ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜教則本考察モシュコフスキーの小練習曲

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モシュコフスキー20の小練習曲 作品91
モシュコフスキー20の小練習曲 作品91

古典的基礎テクニックのツェルニーなどとは、少し違ったタイプの練習曲を取り入れたいときに、モシュコフスキーの練習曲を使用する人も多いと思います。

以前からモシュコフスキーの「15の練習曲」をツェルニー40番の後などに使用する指導者はいましたが、最近は15練習曲よりも少し難易度が前段階の「20の小練習曲」にも注目が集まっているようですので、このページでは「20の小練習曲」を取り上げてみましょう。


モシュコフスキー20の小練習曲の内容

練習曲(エチュード)というタイトルがついていると、とにかく指を速く強く機械的に動かすためのつまらないものと思いがちですが、これはやはりツェルニーなどの単調で基礎訓練的な練習曲をとにかくやらせれたというイメージからきていると思います。
もちろん、ショパンやリストなどの練習曲は芸術作品でもあり、演奏効果が非常に高いものですが、そういったものは明らかにピアノ上級者向けであり、中級者くらいの人の練習には使えません(曲によっては、がんばれば弾ける曲や何とかなる曲もありますが)。

しかし、モシュコフスキーの「20の小練習曲」は、程度的にはツェルニー30番後半〜40番くらい(傾向が異なるので、本来はこういった単純比較はできませんが)ながら、ロマン派のピアノ音楽の様式を備えていて、ちょっとした楽曲のようですから使いやすい曲集で、ル・クーペ「ラジリテ」やブルクミュラー「18練習曲」、メンデルスゾーン「無言歌集」などを通ってきた方の次の段階として適していまうs。
では、簡単に内容と特徴を見ていきましょう。

曲数と曲の長さ

これは練習曲集とって実は大きな要素だと思われます。20曲というのは練習曲集としては全てを弾くことを目標とできるような現実的で適当な曲数であり、1曲も1〜3ページと短めです。曲集を手にとってみると、ツェルニーシリーズと比べて薄い印象を受けるでしょう。

ですから、1冊全曲を弾き終えることを中期から中長期的な現実的な目標として考えられますし、苦手なタイプの練習曲にも時間をかけられるでしょう。

練習曲のタイプが豊富

この「20の小練習曲」は、単に指を速く動かすための練習曲集ではありません。指を流麗に動かすタイプの曲もありますが、左手が活発に活躍する曲や多声的な音楽の曲も多く、ゆっくりと和音を弾く曲もあります。
また、練習曲といっても単純音型の繰り返しや和声的に単調ではなく、ロマン派的な美しい旋律と綺麗な和声感を備えているのも特徴です。


どう使う?

では、このモシュコフスキーの「20の小練習曲」を、どのように使用していけばいいのでしょう。
程度としては、前述したようにツェルニー30番後半〜40番くらい(全音の難易度表では、★4個です)であり、それくらいの実力の人が、ロマン派練習曲や楽曲の導入や準備段階として、使用できると思います。

他に練習曲を使用していない人は、1番から順番に20曲全てをやってもいいでしょうが、ツェルニー30番や40番などを現在練習している人(既に終えた人も)なら、ツェルニーに無いタイプの練習曲を抜粋で弾いていってもいいでしょう。
例えば以下のような番号はいかがでしょうか。

練習曲1番
両手16分音符の動きの中に、スケールやアルペジオが入っている曲です。動きの質がツェルにーなどとは異なるので、これを132のテンポできれいに弾くことは容易ではありませんが、十分に練習すればかなり効果を実感できる1曲です。
練習曲2番
普通の練習曲にもよくあるような、スケールやアルペジオが組み合わさったタイプの曲ですが、特にアルペジオの部分をきれいな流れで弾くことが要求されるので、よく練習してみましょう。
練習曲4番
左手に動きが多い練習曲になっていて、4声の多声的な練習曲でもある。特定の音を保持する練習や、和音の弾き方の練習にもなる曲。和音の流れがメロディーにきちんと聴こえるように。
練習曲5番
これも主に左手が動く練習曲だが、右手の和音をしっかりと捉えたい。左手は親指を多くつかうが、音に不均衡さが出ないように弾きたい。指定テンポよりも少し速めくらいで弾ければ。
練習曲7番
音階系とアルペジオの組み合わせが多く、典型的な練習曲といった感じだが、古典的練習曲よりも多彩な動きがあるので、少々手ごたえはある曲。スタッカートとレガートの対比や、右手5指の保持音なども重要で、少し時間をかけても良い練習曲。
練習曲8番
比較的ゆっくりな曲で、3声をしっかりと聴いて弾く曲。各声部の流れに気をつけて、縦のラインも大事だがむしろ横のラインも大切。リズムがあいまいにならないように弾くことも必要。
練習曲9番
ピアノの演奏技術でも大切な「3度」が重要な練習曲です。指定テンポまであげる前に、ゆっくりと確実な練習に重点をおきましょう。
練習曲10番
こちらも3声を美しく弾く曲。指の使い方の練習に効果的。
練習曲12番
ロマン派の練習曲らしい動きがかなり入っている練習曲になっているので、まずは丁寧に動きを確認しながら弾きます。この12番のような練習曲をよく仕上げることによって、もっと上の難易度の練習曲を弾くことも楽になるでしょう。
練習曲14番
左手の軽やかな動きと、右手でスタッカートの和音。主に左手の動きを練習するために書かれているが、右手のスタッカート和音の拍感にも注意が必要。また、右手は速い動きにも弾きにくい箇所があるので、しっかりととらえて弾きたい。
練習曲15番
鍵盤をしっかりとつかんで弾くようなアルペジオの練習曲です。全体的に強く弾く曲ですが、手首は柔軟性を保って流れを大事に、アクセントの音をしっかり強調してみましょう。
練習曲17番
右手を歌いながら、左手でアルペジオの弾き応えのある曲。左手は柔軟性を持った動きでなめらかにアルペジオを弾きたい。保持音の練習にもなるので、ペダルなし・ペダルありの両方で弾く練習をすると効果的。最終的にはペダルを適度に入れて楽曲として美しく。
練習曲20番
3度と6度のレガート。しっかり弾きたい曲です。指使いは基本的に守るが、むしろ動き自体が重要。できればよく理解している指導者に見てもらいながら弾いた方が良いが、独学の方は動きの工夫に時間がかかるかもしれない。

こんなところを弾いてみてはいかがでしょう。どの練習曲も美しく弾くということが必要ですので、よく聴く耳が必要です。

練習のポイント

実際に弾いてみると曲想はつかみやすく、特にとまどうことなく練習できると思いますが、どの練習曲でも気をつけたいのは、多声音楽になっていること(横のライン)と和声感(縦のライン)を感じて弾くことでしょう。横と縦が上手くかみ合っているのがモシュコフスキーの特徴でもあり、ツェルニーなどの主要三和音が主体の単純練習曲では体験できないところでもありますから、指や手首の使い方はもちろんのこと、耳でよく聴くことがとても重要です。

細かい音符が続く箇所でも、レガートで弾く場合とレジェーロで弾く場合など曲によって異なるので、技術の完成度を高く目指し、さらにうまく曲想に表すようにしたいものです。
テンポはゆっくりとした曲は指定テンポ前後で、速めの曲は指定テンポで確実に弾けるようでしたら、もう一段テンポアップくらいで練習してみると良いでしょう。


位置づけと補足

このモシュコフスキー20の小練習曲は、本格的なロマン派エチュードの一歩手前といった難易度であり、ロマン派音楽を弾く手の動きの習得に役立ちます。これをしっかり弾けるくらいの実力がついていると、ロマン派の本格的なエチュードに入る前の準備段階としてとても有効ですが、同じモシュコフスキーの15練習曲とは少しレヴェルに差があるので、15練習曲へ進む場合にもワンクッション他の練習曲を適宜入れてみるといでしょう。
例えば、20の小練習曲の後には、クラーマー=ビューロー練習曲やリスト12の練習曲、モシェレスの24エチュード、などから適宜抜粋で弾いて実力をつけて、その後にモシュコフスキー15練習曲、ブラームスのエチュード、ショパンのエチュード、などに入っていけると思います。
こうしたロマン派時代を中心とした練習曲メニューは、ロマン派の大きな曲を弾く上でも非常に実用的です。

そういった意味では、20の小練習曲はピアノをより専門的にしっかりと学んで弾きたいという方向けのような気がしますが、そうとは限りません。
ツェルニーなどと違って、単調な曲を量をとにかくやっていくタイプではないので、一般のピアノ愛好者でも、ときどき曲の代わりとして技術の向上として、取り入れやすい練習曲集だと思いますし発表会などでも中級者が弾いても良い曲です。

ただ、譜読みが速くない人にとっては、ツェルニーのようにスラスラと簡単に譜読みができない可能性はあります。音符は込み入っている印象はありませんが、臨時記号は少し多く、指使いにも気を配らないとうまく弾けないでしょう。
それがモシュコフスキーの特徴でもありますが(20の小練習曲に限らず15番なども)、譜読み時間を短くして、指を動かす練習の特化したいというピアノ愛好者の方は、ツェルニー系統の方が合っているという方もいるでしょう。

また、ある程度ピアノを専門的に勉強する人でも、ツェルニー50番を終える頃になってから、やっとロマン派傾向の練習曲に手を出すという人もいるかもしれませんが、もう少し早い段階でこのモシュコフスキーの小練習曲のようなものを弾きこなせるようになると、ピアノのテクニックと表現の幅がより一層広がると思いますので、ぜひ弾いてみることをお勧めしますし、指導者の方も積極的にレッスンに取り入れてみてはいかがでしょうか。

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