ピアノレッスンのヒント集

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豆知識-Mozart モーツァルト

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ピアノに関係する作曲家について、当サイト「ピアノレッスンのヒント」的な見方で探求していく「ピアノの豆知識」のコーナーです。

当サイトで最初に登場したのは、
モーツァルトですね。当たり前すぎるような気はしますが、特に2006年には注目度が増して日本の音楽ファンにも一層定着した感があります。

モーツァルトについての生涯や作品などの詳しい話については、今年は各種のテレビや雑誌・書籍等の情報も充実していますので、少し違った視点から見てみるのと、一般のピアノ愛好者が実際に弾ける作品について考えてみます。


モーツァルト Wolfgang Amadeus Mozart

略歴

1756年1月27日ザルツブルク生まれ〜1791年12月5日ウィーンで没。父レオポルトはバイオリン奏者で作曲家。

本当に天才だったの?

モーツァルトの顔

日本ではモーツァルトといえば天才モーツァルトということになっています。根拠はいろいろあるのでしょうが、一般的には鍵盤楽器弾きや作曲家として早熟=神童だったことが主な理由だと思います。それほど長生きではなかったことも、天才だったと言われる要因でしょうか(歴史上の人物だとよくありますよね)。

そうではなく、モーツァルトの数々の音楽作品を判断して天才と言われているということもあるでしょう。では具体的にモーツァルトの音楽とのどの部分が天才的なのかという詳しい分析は専門家の方にお任せしますが、「無駄がない」などという言われ方もします。調和が完璧という声もありますね。
細かい理由なんてどうでもよく、何より聴いていて心地よい音楽だから、つくった人は天才作曲家だという見方もあるでしょう。

作品について

かなりの数の作品を残していて、正確な数は把握されていないようです。
モーツァルトの音楽を形容する言葉はいろいろありますが、よく「サラサラと流れるような」という言い方もされます。荒れたような箇所が無く、心地よい響きがどの作品にも共通するというものです。また、強弱が丁度良い感覚で繰り返されるような「揺らぎ」が人間の耳にとって絶妙だとも言われます。だから聴いていて心が和むような感じがするらしいのです。
ピアノ曲だけでなく、交響曲やオペラなども数多く残しました。日本ではクラシックの演奏会で弾かれる作曲家ナンバー1ではないかと言われています(2006年以前からも)。

人間にヒーリング効果があるのはもちろんのこと、動物や植物にも様々な効果があるという学者もいます。本当でしょうか?


モーツァルトのピアノ曲を弾いてみよう

一般のピアノ愛好者でも弾ける曲は?

ピアニストにとってもモーツァルトのピアノ曲は弾くこと自体はそれほど難しくないにしても、ごまかしがきかない音楽であることは確かでしょう。一般のピアノ愛好者が、音階などの動きを指がコロコロを廻るように弾くのは、かなり練習が必要かもしれません。

一般的には「トルコ行進曲」などに挑戦される方が多いかもしれませんが、これもとても簡単というわけでもないですね。
そこで、趣味のピアノ愛好者でもある程度のピアノ経験があり、ブルクミュラー25番練習曲やクーラウやクレメンティのソナチネなどを弾ける程度の人が挑戦できそうなモーツァルトのピアノソナタなどをいくつかみていきましょう。(難易度は★の数1〜7で、基準としてピアノソナタ16番ハ長調の1楽章を★3.0としていますが、感じ方は人によって異なるでしょう。基本的にはどれも★3個くらいだと思ってください。)

ウィーン原典版(226) モーツァルト ピアノソナタ集1 新訂版 (ウィーン原典版 (226))
ウィーン原典版(226) モーツァルト ピアノソナタ集1 新訂版 (ウィーン原典版 (226))

ピアノソナタ 5番 ト長調 KV283 より、1楽章
短めで難易度がそれほど高くないので、モーツァルトのピアノソナタで最初に弾いたのがこの曲という人もいるでしょう。テンポがアレグロが指定されていますが、それほど速く弾かなくても曲の感じは出せるように思います。強弱をうまく生かして弾きたい曲です。(★★★2.5)
ピアノソナタ 7番 ハ長調 KV309 より、1楽章
出だしからモーツァルトらしさを感じるピアノソナタだという人もいて、結構弾かれている曲です。譜読み的にはそれほど音符が込み合ってはいないのですが、必ずしも弾きやすいとはいえないかもしれません。うまく弾けるとかっこいいですが。(★★★2.8)
ピアノソナタ 8(9)番 ニ長調 KV311 より、1楽章
活発な感じのするソナタで、学習者にもよく弾かれています。随所に出てくるスタッカートの弾きかたに注意が必要で、あまりに短く切って弾いてもかっこよくありません。16分音符が連続する箇所は、音の流れをよく整理してみましょう。(★★★3.4)
ピアノソナタ 9(8)番 イ短調 KV310 より、1楽章
数少ない短調のソナタのせいもあってか弾かれる機会も多い曲で、多声の曲だという意識をしっかり持って演奏する必要があります。左手がポイントで、和音を弾くときも同時に打鍵できるように、音階的な流れも崩れないようにしましょう。(★★★3.2)

ウィーン原典版(227) モーツァルト ピアノソナタ集2 新訂版 (ウィーン原典版 (227))
ウィーン原典版(227) モーツァルト ピアノソナタ集2 新訂版 (ウィーン原典版 (227))

ピアノソナタ10番 ハ長調 KV330 より、1楽章
軽快に流れるような10番の第1楽章は、いかにもモーツァルトらしい感じがするでしょう。指の動きがある程度確かな方なら、弾きやすい曲でもあると思います。音符が少し込み入っているような印象を受けるかもしれませんが、よく見るとそんなことはないので譜読みも比較的楽なソナタです。
また全楽章を弾いてもそれほど困難な箇所も無いので、モーツァルトのピアノソナタの全楽章演奏を、16番以外ではこの曲からはじめる方もいるでしょう。 (★★★2.8くらい)
ピアノソナタ11番 イ長調 KV331 より、終楽章(トルコ行進曲)
通常「トルコ行進曲」といわれているのは、この11番ソナタの終楽章のことで、独立したピアノ曲ではないのですが、単独でもよく演奏されます。それなりのテンポで弾くにはある程度の指の動きが必要です。
1楽章の変奏曲も素敵ですが、最初の主題の後の変奏は難易度が高く長めの曲なので簡単には演奏できませんが、最初の主題だけでも楽しめます。(★★★3.2)
ピアノソナタ12番 ヘ長調 KV332 より、1楽章・2楽章
1楽章は速い音階的な動きなどはなく、譜読みの上でも込み入っている印象が少ないので、弾く人が多い曲です。3度の進行などに苦労する人もいるかもしれませんが、楽しく弾くにはペダルで上手く補助するのも方法のひとつです。3拍子に乗って弾きましょう。(★★★3.2)
モーツァルトのピアノソナタの2楽章をあまり弾いたことがない方には、この12番の2楽章はいがかでしょうか。メロディーが親しみやすく、装飾音符が多いように見えますが弾く上で困難な箇所が少ないので、弾きやすさはあるでしょう。21小節目からは装飾が多い版と、そうではない版の両方があり、楽譜によってはどちらか一つしか掲載されていないかもしれません。(★★2.4)
ピアノソナタ14番 ハ短調 KV457 より、1楽章
幻想曲ハ短調KV475と一緒に演奏されることも多い曲です。数少ない短調のソナタで、それなりの難しさはあるのですが、曲の流れに入りやすいと思います。それほどモーツァルトが好きではない人でも、このソナタは好きな人も多いと思います。(★★★3.4)
ピアノソナタ16(15)番 ハ長調 KV545 より、全楽章
モーツァルトがいうには、「初心者のための小ソナタ」ですが、かわいらしいメロディーの1楽章は音階の動きが多いので、ピアニストのようなテンポで弾くのはちょっと難しいと感じる人もいるでしょう。ゆっくり弾いてみて、できるなら少しずつテンポアップですね。終楽章の方が弾きやすいと感じる人も多いかもしれません。(1楽章★★★3.0 終楽章★★2.4)
尚、指使いを考える1のページに、このソナタの音階系を例に指使いを解説してありますのでご参考に。
ピアノソナタ17(16)番 変ロ長調 KV570 より、1楽章
それほど有名ではないかもしれませんが、ピアノソナタの学習によく弾かれている曲です。上記のハ長調ソナタよりも、1楽章は弾きやすさがあるようにも思います。右手の16分音符と左手でメロディーを弾く箇所などを、上手く表現できると曲の感じがでてくるでしょう。(★★★3.0)

ウィーン原典版(37) モーツァルト ピアノ曲集
ウィーン原典版(37) モーツァルト ピアノ曲集

ピアノソナタ以外でよく演奏されていて、レッスンでも登場機会の多い作品もいくつかあります。中でも次の1曲はよく演奏されて人気です。

幻想曲 ニ短調 KV397(385g)
譜読みはしやすいシンプルな作品ですが、ピアノソナタとは少々異なる雰囲気と場面の切り替えが多いのが特徴です。モーツァルトのオペラの雰囲気に似ている感じですから、ピアノの小劇場といったところでしょうか。学習者にも発表会にもお勧めです。(★★★3.1くらい)

モーツァルト 変奏曲集/原典版  (ヘンレ社/ドイツ)
モーツァルト 変奏曲集/原典版 (ヘンレ社/ドイツ)

モーツァルトはたくさんの変奏曲も作曲しています。簡素なものから難しい作品まで多彩ですが、中でも次の1曲は変奏曲の勉強にも最適でしょう。

デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 KV573
モーツァルトのピアノの変奏曲中でも、構成感が把握しやすく演奏もそれほど難しくないので、本格的に変奏曲について勉強しようと思っている方には、変奏曲入門としてもお勧めの1曲です。発表会などの人前での演奏にもいいでしょう。(★★★3.2くらい)

こんな感じでいかがでしょう。印象としては、ソナタの番号の後半(2巻)に親しみやすい有名な曲が多いように思います。
ここでは、少しテンポが速めの楽章を中心に取り上げてみました。ゆっくりの楽章を弾いてももちろんいいのですが、譜読みする上では音符が込み合っていることも多いので、一般の方にはかえって時間がかかるかもしれません。(もちろん、余裕がある方は一つのソナタの全楽章を弾くことがおすすめではあります)


ピアノ曲の選曲と演奏のポイント

上にあげた中では、トルコ行進曲の次に有名なのは16(15)番のハ長調KV545のピアノソナタでしょう。特に1楽章は一度は聴いたことのあるメロディーだと思います。親しみやすいのでお勧めしたいのですが、あまり簡単ではありません。指の動きはかなり要求されますが、挑戦してみるのもいいでしょう。終楽章の方が少し弾きやすいでしょう。(ですので、練習曲をやるよりもモーツァルトのピアノソナタ1曲を仕上げたる方が、指のためにも効果的だとも言えますね)

選曲するときには、いきなり「この曲に挑戦だ!」と決めて弾き始めるよりも、いくつかの曲の出だしを右手だけでもいいので、少し弾いてみて感じをつかんでみるといいでしょう。その中から気に入ったもの、弾けそうなものに取り組んでみると良いと思います。

指が動かないからといって簡単にあきらめるよりも、最初はゆっくりでいいので弾けることを目指しましょう。慣れてくると、そのうち次第にテンポもアップしていき、曲らしく弾けると思います。
弾けない段階で速さを求めるよりも、楽章を通しての一定のテンポを保って弾けることを目指した方がいいと思います。ピアニストのようなテンポ感で弾くことは無理でも、自分なりの演奏ができればいいのです。

こんな楽譜も
NHKスーパーピアノレッスン―モーツァルト
NHKスーパーピアノレッスン―モーツァルト

2005年にNHKの教育テレビで放送されたスーパーピアノレッスンのモーツァルトの楽譜です。講師やフィリップ・アントルモン。彼はいわゆるモーツァルト弾きという感じでもないのですが、非常にレパートリーの多いピアニストであり、多くの作曲家に精通しています。


鑑賞に、参考に聴く

昨年などはモーツァルトイヤーと騒がれている機会でもあるので、名演奏を聴きたいまたは、ピアノを弾く参考に聴きたいという方もいるでしょう。
では、誰の演奏が良いのかというと、それは最後は好みですから、なんとも言えませんが、数枚の名盤をあげてみると。

モーツァルト:ピアノソナタ集
モーツァルト:ピアノソナタ集
グレン・グールド
天才とも言われた20世紀を代表するピアニストのグレン・グールドですが、おそらく好きな人と嫌いな人にはっきりと分かれる演奏だと思います。
よくあるような(?)モーツァルトを想像して聴くと、おそらく違った印象を受けるでしょう。ピアノ学習者の参考になるとはちょっと言えないような気がしますが、ときどき絶対にグールドを真似たとわかる演奏の人もいますね。
モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集
モーツァルト:ピアノ・ソナタ全集
イングリット・ヘブラー
こちらはモーツァルト弾きとしての頑固たる地位を築いたピアニスト、もはや定番中の定番といったヘブラーのモーツァルトです。
誰の演奏を聴いてもここに戻ってくると人もいるくらい、過度な表現をせずにモーツァルトを自然で気品のあるピアニズムで聴かせてくれます。何度も繰り返し聴いているファンも多いのでは。
モーツァルト:ピアノソナタ第8番&第11番&第14番&15番
モーツァルト:ピアノソナタ第8番&第11番&第14番&15番
クラシック音楽通の人々(?)に非常に人気の内田光子さんのモーツァルトです。彼女のピアノ演奏は何を弾いても非常に高い次元で安定していると思います。
音楽的な深さを感じる演奏ですが、一番のおすすめ理由は、選曲が聴きやすいこと、録音が上記二つに比べて新しいということです。

モーツァルトに対する素朴な疑問

よく言われていることに関して、ちょっと考えてみましょう。

本当に天才だったの?

モーツァルトの顔2

「天才」と決まっています。異論を唱える人はほぼいません。いてもきっと無視されます……
と、そこまでいかなくても、テレビなどでは天才を強調しすぎだとは思います。200年以上前に活躍していた人のことですから、確かめるのは困難です。早熟だったことに関しては、歴史に名を残している作曲家や演奏家は大抵皆神童であり、モーツァルトに限ったことではありません。ピアノ弾きの神童ぶりでは、アルベニスなどの方がよほど天才といえるでしょう。

作品自体からの考えても結論は難しいですね。というのも、ほとんどの分析や専門的な見方は、モーツァルトが天才作曲家であるという結論を前提に、その証拠発見や裏づけをとるようにしているので、もともとあまり意味がないのかもしれません。

曲について

クラシック音楽をあまり聴かない人にしてみると、モーツァルトの曲は全部同じように、または似ているように聴こえるというのです。もちろん、モーツァルトファンの人はそんなこと全くないのでしょうが。

ですが、モーツァルトの音楽はどれも似ていると感じている人の見方は、間違いではありません。交響曲もピアノ曲も、似たような曲が多くあります。さらに曲数も結構多く、題名もついていないことが多いので、ちょっと聴いたくらいでは、どれが何番の曲か覚えられないという声も耳にします。
サラサラと流れるようなというのも、逆にいうと演奏会でじっくりと集中して鑑賞するようなタイプの音楽ではないという考え方もあります。ピアニストの中には「弾くのは楽しいが、聴くのはそれほどでも」という、一般に思われているのとかなり違った感じ方をもつ人もいます。

こういったことには作曲された当時の時代的な背景もありましたし、同時代にモーツァルト以外にも似たような曲をつくっている音楽家はいるのです。私は以前に知人に「(モーツァルト)イヤーなんだから、1曲弾いて」と言われたので、クーラウのソナチネを弾きました。本当はだますようなことはいけないのですが、聴いた知人は「うーん、やっぱりモーツァルトはいいね」と言っていました…。

クラシック音楽では、最初に作品ひとつひとつの違いを明確にして作曲したのは、ベートーベンという言われ方もあります。つまり、モーツァルトだけでなく、ベートーベン以前の人たち(バッハやハイドンなども)、どれも似たような曲をつくっていたことという見方です。これにも異論はあるでしょうが、全くのはずれではないのかもしれません。
ですが、弾くと聴くの両方を体験すると、曲ごとの明確な違いを実感できるのでないでしょうか。

「明るくて軽快な音楽」という一般的なイメージとは異なる見方が強いのも事実です。モーツァルトの音楽は内面に悲しさや孤独感なども含んでいるなどとは、昔からよく言われています。これも聴く人、弾く人の感じ方はそれぞれでしょうが、いろいろなイメージで音楽を感じながら聴くと面白いでしょう。

それと、よく言われるような癒しの効果などはあるのでしょうか?科学的に調べた結果のようなことを言っている学者もいるようですが、実は実証されたようなものではなく、根拠もあいまいだという話もあります。モーツァルトの音楽のみにそういった効果があるというのは、ちょっと疑問ですし…。
ですから、「聴くだけでやせる!モーツァルトダイエット」のような本もありますし、モーツァルト効果を否定するような、「音楽の生存価―survival value of the music」のような本もあるのですね。
どちらにしても、多くの人に親しまれているのは事実ですし、聴く人が良いと思って聴いていれば、それでいいでは?

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