ピアノレッスンのヒント集

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上達のヒント  8割の演奏を目指して

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    基本ポジションを確認しよう
  3. 指を鍛える
  4. 音楽的に
  5. 拍子の基本を大事に
  6. 実践編
  7. 大人のピアノ
  8. 左手特訓講座
  9. 左手特訓実習
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  11. 音階を弾く2手首の移動
  12. 音階を弾く3練習しよう
  13. 和音を弾く
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  15. 分散和音(アルペジオ)を弾く1
  16. 分散和音(アルペジオ)を弾く2広い音域
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  9. 練習メニュー
    アンサンブル
  10. 8割の演奏を目指して
  11. 発表会で緊張しないために
  12. 中期の計画をたてる
  13. 作曲家一人を集中的に
  14. 録音を練習に

1つの曲を仕上げようと思うとき、どれくらいの演奏を目標にしていますか?

演奏完成度の設定は、人によって、曲によって異なるでしょう。いつも完璧を目指す人、だいたい弾けたら次の曲の移行する人、毎回完成度がまちまちな人、ピアノの先生が判断する場合など、状況のよっても様々でしょうが、いったいどれくらいを目指すと、ピアノが上手くなるためには良いのでしょうか。


理想は100%ですが

発表会でも大丈夫

曲の仕上がり具合の理想は、誰でも100%だと思います。一流ピアニストのような演奏ができたら最高でしょうが、なかなかそうはいかないものです。それに比べると「自分の演奏の完成度といったら、なんて低いことか…」などと嘆いている人もいるかもしれません。

しかし、それはピアニストの演奏と比べるからです。彼らは才能はあるのは当然のこと、子どもの頃からピアノにかけていて毎日ものすごい練習を積んできたのです。そんな人たちと、ピアノを楽しんで弾こうと思っている一般の人の演奏を、単純に比較することはできません。(とある1曲や数曲に限れば、ピアニストよりもよほど素晴らしい演奏をする一般の方はいますが)

ですから、同じ曲で参考にしたい演奏を見つけたときも、そのピアニストの演奏は、自分が目指す100%ではなく、120%だと(もっといえば200%くらいだと)思ってください。この認識がないと、できないことが多いのに無理に高い位置を望むと、結果的はできることもできなくなる恐れがあります。

ですから、一般のピアノ弾きが目指す100%の演奏とは、CDのような全くスキのないピアノ演奏ではありません。自分がとことんピアノを弾き込めば、何とか到達できるだろうと思われる現実的な目標の演奏が、100%の完成度なのです。


8割の完成度を目指して

これで演奏の完成度の目標設定ができるでしょう。そこへの到達が、現時点での力量で曲の仕上がったということになり、100%です。

ところが、これが簡単ではありません。自分の100%の完成度を、今弾いている1つの曲で想像して目指しても、そこへ到達するにはかなりの練習が必要でしょう。「この曲なら100%近い仕上げが出来るはず」と思っていた曲でも、弾いているうちに思わぬ難所が目に付いたりして、思ったような表現ができない場合があったりと、なかなか100%には近づけないものです。

そこでお薦めなのは、目標の完成度の8割(80%)だと思えるなら、その曲は一応OKとすることです。できれば9割くらいまでは到達したいところですが、8割が現実的な演奏完成度で合格点でしょう。これなら、少し気が楽になりますし、上手く弾けない特定の箇所に長期間こだわらないのもひとつの方法です。

ですが、6〜7割くらいの完成度では、ちょっと低すぎです。それくらいでも次の曲へ進んでいく人もいますが、それでは毎回弾けないままに曲のみが進行することになり、いつも低い完成度になってしまいます。ピアノが上達するのも苦しいでしょう。

完成度のPoint

完成度の判断は最終的には奏者自身の主観的なものですが、通しで演奏した場合は少なくても「止まらない」「ミスしても弾きなおしをしない」ことは大前提です。これはピアノに限らず音楽では当然のことですが、できていない人が多いのも事実でしょう。特に、ミスタッチをした時に止まって弾きなおしをする人は多いものです。部分練習では繰り返し弾いても、通し練習ではそのまま進むような習慣をつけないと、なかなか改善されないものです。「通して弾くぞ」と決めて弾き始めたら、メチャメチャに崩れても、最後まで弾き通しましょう。


8割の確率を目指して

このように、8割の完成度で良しとします。できそうなら、限りなく100%に近づけばいいのです。
「そうか、8割で完成なら普段からだいたいできている」と思うでしょう。
しかし、ちょっと待ってください。本当に8割の演奏ができているでしょうか?

8割の完成度とは、演奏の質のことですが、確率も良くないといけません。1曲を通して弾いたうち、8割の完成度の演奏が3回くらいしかできないのであれば、それは仕上がったことにはなりません。それでは発表会などの人前で披露するときは、8割の完成度の演奏はできません。きっと5割以下に下がってしまい、メチャクチャになってしまう可能性もあります。

ですから、曲の演奏が8割まで仕上がったと思ったら、その確率を上げる必要があります。10回通して弾いたら、8回は満足のいく演奏(8割の完成度の演奏)をしましょう。つまり、8割の確率で上手く弾けることが目標です。

要するに、目指す演奏の完成度が8割であり、その演奏を8割の確率で披露できるのが、現実的な目標だと思います。この「8割を8割で」ができているならば、人前で弾いたときでも、ガタガタに崩れるような事態にはならないでしょう。

確率のPoint

人前で弾こうとする曲を8割の確率で弾けていると思ったら、少し緊張感をつけてみましょう。身近な人に聴いてもらうだけでも違いますし、回りに人がいなかったら録音で緊張感を演出します。電子ピアノの録音機能でもいいですから「今から通しで録音だから必ず最後まで弾く」ことを自分で意識します。これだけでかなり緊張する人もいるので、確率は下がるものです。
そうやってつくりあげた緊張でも8割の確率を保てるようでしたら、かなり良い状態と言えるでしょう。


発表会で上手く弾けないというが

「8割を8割で」ができているならば、発表会では最悪のことにはならないと思います。「8割を8割で」ができているのに、もし発表会などで上手くいかなかったら……それは仕方がないことです。きちんと準備してダメだったら、あきらめるしかありません。普段は8割の完成度も、緊張で7割〜6割に落ちるかもしれないですし、8割の確率で上手く演奏できていても、残りの2割が本番にでることもあるのです。

ですが、よく「ピアノの発表会では普段の演奏ができない」とか「いつもはちゃんと弾けているのに、本番に弱い」という人がいます。
確かにそういうこともあるでしょう。しかし、そういった人たちは本当に普段は弾けているのでしょうか?

10回通して演奏したうち、うまくいった3回を自分の実力だと思っているなら、それは全く違います。7割の確率で上手く弾けないのですから、こちらが実力です。「8割を8割で」にはほど遠いですよね。この状態では、発表会本番で上手くいかないのは当然で、人前での演奏で緊張しない方法をいろいろと試したところで、効果おそらくないでしょう。
でも、人間はよく勘違いをしてしまったり、少ない確率の良かった演奏ができると信じ込もうとする傾向はあります。そこは冷静になって、自分の演奏を判断しなくては、演奏の質も確率もあがりません。

ですから、ピアノ発表会などの人前で披露する準備段階では、厳しく数字で判断するのもひとつの方法です。1日に5回の通し演奏を録音してみて、満足がいくのは4回までにあげていくつもりでやってみれば、かなり自信を持てるようになるでしょう。

逆にいうと、そこまで準備ができたなら、発表の本番でいつもよりミスタッチが多かったり、緊張でテンポが多少ぐらついた演奏をしても、さほど問題ではありません。それが生演奏というものです。

どんなに100%に近くても
「8割を8割で」よりも完成度を確率を上げていき、限りなく自分の力の100%に近い演奏ができると思っていても、演奏会や発表会・試験などの人前で弾くときというのは、緊張のせいもあって、予期せぬこともおこるものです。
あるとき、自信を持って発表会に出てもらおうと、その生徒にとっては比較的余裕のあるモーツァルトのソナタから1曲を選曲したことがありました。普段のレッスンのでの通し演奏でもミスは無く、弾くことを楽しむくらいの余裕が感じられました。明らかに「8割の8割で」よりも上だったのですが、本番では思わぬところで一瞬止まりそうになってしまったのです。それ自体は大きなミスではありませんでしたが、いつもミスしたことのないところだったせいで終わりまで動揺が残ってしまい、悪くない演奏だったものの、会心の出来からは遠いものになってしまいました。
本人は残念そうな表情でしたが、落ち込んではいませんでした。それはしっかり準備していたから「自分が良しとするギリギリのラインで踏みとどまれた演奏はできたから」だったようです。
これが「8割の効果」だと思います。人前での演奏は「賭け」ではないのです。