実際にピアノレッスンや練習のバーナムを上手に使用するコツを考えてみましょう。
初級くらいの年少の人が使用する場合と、ある程度ピアノが弾ける人が確認的に使用する場合、大人の初級の方が使用するときのレベル別に考えてみます。
初級レベルのバーナム活用
別に本の表題にあるように、一日に1グループ12曲をやらなくてもいいので、3・4曲でも6曲くらいでもかまいません。主にピアノ練習の前に準備体操も兼ねて弾きます。こういった練習曲は正確さが大事です。上手く弾けた感覚がないのに、速く弾いても上達はしません。ゆっくりと確実に弾けたなら少しずつテンポアップします。
レガートとスタッカートの両方を弾く指定がほとんどの曲にあります。これは非常に大切な練習です。本当のレガートは大変に難しいのですが、一応のレガートは簡単だと思います。そして意外に出来ないのはスタッカートの方です。
スタッカートで短めに弾くのには、指の独立した動きが必要なので、こちらが上手くいかない人が初級くらいの人には多いでしょう。少し時間をかけて練習するのがお薦めです。
また初級レベルの人には簡単には完全に弾くのに苦労すると思われる練習課題も存在します。例えば、
- グループ1 の 1番(音階的指練習)10番(ミラー音階) 11番(音階)
- グループ2 の 3番 9番 10番(速い指練習) 11番(音階とミラー音階)
- グループ3 の 2番(3度練習) 4番(連打) 11番(ミラー音階)
- グループ4 の
3番(連打) 4番(速い指練習) 5番(左右交互のアルペジオ) 10番(指練習) 11番(音階) 12番(音階を含めた総合) - グループ5 の 7番(左右交互のアルペジオ) 10番(グリッサンドとアルペジオ) 11番(音階とミラー音階) 12番(指練習)
といったところが、譜読みすぐできるので弾けそうですが、しっかり指の感覚として完全に弾けるというレベルに達するには、難しい人もいることが予想されます。
そんなときも、ただ極端な反復練習をすればいいというものでもありません。数回弾いてみてうまく弾けないようだったら、とりあえずその曲は忘れて先に進んでもいいです。
先に進むとどこかで同じような課題が出てきます。これがバーナムの特徴。短い練習曲を弾いて反復練習ができて、また進むと似たような練習がある。このつくりが初級者のピアノテクニックをレベルアップさせます。
ですので、最初のグループ1からグループ5の12番まで一通り弾いたら、また最初に戻って弾くといいのです。これを一定期間やると、鍵盤操作の基本がしっかりと身につき、いろんな曲を弾くときも効果を実感できるでしょう。
実際にレッスンで子供に使用すると、この1曲の短さが好評です。テクニックや指練習という感覚がなくても取り組めるので、指導する側がうまく導いてあげるといいでしょう。
初級者の心得は、毎日5分で3曲のバーナムです。
既に弾ける人の確認に
ある程度ピアノが弾ける人も、基本的には最初から順番にやっていけばいいでしょうが、せっかくグループ分けもされていることですし、それを活用していきます。
グループのひとかたまりである12曲を、1日に1回というようにやりましょう。難しいと感じる練習曲があれば、初級者のように通り過ぎるのではなく、少し反復の練習を増やします。もちろん同じ動作をやり過ぎると疲れますので、ほどほどですが。
指がある程度動くという人なら困難なものは少ないでしょうが、それでも大事になってくるのは、
- グループ2 の 6番と7番(オクターブの弾きかた)
- グループ3 の 1番(基本和音) 6番(オクターブの弾きかた) 9番(和音の動き)
- グループ4 の 1番(和音の動き) 6番(和音の動き) 7番(オクターブの弾きかた)9番(オクターブの弾きかた)
- グループ5 の1番と2番(和音の移動) 3番(オクターブの弾きかた)
といった練習曲で、オクターブや和音の手や腕の基本的動きを再確認または、きちんと習得することが大事です。簡単だからといって何となく弾くのではなく、動きの洗練さを求めましょう。
そして出来れば全ての曲を移調してみます。簡単な曲ばかりですから、ある程度ピアノが弾けると自負している方なら、それほど困難なことではないでしょう。グループ1個12曲を、一日のテーマを決めて「今日は全部イ長調でやろう」などして、やってみるといいでしょう。これを一定期間全ての調でやれればベストです。
高校生くらいから大人の初級者のために
バーナムテクニックは、線で描かれた子供じみたイラストが載っているので、子供の教本だと思われがちですが、実は大人の初心者や初級者にも効果を発揮するのです。
ある程度の年齢からでもピアノは上達しますが、楽譜を読めたり沢山の曲を知っていたとしても、ピアノの鍵盤操作をいうことに慣れていない人も多いでしょう。そんなときに他の目標とする曲とは別に、このバーナムを併用すると、ピアノの基本テクニックの習得にはいいと思います。初心者でも抵抗感がなく取り組めるのも利点です。
大人は指の動きに固さがある場合が多いので、どの練習曲に重点を置くかは、個々の人によってかなり違います。比較的苦労すると思われるものは上の「初級レベル」であげたリストの通りだと思いますが、最初からこれらを頑張る必要なないでしょう。
逆に出来そうなものから弾いていくのも大人ピアノ上達のコツです。例えば、
- グループ1 の 2番(アルペジオ) 4番(基本和音)
- グループ2 の 5番(アルペジオと和音)
- グループ3 の 1番(基本和音) 7番(6度の進行)
- グループ5 の5番(和音の進行)
といった、指を積極的に動かさなくても弾けて、しかもポップス系の曲にも役立つような和音テクニックの練習曲から挑戦してみて、だんだん増やしていくのも良い方法です。各グループの最終12番もできれば弾いておくといいでしょう。
また大人の方が指を動かす傾向の練習課題をやるときは、スタッカートが難しければ必ずしもやる必要はないでしょう。これも少しずつ挑戦していってください。
- 追記事項 バーナムを弾くテンポは?
- バーナムピアノテクニックを使用するときのテンポについてご質問をいただきましたので、少し触れてみたいと思います。
この本は曲の冒頭に個別にテンポ指定がありませんので、演奏者各自が判断する必要があります。速く弾きすぎて16分音符で乱れてしまっては練習の意味がありませんし、遅すぎてはどの曲もすぐに弾けてしまうでしょう。
ですから、テンポは最初はゆっくりと確実に、それで弾けるようでしたら少しテンポアップしてみます。目安としては4分音符=108〜120くらいで弾けるようでしたら、だいたい良い感じではないでしょうか。それくらいで余裕があるのでしたら、4分音符=132くらいでも弾いてみましょう。さらに余裕があれば4分音符=152〜160くらいで完璧に弾けるとかなり高度な練習にもなってくるでしょう。
しかし、無理してテンポアップするのは逆効果です。確実に弾ける状態からテンポアップをしてみてください。
まとめ
バーナムは使い方によって、その人のピアノ上達に大きな差がでる教則本だと感じます。譜読みに苦労しないですし全てがハ長調なので、ただ弾くのは簡単です。そしてただ弾くだけでもそれなりの上達はします。
ですが、この本の目的をしっかりと理解した人は、そのような単純な練習に終えることなく、自分の手が良いポジションで弾けているかを常に意識して、その上で指の独立性や動きの洗練を求めること、移調練習などにも挑戦することで、飛躍的な上達が望めます。
ハノン的なものとの併用も考え方次第です。両方使用するとテクニックの上達には効果的でしょうが、時間もとられますし効率的ではないでしょう。二つの併用なら目的別にバーナムからは和音系を中心にするなど工夫します。
ただ、バーナムもやはり必須の教則本ではありません。他の曲集などですでに良質のテクニックを習得しつつある人や既にテクニックを備えている人には、必要性は必ずしも高くありませんが、目的や志向にあわせて利用するといいと思います。
前ページバーナムを使う1へ戻る