ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜教則本考察ハノン2内容を見てみよう

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具体的に第一部からハノンの内容を見ていき、使い方や練習方法も合わせて考えていきましょう。


第一部の指練習はピアノが弾ける人のためのもの

同じ音型の繰り返し練習の第一部がガツガツ奏法になる危険があるなら、使い道が無いのでしょうか?
そんなことはありません。この部分が指のよい運動になることが確かです。しかしすでにご紹介したように、初級くらいの人が弾くメリットは少ないです。

ですから発想を転換してみましょう。この第一部は、すでにピアノの技術がある程度ついている人のためのものだと思ってください。技術力のある程度というのを判定するのは容易ではないのですが、少なくとも初級教則本(グローバーやバスティンの初級、グルリット初心者のための、バイエルなど)をやっている段階ではハノンは必要ありません。
クラシックでいうと、ソナチネアルバムの中に入っているクーラウやクレメンティのソナチネを、少し余裕を持って弾ける人ぐらいからなら、ハノンの第一部を弾いても大丈夫でしょう。

それは、ソナチネをよい動きで弾けるくらいなら、指はある程度動くレベルだと思いますので、ハノンでさらなる強化を目指しても、そこからガクガクとして奏法になる可能性は低いからです(そうだとも限りませんが)。ハノンを併用すれば、指を速く動かす練習に一定の効果があると思います。

使い方としては、曲を練習する前の準備運動的にハノン数曲を使用すればいいでしょう。ゆっくりから始めて、次第に動きを速くするなど自分なりの工夫で弾けばいいと思います。時間としては、5分から15分程度やれば十分です。数十分はやりすぎで、そんなにハノンをやるなら他の練習曲や曲を弾いた方が、ピアノ上達のためには何倍も効果があります。

同じような使い方として、ピアノを少し長期間弾かなかった場合やもうすでに完成に近い指を持っている人でも、ハノンは使えます。この場合もゆっくりから始めて、少しずつ調子をあげていくようにします。スポーツ選手の練習前の軽いジョギングや、シーズンインするときの始動みたいな感じです。


ここまでの説明を見て、「ソナチネアルバムくらいに到達しないとハノンをやらないんですか?」なんて声が聞こえてきそうですが、それも違います。ハノンを使うならという前提での話です。別に使う必然はないので、やらなくてもいいのです。

つまり、ピアノ技術やピアノ演奏というものを見る場合、「指練習曲で筋力やスピードをつけることが優先事項」という方向性で見ているから、無駄に多くの時間をハノンにとられてしまうのです。
ピアノを弾くことの目的がハノンを弾くことでないことは、どなたにも賛成していただけると思います。自分が弾きたいように指が動くならハノンはいらないということです。
つまり曲を普通に弾いて指が少しずつ動いていくように上達していけば、面白くもないハノンを弾く必要性はないのです。

これは楽をしようというわけではありません。無駄で効果の薄い練習をしない方向性というのは、上達を目指す人なら当たり前のことであり、大事なことです。
スポーツの世界でも、昔に推奨されていた「階段のうさぎ跳び」は、効果があるどころか膝や腰を痛める危険が高いことはわかっています。賢明な指導者は、そのようにわかっている「うさぎ跳び」を選手にさせることはないでしょう。

それと似ていて、ハノンを主体とした指強化トレーニングをすることよりも、好きな曲を弾きつつ指が強化されていき、足りないと思ったら練習曲で補う。その補助的役割として、ハノンの第1部の指強化練習を、準備体操や久しぶりの始動などに使っていけばいいでしょう。


全調の音階やアルペジオは使える

さて、第一部の38番までの指の強化的練習の次、39番には全調の音階と40番は半音階、41から43番は全調のアルペジオとなっています。これらは通常レベルのピアノテクニックを身に付けようと思う人にとっては必須の要素で標準装備のようなものなので、第一部の指練習をやるよりも、こちらを早めにやることをお薦めします。これが日常動作レベルまで習得していれば、どの調の曲にも苦労する場面が減るので、指の動き的に楽になります。

しかし、実際にはこの全調の音階以降のページまで到達しないで、ピアノをやめてしまう人や、第一部が終わったらハノンを弾かなくなる人も多いようです。それだけ第一部の指練習に長期間と長時間をとられてしまったという考え方もできますが、ハノン教則本で便利なのはこの全調の音階とアルペジオの章なのです。

当たり前ですが、この全調の音階とアルペジオは、ハノンのように書かれた楽譜なんかなくても弾けます。しかし、指使いを確認しながら弾くのに楽譜があった方が便利なので、この部分は結構使えます。

練習の方法として、音階を毎日の練習で必ずやる必要もないと思いますが、完全に習得できるまでは、毎日長調と短調のセットを1つか2つやればいいでしょう。それほど長時間を費やすのはさけたいところ。
チェックポイントというほどでもないですが、指使いは必ず書かれているとおりで弾きます。音階もアルペジオも2オクターブでも3オクターブでもやりましょう。

やっていくうちに、ハ長調よりも弾きやすい調が数多く存在することに気がつくと思います。ピアノを習うときに、黒鍵を後回しにして白鍵のみの曲(ハ長調が多い)を弾き続けて人にとっては、最初は全調で音階を弾くことは難しく感じるかもしれませんが、慣れてくるとそうではないと実感するでしょう。

また、短調で和声的と旋律的が紹介されていて、最初は難しく感じる人もいるかもしれません。短調も長調と同じでイ短調が弾きやすさの1番ではないのですが、和声的と旋律的短調の違いになれていない人は、イ短調を使って理解を深めておくと、後で他の調を弾くときにも迷いが少ないかもしれません。

追記-音階やアルペジオ練習の補足
このコーナーはハノンの内容と使う場合について述べているので、音階練習やアルペジオの練習を毎日することを特に推奨しているわけではありません。上記の「通常レベルのピアノテクニックであり標準装備」とあるのは、ピアノが専門的な人にとっての話です。趣味でピアノを楽しく弾く人にとって、全調の音階などは弾けなくても全く問題ありません。
ただ、全調の音階を弾いてみると、いろんなことが見えてくるので、一度はチャレンジしてみてもいいでしょう。曲を弾くときの手助けにもなります。
その場合でも、一日の練習のうち音階に多くの時間を使うのはもったいないので、数分から15分程度で十分だと思われます。もちろん、集中的に音階練習をする時期があってもいいでしょう。

テクニックの準備〜トリル系はほどほどに、和音の動きは慣れていこう

44番以降は、トリルと和音系テクニックが中心です。これらの動きも、全調の音階とアルペジオと同様に、通常レベルのピアノテクニックを身に付けようとする人にとっては標準装備的なもので、程度の高いの曲に挑戦するための準備練習といった位置づけだと思います。

ですが、これらの練習をどれくらいするのかは少々迷うところです。もう既に指の動きが一定レベルの人にとっては、これらは流すように弾くだけで、指の調子を整えるような効果しかないかもしれませんが、トリルや和音トリルに慣れていない人にしてみれば、これほど疲れを感じるものもないかもしれません。

そこで、人のレベルによって使い方が違ってくると思います。これらを全部やっておくことの効果はあるのですが、時間もかかってしまうので、
こういったテクニックが初めてまたは、慣れていないという人は、44番から少しずつ少し日数をかけて最後までやっていきます。速く弾く必要はありません。指使いを確かめながらゆっくりと確実に弾ければ先へ進みます。そして日数をかけて60番までいったら、また44番から弾いていきます。これを繰り返して、すべてを身に付けてしまいます。
なぜひとつの曲をインテンポになるまで弾かないかというと、1曲に集中すると同じ箇所の筋肉を使ってしまうので、疲れがたまりやすく腕などを痛める原因にもなります。こういったトリルなどに慣れていない人は、特に余計な力が入りやすいからです。

もうすでにこの手のテクニックをある程度習得してから、この44番以降を練習するという人は、ひとつの曲を重点練習してもいいでしょう。自分が不得意なものを取り出して練習する方が効率的なので、全てをやらなくても良いかと思います。

動き的に習得してしまいたいのは、トリルよりも56や57番の動きです。これらは中程度の曲にはあまり出てこないので、上のレベルを目指す人には必要なテクニックです。特に57番は指だけでなく腕が動きを覚えこむ必要があります。
普段は指が良い状態で動いてピアノを弾けている人でも、このような横の動きの曲に出会ったときには苦戦をするケースもあり、ハノンで先に習得しておくことは、プラスに働くと思います。

どんなレベルの人も一定の期間弾いてこれらのテクニックを確実に習得したならば、これを日常的に弾く必要は、あまり無いでしょう。慣れてしまっても、トレモロなどはかなりの疲労感がある場合もあるので、他の曲の練習に影響がでてきます。ただ、かなり弾きこんでおくと、それなりに持久力もついて効果が実感できるのは確かです。

使い方のまとめとコツ

ハノンの使い方の結論としては、やること自体がマイナスになるということはないのです。むしろ39番以降はピアノを弾く人にとっては、ぜひとも身に付けておきたい技術なので、普段の練習にうまく入れていくといいと思います。

問題はハノンをやるかではなく、良くないピアノ奏法(鍵盤を直角に指先で弾くことや、余計な力があちこちに入っていること)を矯正しないままで、ハノンを続けてしまうことです。これらは、ピアノの指導者がきちんと指導しなくてはならないのはもちろんですが、結局は本人の意識(私はスポーツ分野から言葉を借りて、本人の「内部意識」と呼んでいます)の問題なので、外からの指摘だけでは矯正されないこともあります。
その状態でハノンを、特に前半の単純音型の繰り返しをがんばっても、指に筋力がつくだけで、ピアノが上達することはありません。

時間も重要な要素です。このハノンのようなトレーニングは、やろうと思えば1時間でも2時間でもできるので、つい沢山やってしまう人もいるでしょう。中にはハノンはたくさんやるが、他の曲の譜読みはあまりしないという人もいるくらいです。

しかし、すでに述べたとおり、ハノンは運動的な要素が非常に強い練習曲です。ハノンはピアノで音楽をすることそのものをではないのです。
ですから、ハノンで指やテクニックを鍛えることが、いずれは難しい曲でも弾けることにつながり、曲の表現でも難所を弾けるので、余裕で弾けるんだという先を見据えて練習しないと、ただガツガツとピアノを弾くだけで時間の無駄になります。

また、以上の理由から趣味でピアノを弾いている人にとっては、ハノンは必要ないと思います。ハノンをやらなくても、本来は曲をたくさん弾いているうちに、どんなテクニックも身につくのです。時間効果を考えると、あきらかにハノンは非効率ですから、ハノンを練習に入れても10分から20分くらいで十分でしょう。

同じことがピアノの専門家を目指す人にもいえます。こんなハノンのような退屈な練習ではなく、もっといい練習曲や普通の曲そのもので、指と音楽を切り離さずにピアノが上達していけるなら、その方が良いことは当然です。ハノンを練習に入れるなら、準備運動的に使用したり、逆に曲練習後のクールダウンのようなつもりで少々取り入れるくらいでも、効果は十分でしょう。

それでも指の運動性能を上げたい!という方はハノン移調で指練習

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