有効に感じる点
ツェルニーの内容から特徴と有効性を見ていきましょう。
目的がはっきりしている
ツェルニーの練習曲は、どれもピアノ奏法の基本技術の習得と徹底ということに主眼が置かれているので、指が個々に独立されて素早く流暢に弾けること・音階とアルペジオをしっかりとマスターすることが主目的。
基本のメカニックを徹底習得
指の独立性や基本技術を習得しようとする初中級者や、自己流や独学でピアノを弾いているが、自己の技術を見直したい人や再確認したい人などには、大変有効であると思われます。
また、古典ものを弾くときに出会うようなアルペジオや音階をあらかじめ沢山練習しておくという目的にも使用できます。ツェルニーを弾いておくことは、ベートーベンのソナタなどの演奏には、有効性があると思われます。
使いやすさ
同じような練習曲がたくさん含まれているので、番号順に進んでいくとクリアーした動きや課題の再確認にもなります。また、1曲は見開き1ページものが多いので、反復練習が何度もできます。
調号が少なく、音階やアルペジオなどが主体なので、譜読みが比較的容易です。他の曲を重点的に練習しているときに併用していても、負担になりにくいのもメリットです。
不満に思う点
主にツェルニー練習曲自体に関しての問題点をあげてみましょう。先ほど挙げた有効点を逆にとらえているものもあります。
曲が面白くない
主目的が基本テクニック習得とはっきりしているということは、単純なものが多くなってしまうのは必然かもしれません。一応の形式的な曲づくりはされているものの、和声的にも単純で、弾いていて聴いていて良いと感じるものがほとんどないのは事実でしょう。
テクニックに偏りがある
有効性であるピアノ基礎テクニックに徹した感のあるツェルニーの練習曲は、それに偏っているとも受け取れます。作曲された年代が古典の後期からロマン派の初期段階であるため、それ以降に栄えた後期ロマン派より新しい年代のピアニズムを含んでいないのは当然ですが、欠点とも言えそうです。また多声音楽の要素もほとんど含んでいません。
調性に偏りがあるので譜読みが簡単な反面、やはりここでもテクニックに偏りが生じます。どうしても白鍵を使用する割合が多いので、現代から考えると不自然です。
左手の練習不足になりがち
これは多くの人が指摘している点です。ツェルニーはどの練習曲でも、大抵右手に重点が置かれているのは事実です。
ですが、この右手重視については、サイト内の左手特訓講座でツェルニー30番について触れたように、ぎりぎりですが範囲内とも考えられます。
目的を意識した上での使用で
以上にあげたような有効性と不満点を踏まえると、使用する上では目的をしっかりと理解することが大事になりそうです。
つまりツェルニー練習曲は単調であり、譜読みは比較的楽ではあるのに、しっかりと弾くには時間をとられることもありますが、ピアノ基礎テクニックを習得するためのものと割り切って、がんばるという方向性で使用するならば、かなり有効性の高い練習曲ということになります。
はっきりいって面白くないですし(面白いと感じる人もいるでしょうが)、ロマン派以降や多声音楽のテクニックを学ぶことはできませんが、それも承知の上で弾くことに練習者自身が納得するかの問題です。不足気味な他の技術は、他の曲集で補うことも可能です。
そういった割りきりがあって、テンポも指定に近づくことを目標にツェルニーを使用するならば、一般的に言われているようなツェルニーの欠点も、さほど問題なさそうだと思うのですが……
本題はココに
実はそういったツェルニー練習曲そのものについての欠点というよりも、ピアノ指導者の生徒へのツェルニーの使用方法に問題があると思っています。ツェルニーの良いところ・そうでないところを、またどのように進行していくべきかを認識していないピアノ指導者が、バイエル終了後はツェルニーといった感じで、当たり前のように進めていくことが、問題だと思うのです。
そういった問題点を具体例もあげながら考えてみることにします。
続きはこちら→ツェルニーについて3使用ケースからみるツェルニーへ。