ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜教則本考察 グルリット初歩者のための小練習曲

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グルリット 初歩者のための小練習曲
グルリット 初歩者のための小練習曲

全くのピアノ初心者用の教則本というのは、今日では様々なタイプのものがありますが、このグルリット初歩者のための小練習曲を使う方もいるでしょう。

初心者用の教則本でありながら、図や写真やイラストなどが豊富が現代タイプとは異なるので、中学生や高校生、大人のなってからピアノをはじめる方の導入教則本としても、使いやすいでしょうか。


初歩者のための小練習曲の内容

概要

グルリットはいつくかの初級ピアノ教則本を残していますが、この本は中でも最も簡単な初心者用の本ということになると思います。
各曲には無題で番号がついている曲のみなので、いかにも「初心者用のピアノ教則本」という感じではありますが、曲想やテクニックには各曲に違いがあります。難易度的には初歩から初級ですが、要素としては意外に多くのものを含んでいるので、他の初級教則本と併用して使用することも可能でしょう。

曲の長さと特徴

全54曲からなる教則本ですが、初歩教則本ですから1曲は短かめで、長い曲でも最後の曲の1ページです。全部弾いても30ページという薄い本ですから、初心者の方でも無理なく1冊を終えることができるでしょう。
最初の方の曲は8小節の基本的な音型が続きます。少し進むと、8小節の曲でもリズムの変化や左右の手の対比的な要素も出てきます。初心者の方でも、33番以降は少しピアノのテクニックを感じるくらいになり、次第に流れの良い曲が多くなります。

全体と各曲を見ていきましょう

全体の構成と、全54曲の中から、初心者の方に特に大切になりそうな、いくつかの曲を見ていきましょう。

1番〜10番
両手がともにト音記号で書かれていて、全く同じ動きまたはほとんど同じ動きをします。初心者の方はこの単純な動きで指番号の確認をするといいでしょう。
11番〜20番
11番から左右の手が異なる動きをするようになり、10番までと異なります。最初はゆったりとしたテンポでもいいので確実に楽譜を読み、よく聴いて弾きましょう。指の感覚も大切に。この先をスムーズに進むためには、ここが大事です。
21番〜23番
両手ともにト音記号の最後の3曲です。16分音符もはじめて登場しますが、あせらずに弾きましょう。20番までをしっかりと弾けていれば、それほど難しくはありません。曲の形になってきた感じですから、リズムも大切に。
24番〜29番
はじめてヘ音記号が登場。これは通常のピアノ譜の形なので、ここから新たなスタートといった感じでしょうか。ヘ音記号が初めての人は、この6曲で慣れる練習です。26番は初めてハ長調以外の調性で、シャープが一つのト長調が登場します。
すぐに読める人にとってはあまり練習にならないので、先に進んでも良いかもしれませんが、これまでのト音記号のみの時と響きが異なる点に注目です。一度は弾いておくとよいでしょう。
だいたいここで半分です。ここまではピアノ初心者でも、それほど苦労しないで進めるかもしれませんが、ペースを急ぐことよりも、ここまでをしっかり確実に弾くことが大切です。
30番〜32番
イ短調の30番は短いながらも特に左手に注目。
ト長調の31番は右手に動きがありますが、これも注目は左手です。
32番はフレーズ感を大切に。この3曲はどれも簡単ですが、止まったりミスをしているうちは、次へ進まないようにするくらいの気持ちで、余裕で弾けるくらいまでやってみましょう。
33番
このあたりから少し難易度が上がって、曲らしくなってきます。速度の表示がつくようになり(前の32番からですが)、クレッシェンドやデクレッシェンド(ディミヌエンド)、フォルテやピアノなどの記号も頻繁に出てくるので、それらも含めて譜読みをして演奏する必要があります。
33番はタイの拍感、左手の3度音程など、短いながらも要素が多い曲になっています。
34番
「ワルツのテンポ」と最初に書かれているとおり、3拍子のわかりやすいワルツです。途中から左手の1拍目が付点2分音符(3拍分の音符)になっているので、この音はしっかりと3拍伸ばしている必要があります。このようなことは曲の難易度がどんどんあがっても必要なことですから、この段階からしっかり弾きましょう。
35番
動きがある曲に見えますが、テンポは中くらいで良いので流れを大事に弾いてみましょう。左手の9小節目にはトリルのような動きが出てくるのですが、これも速く必要はありません。
37番
ピアノ曲ではよくある形、「アルペジオ(アルペジョ)」の曲です。左右の手の流れをつかんで弾きましょう。仕上げにペダルを入れてみてもいいでしょう。
38番
これもピアノ曲でよくある形、特定の一つの音を保持したまま他の音を弾く曲です。指をたくさん動かす練習とは質の異なる難しさがあると感じるかもしれません。よく音を聴いて弾きましょう。
40番
弾いてみるとわかりますが、左手がメロディーで右手は伴奏の形です。こういった曲はそれほど多くはありませんが、左手にも右手にもとても有効な練習になります。左右のバランスをいろいろと試してみましょう。
41番
テンポはアンダンテなのでゆっくりですが、右手は4分音符を保持しながらも8分音符を弾く曲です。まず右手だけよく聴いて弾く練習をしてみるといいでしょう。左も合わせてきれいな響きをつくってみます。
43番
これは面白い曲ですね。一時的に小節と異なるような拍感があるなどの工夫があります。リズム感、そして休符も大事に。
48番
落ち着きのある雰囲気を持っている曲で、この小練習曲の中でも最も安らぎのあるような印象です。メロディーは右手ですが、左手の動きにも注目してみましょう。よく弾けたら仕上げにペダルを入れてみてもいいでしょう。
50番
指定テンポがヴィヴァーチェですから、かなり速い曲です。それでも速く弾くのは曲の仕上げの最終段階で、確実性が大事です。きっぱりとした印象を表現できるように弾きましょう。
52番
アルペジオの曲です。最後は連続するアルペジオですから、よく練習する必要がありそうです。アルペジオには指番号がついているので、はじめのうちは難しく感じても番号の通りに弾いてみましょう。この曲がきれいに弾けるくらいだと、実力が向上してきたと言えそうです。
53番
このグルリットでは数少ない音階系などの指の動きの練習曲です。少し難しいと感じる人もいるかもしれませんが、ピアノを弾くために必要な要素が多く含まれているので、確実に習得できるように練習してみましょう。
54番
最後の曲はアルペジオの1ページの曲です。ほとんどアルペジオで構成されている曲ですが、弾いてみるとわかるように、この教則本の仕上げの1曲にふさわしく、雰囲気を持った曲になっています。この曲もよく弾けるようになったら、ペダルを入れてみましょう。1小節または、2拍で踏みかえをします。

特徴と有効性

グルリットの初心者用の教則本ですからそれほど難しい内容を含んでいるわけではありませんが、以下のような特徴と練習することによる有効性が挙げられますと思います。

1冊のボリューム度
初心者用の教則本といっても、子供用だと数冊に分冊されていて各冊ともイラストや写真が豊富であり、わかりやすいという反面、全てを揃えるとかなりの値段になってしまうという欠点があります。
しかしこのグルリットなら30ページで54曲。1冊を終える頃には初心者から初級者の入り口くらいには到達できるので経済的です。また、急に難しくなることもないので、大人の初心者にも合っているかもしれません。
多くの拍子
ピアノの初歩教則本というと、4拍子の曲が中心でそこに3拍子の曲が少しというパターンの教則本もありますが、このグルリットは結構多彩です。4分の4の他に4分の3・8分の6・4分の2・8分の3・が満遍なく入っています。拍子の拍感と少し異なるフレーズの曲もあります。
ヘ音記号が早くに登場
現在では初歩教則本でもヘ音記号が最初から出てくるものが少なくないのですが、このグルリットでも始めからの23曲はト音記号のみで、それ以降の24番から通常のト音とヘ音の大譜表となっています。ヘ音記号がでてくる24番で、一度音符の動きが少なくなるので、抵抗感なくヘ音記号の曲の入っていけると思います。
曲を弾くことへの工夫
初歩教則本にありがちな、同じような音型の似たような曲をたくさん弾かせることを少なくして、さらに両手でのアルペジオや3声部の曲など、初級段階の曲を弾けるように導く課題が収録されています。これらの曲をしっかりと弾いて、さらに仕上げにペダルを少し入れることによって、初級曲へのしっかりとした準備段階になるでしょう。

このような特徴を持っているでしょうか。初歩の教則本ですから簡単に弾ける曲が多いのですが、ピアノ曲を弾くという要素が多いので、次の段階のために実践を考えてつくられている印象です。


不満な点

上記のような特徴を持った「グルリット初歩者のための小練習曲」ですが、現代の多様な初歩教則本達と比較してしまうと、いくつか残念な点もありそうです。

調性が偏っている
初歩の教則本ですのでハ長調が中心になってしまうのは仕方が無いとも言えますが、後半でもシャープやフラットが1個までの調が大半なので、やはり物足りない印象はあります。
音階系が少なめ
技術的なことばかりに意識が集中しないような曲づくりになっているのが特徴だとは思いますが、後半の内容を考えると、もう少し音階系を含んだ曲がいくつかあっても良いような感じもします。アルペジオ系の課題は多い印象ですが、それでも初歩の1冊教則本(1巻、2巻などのシリーズものではないという意味)としては、物足りない感じはするでしょう。
初心者が拍子にとまどう場合も
8分の6や8分の3拍子の曲がたくさんありますが、拍子についての理解は必要になりそうです。4分拍子のみしか弾けない人には、もしかしたら難しい曲だと思うかもしれません。ピアノ独学初心者が使う場合には、少し注意する必要があるでしょう。

不満というほどでもありませんが、こんな点に少しふまえておくといいでしょう。


効果的に使用するには

以上にように有効性と不満点をみてきましたが、どのように使用すると効果的でしょうか。
音符はだいたい読めるけど、ピアノはほとんど初心者だという方は、最初から順番に弾いてみましょう。10番までは左右の手が同じ動き(またはほとんど同じ動き)ですので、指番号に慣れるつもりで確認しながら弾きます。全くの初心者でも、ここまでは問題なく弾けてしまう人も多いでしょう。

11番から左右の手が異なる動きになりますが、一旦2分音符中心に戻るので、難しくもないでしょう。そして24番からヘ音記号が登場して、また一旦2分音符中心になります。このような前半の特徴は、ピアノの楽譜と指番号と鍵盤に慣れる効果があるので、大事に弾いていきたいところです。
あとは最後の54番まで、ご自分のペースで取り組むといいと思います。

他の初歩教則本を使用している場合でも、このグルリットを抜粋で使用するのも効果的です。特に33番以降の中から指導者が選択しても良いですし、少し弾ける人は33番以降の曲を全て弾いていくやり方もいいでしょう。ある程度他の初級教則本を弾いている人は、40番以降の曲をしっかりと弾く練習をしてみると、初級段階への実力が確実に身につくと思います。

既にブルクミュラー25練習曲などを弾ける段階の人でも、33番以降を初見練習や移調練習に使ってみてもいいでしょう。


補足説明

ピアノ初心者のレッスン生、そして独学初心者でも気軽に使いやすいのが、この「グルリット初歩者のための小練習曲」だと思います。現在の教則本のような丁寧な説明などはありませんが、毎日コツコツと数曲を弾いていくだけで、気がつくと初歩から初級の入り口にまで到達できるところが魅力です。
この曲集の最も良いところは、初心者に適度な曲数と本の厚さでしょうか。30ページの薄い教則本1冊なので、楽器店で手にとって中身を少し確認してみても「無理なく進められそう」と多くの方が感じると思います。

ただし、初歩の本としてこれ1冊だけでは、やはり物足りない印象ですので、大人で余裕のある初心者や子供には他の教則本にこれをプラスする、または曲集にこれをプラスするなどの方法がより効果的だと思います。

そういった点も踏まえて、どのように活用するのかは使用者やピアノ指導者の考え方や方針次第でしょう。

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