などという概念を持つこと自体が、柔軟性の無い狭い範囲の考えです。


欠点を補うや良さを生かすという発想を転換

結論は簡単です。バイエルの欠点に気がついているのなら、バイエルの使用をやめればいいのです。

他のものを併用するにしても、「バイエルと他の曲集」を併用するのではなく、「他の教則本と曲集」の組み合わせだともっとピアノが上達するでしょう。
教則本はやらないで、「曲集と曲集」でも良いですし、「曲集と随時生徒の希望する曲」でも良いのです。欠点があるものを使用しないで、より良いものを2つ使用した方が上達することは、子供でもわかります。

バイエルの曲を変奏や移調で使用して、変化をつける方法はどうでしょうか。
確かにハ長調で同じような曲が続くバイエルに、変化をもたらすことはできるでしょう。しかし、移調をしても曲中で限られた音域しか使用しないことに変わりはないですし、単純な伴奏やメロディーも同じです。

変奏はどうでしょう。
変奏すれば、曲自体も多少は変化します。メロディーをより複雑にしてみたり、装飾音をつけてみたり、伴奏系を変化させてみたりと、ピアノ学習の幅はでてきます。この変奏の練習自体にピアノ上達の効果はありそうです。しかし、バイエルを弾くくらいのレベルで、自ら変奏は難しいものです。先生が変奏して曲を変化させた教材をつくっても、そんなにいいものがつくれるのでしょうか?

しかも、なぜバイエルで移調や変奏なのでしょう。バイエルから移調は、ハ長調を基本と考えているようなものですし、バイエルを変奏より、もっと身近な曲をアレンジしてピアノを弾いた方が、楽しく上達できるというものです。また、どちらの方法も特にバイエルを使用する理由はありません。

要するに、バイエルを活用すればいいという考えは、バイエルにただ固執しているだけといえます。
それに「バイエルの良さを生かす」の良さは、結局どこにあるのでしょう。ハ長調が主体ということでしょうか、それとも単純な練習曲だということでしょうか?もしそれらがバイエルの良さだと考えているピアノ先生がいたら、ちょっと驚きです。

以上のようなことから、生徒にピアノを上達して欲しいと思うピアノの先生は、すぐにバイエルをやめた方がいいでしょう

続きは「それでも使うとき」はこちら→特集バイエルを考える3