ピアノレッスンのヒント集

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上達のヒント  指使い1 曲中の音階・3度・速い装飾音など

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ピアノを弾く上で重要である指使いを考えるコーナーです。

指使いにいつも苦労する

と思っている方も多いでしょう。一応きちんと弾けているのに、ピアノ指導者に指使いの間違いを指摘されて、残念に思っている人もいるでしょう。

ここでは曲の中から例をあげて、2つの鍵盤や速い曲での装飾音符、音階系と3度の指使いについて考えてみます。例にあげた曲の箇所以外でも応用できると思いますので、参考にしてみてください。

基本的指使いは踏まえた上で
全調の音階と全調のアルペジオの基本的指使いは、ハノン教則本などに掲載されているもの(別にハノンが無くても弾けますが)で習得しておくことは、ピアノ専門志向の人にとっては最低限度の必須技術です。
また、練習曲の指使いは、原則的に守ることが必要です。それが目的のひとつでもあります。
ここでは趣味のピアノでも参考になるように、また専門的に勉強されている方にも難所をスムーズに弾けるように、曲を例に迷いがちな箇所や弾きにくい箇所の指使いについて考えてみますので、他に似たような箇所でも参考に、応用してみてください。

指を横に素早く移動

曲中で特定の音を保持している場合などで、他の指の動きに制限がある時には、指の素早い移動で対処するのも方法の一つです。
例としてバッハの平均律グラヴィーア曲集第1巻より2番のフーガ見てみましょう(譜例08)。

譜例08 バッハの平均律グラヴィーア曲集第1巻より2番のフーガより

この箇所では、右手は1指でで「ド」を保持している状態です。他の指で、ラ シ ド シ ド ラ を、譜例8のように3指から順番に弾いていくのですが、その後の ファ は、どの指で弾くと良いのでしょうか。
弾くだけなら、2指が最も簡単なのは当然ですが、次のことを考えると最良の策ではないのは、弾いてみるとおわかりでしょう(楽譜によってはファを2指で弾き、すぐに3や4指に置き換える指示をしているものもあります)。

楽譜の校訂で多い指番号は3指の次は4指のようです。1指を保持の状態で3指の直後の4指ですから、くぐらせたり、上を越えるような動作は困難ですので、素早い横移動で途切れないように弾くのがやりやすい方法でしょう。

しかし、素早い横移動で3指から4指を使うのであれば、むしろ3指の次は5指にした方が、弾きやすいように思います。もちろん、これも各自の手の大きさや指の長さ、柔軟性やピアノの経験や好みにもよりますから、いろいろと試してみるといいでしょう。


3指が5指の上を越える

ピアノを弾き慣れてくると多く使う指使いに、3指や4指が5指の上を越えるパターンがあると思います。特に3指が5指を越える方法は、速めのテンポの曲でも使用することができるので、いろいろな場面で工夫して使ってみましょう。
例としてショパンの練習曲Op.25-2を見てみましょう(譜例07)

譜例07 ショパン練習曲Op.25-2より

練習曲Op.25-2の、この箇所で、ショパン自身の指使いは♭レの4のみで他は書かれていませんが、様々な版によっていろいろな指使いがつけられています。
その中で多いのは黒字で示した指使いでしょうか。これでも弾けますが黒字では2指で弾くソを、青字のように5指で弾く指使いもスムーズに弾けるでしょう。

このように3指が5指の上を越えるような指使いも、箇所によっては弾きやすい方法です。こういった方法は全く使用しない人もいると思いますが、慣れると結構便利ですから、好みに応じて上手に取り入れてみましょう。


曲の中で親指で2つの鍵盤を弾く

和音を弾く時の指使いでは白鍵を親指(1指)で2つ弾くことはしばしばあります(例えばドとレを親指で同時に弾くなど)。楽譜によっては校訂者が同時に弾く場合の指示入れてある場合もあります。
そして、黒鍵2つも親指で同時に弾くと、弾きやすい場合があります。例としてショパンの練習曲Op.10-12「革命」を見てみましょう(譜例04)

譜例04 ショパン練習曲「革命」より

この譜例は革命の後半の右手和音ですが、♭ラと♭シを親指ひとつで同時に押さえると弾きやすいでしょう。手の大きな人なら、親指ひとつではなくても♭ラを親指で、♭シを人差し指(2指)で弾けると思います。しかし、前の和音との関連もあり、親指ひとつで弾くことは非常にスムーズで弾きやすい指使いだと思われます。

このように黒鍵2つを親指で一つで弾く方法も、曲の状況や好みに応じて取り入れてみましょう。


曲の中での速い装飾音符

曲の難易度が高くなり音符が細かくなってくると、慎重に指使いを検討しないとスムーズに弾けない箇所もでてくるでしょう。ここでは速い曲中の装飾音符についてです。
例としてベートーベンのピアノソナタ11番(Op.22)の1楽章からです(譜例05)。

譜例05 ベートーベンのピアノソナタ11番より

この曲のテンポはAllegro con brioですから、ある程度の速さが必要です。その中の16分音符にモルデント(プラルトリラー、シュネラー)の装飾音符(譜例05の青○をつけた記号)ですから、さらに音符が細かくなります。

譜例06 ベートーベンのピアノソナタ11番の装飾音符より

楽譜の版によっては、この装飾音符の弾きかたとして32分音符の例や3連符の例などをあげているものもあります(譜例06の左側)。
しかし、速いテンポの中で32分音符のように乱れずにきれいに装飾音符を入れていくことが非常に困難です。この曲を弾く人の中には、弾けないのに無理をしてこの部分でテンポが乱れる人もいます。

そこで、できない装飾音符を無理をしてグチャッとなるくらいなら、テンポどおりに弾けるように装飾音の同時弾きをしましょう(譜例06の右側)。
これなら16分音符のままなので、かなり楽になります。そして、テンポどおりにきちんと弾けば、装飾音で弾いている状態にかなり近く聴こえます。

このように、場合によっては正確に弾こうとして乱れるよりも、テンポ感を保てる指使いを工夫して利用し乗り切りましょう。


曲の中での音階系指使い

音階やアルペジオの練習をそれほど徹底的にしたことはない一般のピアノ愛好者の方でも、ハ長調やト長調などの音階は原則の指使いどおりに弾けるでしょう。
しかし、必要なのは音階練習で弾くことではなく、曲で弾けることです。

例えば、モーツァルトのピアノソナタハ長調(KV545)の第1楽章で、音階の上昇系と下降系の連続があります。そして、上昇系のピークに到達する箇所(譜例01)では、どのような指使いが弾きやすいでしょうか。

譜例01 モーツァルトのソナタより

レから音階を弾いた後に、ラからの音階(青い★のところ)です。このラを標準版などの楽譜では、指番号1を指定いるものが多いでしょうか。

楽譜によっては、ラに指番号2を指定しているものもあります。

もし楽譜に指番号が書かれていない場合は、音階の指使いの原則をあてはめて、ラを1で弾く人が多いと思います。ですが、レからの音階の直後なので、指を移動せずにそのままラに2からの指使いを当てはめることも、不自然ではありません。弾いてみてやりやすい方を選びましょう(この場合はどちらでも弾きやすいとは思いますが)。

普通は楽譜に一種類の指使いしか書かれていませんが、このようにたった一つの例をあげただけでも、指使いは異なっているものです。曲中で弾きにくいとか、もっと弾きやすい指使いはないかと思ったときは、音階やアルペジオの原則指使いに固執しすぎないのも方法です。


曲の中での3度指使い

ある程度ピアノを弾ける技術力を持っている人なら、楽譜の指使いどおりに弾いていて
「この指使いおかしいな」と思うことはあるでしょう。中には譜読み段階で疑問を感じても、慣れると弾きやすいように指使いが書かれている場合もありますが、不可能に近いものもあります。

例えば、ベートーベンのピアノソナタ第3番(Op.2 No.3)の第1楽章の冒頭(譜例02)を見てみましょう。

ベートーベンピアノソナタより

よくある標準版楽譜では、このように指使いが書かれていることがあります。3度音程の練習ではこの指使いを練習するので、これで弾けそうな感じがします。
しかし、この曲は少し速めのテンポですから、この指使いでは普通はかなり苦しいと思います。

そこで、多くの人がやるのが、以下の指使いです(譜例03)。3度音程を1と5で弾き始めています。

ベートーベンピアノソナタより

こういった3度の指使いは、結構多く使います。これなら練習して慣れてくると、非常に軽快に弾けるでしょう。
このように、楽譜に書かれている疑問のある指使いを使用するよりも、弾きやすい現実的な指使いを用いることが必要な場合もあります。

ポイント

当然ですが、曲を弾く時に「絶対正しい指使い」というものは無いと思ってください。指使いを守ることがピアノを弾く目的ではなく、指使いを工夫することはピアノをより自在に弾くための手段のひとつです。指使いは手の大きさやピアノの経験によって異なりますし、長年弾いていると好みの指使いというのがあることにも気がつきます。

しかし、趣味でピアノを弾いている人が、楽譜の指定を異なる効率の良い指使いを、譜読み段階で瞬時に思いつくことは、難しい場合もあると思います。そうした場合に、数パターンの指使いを提案してくれるピアノの先生だとうれしいですね。

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