WP202J ベーシックス ピアノ(ピアノのおけいこ) レベル2
WP203J ベーシックス ピアノ(ピアノのおけいこ) レベル3
楽譜の読み方から幅広い音楽の知識なども習得しながら、総合的に学べる教本シリーズの「バスティン ピアノ ベイシックス(ベーシックス)」をみていきましょう。
初歩・初級段階から総合的な力がつくので、近年は日本でとても人気のある教本で、使われている指導者も多いと思います。バスティンには、ピアノベイシックスのシリーズ以外にもシリーズがありますが、ここでは一般的なピアノベイシックスシリーズの、そして中心となる本である「ピアノ(ピアノのおけいこ)」の主にレヴェル2とレヴェル3を軸に見て行きましょう。
バスティン ピアノ ベイシックス「ピアノ」の内容
概要
このシリーズは、「ピアノ(ピアノのおけいこ)」(総合的な教本)の他に「パフォーマンス(演奏)」(曲集)「セオリー(勉強)」(楽典など)「テクニック(指の練習)」の4種から成り立っています。
その中でも「ピアノ」は総合的なピアノ教本となっていて、シリーズの核となる本です。この「ピアノ」を軸として、他の「パフォーマンス」などを適宜組み合わせて使用すると、ピアノ演奏力を総合的に学ぶことができるようになっています。
「ピアノ」(教本)は、ピアノ初心者の方から使用できる「プリマー」から始まり、以降は1巻〜4巻までのシリーズで、初中級くらいのレヴェルに達するようにつくられています。
アメリカらしいカラーのイラストと一緒に、音程や調の概念、たくさんの調性やコードネーム、曲の形式などについても初級段階から学べるようにつくられいて、ピアノの総合的な教本となっています。
曲の長さと特徴
巻によって少し異なりますが、新しい練習課題に入る前に、和音や音階(スケール)などの丁寧な解説と短い予備練習がついていて、その後に課題の曲を弾く実践のパターンになっています。
予備練習と曲は、密接に関連づけられているので、学んだことをすぐに実際に曲で弾いて体験できるようになっています。
初歩・初級のシリーズなので、3巻や4巻になっても1曲は短めにできています。
ピアノ レベル2(ピアノのおけいこ 2巻)を見てみましょう
バスティンは弾く方の初歩や初級の実力に合わせて、どの巻から初めても使えます
今回は、ト音記号もヘ音記号の音譜もだいたい読めて、両手で無理なく弾ける初級者くらいの方に適している、ピアノ レベル2を例に見てみましょう。
- 「手をたたきましょう」
- 2部形式を学びながら3拍子のリズム感がある曲を弾きます。
- 「ロッキーにのぼって」「カーニバル」
- ハ長調の音階を使った曲です。「カーニバル」はさらに三部形式を学びます。
- 「ハーモニックブルース」〜「深い海の中で」
- 6度や7度といった音程を学び、実際の曲で確認しながら弾きます。
- 「主要三和音のブギ」〜「クム バ ヤ」
- ハ長調(Cメジャー)で主要三和音を学び、和音の進行と転回形も習得します。
- 「マクドナルドおじさんのロック」〜「オリンピックゲーム」
- ト長調(Gメジャー)の音階(スケール)と主要三和音を学び、曲を弾いて習得します。
- 「タランテラ」〜「船出」
- 8分の6拍子を習得して、曲で実践です。
- 「おおスザンナ」〜「宇宙探検」
- ヘ長調(Fメジャー)の音階と主要三和音を学び、曲を弾いて習得します。
- 「谷を下れば」〜「メヌエットをおどろう」
- ニ長調(Dメジャー)の音階と主要三和音を学び、曲を弾いて習得します。
- 「ロックのリズムで」〜「たのしいそりすべり」
- イ長調(Aメジャー)の音階と主要三和音を学び、曲を弾いて習得します。
- 「ホ長調のブルース」〜「バルカローレ」
- ホ長調(Eメジャー)の音階と主要三和音を学び、曲を弾いて習得します。
- 「エンターテイナー」
- 2ページの曲を弾いて、2巻が修了です。
特徴と有効性
バスティン ピアノ ベイシックス「ピアノ」は、初級者のための教本シリーズですから、それほど難しい内容を含んでいるわけではありませんが、以下のような特徴と練習することによる有効性が挙げられますと思います。
- 楽しいイラストで子供を惹きつける
- 日本やアメリカ教本は、従来からイラストが豊富で楽しそうな本が多くありましたが、このバスティンもフルカラーの楽しいイラストが豊富なので、音楽の楽しいイメージが子供にも沸きやすく、すぐに親しんでくれるようです。
- 踊りのリズムや世界の音楽が多い
- ロックやブルース、メヌエットなど、世界で親しまれている音楽のリズムや和音が豊富なので、子供達が興味を持って弾くことができます。このページでは、主に2巻を紹介しましたが、3巻に入ると「ジプシー」や「マーチ」、「ワルツ」「闘牛士」などさらに多彩になっていくので、子供達も飽きずに弾くことができるでしょう。
- 調や和声への理解がスムーズ
- 初級から多くの調が登場してくるのが特徴ですが、説明が丁寧で各曲の前にある予備練習と曲は密接に関連づけられていて、主要三和音をしっかりと理解しながら進めるので、シャープやフラットが多い調が3巻以降に登場しても、子供達は苦無くスムーズに入っていけると思いますし、移調の練習もあるので、早くから移調にも慣れる事ができます。
- 急に難しくならない
- 巻が進むと内容が増えていくのですが、曲自体が急に難しくなることがないので、子供もゆるやかに上達することができます。家での練習が十分な生徒には、このピアノ(ピアノのおけいこ)の教本に加えて、パフォーマンスやセオリーを加えたりなど、バスティンの同シリーズから適宜追加してみるのもいいでしょう。
このような特徴を持っているでしょうか。初歩の教則本ですから簡単に弾ける曲が多いのですが、シリーズ修了までに全部の調に親しんでピアノ曲を弾くという要素が多いので、次の段階のために実践を考えてつくられている印象です。
少し不満に感じる点
上記のような特徴があり、現在では多くのピアノ指導者に使われているバスティンピアノベイシックスですが、いくつか残念な点もありそうです。
- 説明が少し難しいと感じる方も
- 初歩から初級のシリーズですが、調や音階、和音やコードネームなどについての説明をしっかりとわかって進むことは、小学生1年生くらいだと少し難しいと感じるかもしれません。
このあたりは、指導者が生徒の理解の状況を見ながら判断となりますが、例えば小学1年生の初心者には、もう少しやさしい教本(バーナムピアノ教本など)を与えて、両手である程度弾けるようになった2年生以降にバスティンシリーズへ移行という方法も考えられます。 - 曲が意外に新鮮味が薄い
- 多くの音楽のスタイルや全調を習得しやすいという、初級教本としては優れたバスティンですが、教本に入っている曲自体は、意外に新鮮味が薄いかもしれません。
これは、各調の主要三和音をマスターして移調もできることを目的に1つにしているためでもありますが、現在では斬新な和音やもっと広い音域を使った初級曲集や教本なども登場しているので、そうした本も使っている方には、少々物足りないかもしれません。(そのために、シリーズに曲集の「パフォーマンス」があると言えます)。 - イラストの好み
- カラフルで楽しいイラストが満載ですが、いかにもアメリカ風のイラストは馴染みにくいと感じる方もいるかもしれません。
不満というほどでもありませんが、こんな点に少しふまえておくといいでしょう。
効果的に使用するには
以上にように有効性と不満点をみてきましたが、どのように使用すると効果的でしょうか。
ピアノの初心者は、レヴェル1(1巻)の前のプリマーから順番に進めていくのがいいでしょう。他に導入の教本を終えていて、既にト音記号とへ音記号の音譜を読める初級者にはレヴェル1から、またはレヴェル2からなど、指導者の判断で使ってみるといいと思います。
含まれている曲や課題自体は、レヴェル4まで進んでもそれほど難しくないので、説明を生徒がよく理解しているのか、それを実践できているのかを把握して進める必要があります。
例えば、バスティンでは曲を移調するように書かれているいますが、これもより多くの調に移調できるように、練習を積んで、初級段階から移調への抵抗感を無いようにレッスンしていくと、大変効果的です。
他の古典的な教本類を既に使っている方にも、バスティンシリーズは有効です。古典的な教則本で主にメカニック的な部分を主体に指導して、バスティンでは調や和音を中心に進めていくようにも使えます。
また、ピアノ(ピアノのおけいこ)で余裕がある方には、パフォーマンスやテクニックを組み合わせるなどの方法もありますし、同じシリーズのこだわらずに、テクニックは例えばバーナムピアノテクニックなどを併用するなど、他の教本との組み合わせにも使いやすい本です。
既にピアノ経験が長く難しい曲を弾けるような中級者や上級者でも、古典的な教本や練習曲集などを中心としたレッスンで育ってきた方の中には、調の概念や和音の成り立ち、コードネームや移調演奏などにあまり強くない方もいると思いますので、そうした方にもバスティンシリーズは有効です。
説明をよく読みながら実践していくことを、普段の練習に少し加えるだけで、かなり効果的な練習ができると思います。特に全調に慣れて移調演奏ができるようになるためには有効でしょう。
補足説明
バスティン ピアノ ベイシックスシリーズは、日本では現在多くのピアノ指導者に支持されているピアノ教本の1つだと言えると思います。1冊で楽譜を読んで弾くという基本的なことを総合的に網羅していますし、シリーズの他の教本との併用にも大変気を配ってつくられている印象です。
こうした総合的なシリーズ教本は、従来からアルフレッド教則本やこちらのページで紹介しているグローバーピアノ教本などとも似ている印象ですが、イラストなどもよりわかりやすく子供達も親しみやすいのも、バスティンの良いところだと思います。
ただし、上記に述べているようにレヴェル4(4巻)までに全調が登場してきて、その調の音階と和音をしっかりと理解して弾けるようなレッスンにしていかないと、使っている意味が薄くなってしまいますから、指導する先生も勉強が必要になる教本だと言えそうです。
尚、バスティンにはこのページで紹介したベイシックスシリーズ以外のシリーズも複数ありますので、楽器店の楽譜コーナーなどでよく確かめて比較検討してみるのもいいでしょう。
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