実際に音階の練習をしてみましょう。
音階を上手に弾けるようになるためにコツや、練習の際の要点などについて考えてみましょう。
- 音階の練習について
- このコーナーの音階を上手に弾けるようになるために、ひとつの練習方法の例を示していますが、音階練習をたくさんやることを推奨しているわけではありません。全調の音階なども、ピアノを専門的に勉強しようと思っている人にとっては必須ですが、趣味で楽しく弾く人にとっては、無駄ではないものの、必ずしも必要な練習ではないでしょう。
鏡に映ったように練習
音階を練習するときには、まず片手で十分に弾けるように練習するのが基本です。どちらの手でもきちんと弾けるようにならないと、両手で練習しても弾けません。耳でよく確認しながら、片手音階をしっかり練習しましょう。
しかし、片手でゆっくりでもある程度弾ける様なら、両手で練習した方が効率的です。
ここですぐに両手でドレミファ〜といきたくなるところですが、両手で練習するときも、音階を弾く動作になれないうちは、左右の手が鏡に映ったように、左右対称の形で練習するのが基本です。ハ長調の白鍵のみで弾ける音階を例にすると、下の譜例(音階両手ハ長調)のようになります。
このようにミラーで音階の練習をします。(譜例は見易さの関係で8分音符で2オクターブですが、得に意味はありません)
左右の手が同じ動きをするので、手の動きや指の形などが左右ともに同じような感じになっているのか確かめやすいのです。
- この意味でもハノン教則本は32〜37番まで親指くぐりをやらせた後に、すぐに両手でドレミファ〜と音階を弾く38番なので、練習のやり方としてはあまり褒められたものではないでしょう。
安定して弾くためのチェックポイントとしては、指がスムーズに運ばれていくことの他に、肘がバタバタしていないかも重要ですし、手首が上下に動いていないかや、音が思ったようにでているかなどを、気をつけてみましょう。最初はもちろんゆっくりと弾きます。弾けていないのに速く弾いても意味がありません。
また、白鍵のみのハ長調の音階は弾きやすいとは言えないので、♯が4個のホ長調の音階(譜例・音階両手ホ長調)などから練習してもいいでしょう。適度に黒鍵があったほうが指が動きやすく、音階の動作に慣れるのも早いと思います。
このようなミラー型音階を両手でしっかり弾けるようになったら、オクターブ違いの同じ音階(両手でドレミファ〜と)弾いてみましょう。ミラーで弾けているなら、それほど苦労なく弾けると思います。
練習のちょっとしたコツ
いつも同じ音にアクセントをつけるクセ(ハ長調ならドですね)にならないようにするために、リズムやオクターブを変えて練習するのもひとつの方法です。8分音符・3連符・16分音符など変えると、拍や小節の頭にくる音が変わるので、やってみましょう。
ただ、リズムを変えるというと、いろんな変奏のようなリズム(ハノン教則本の最初の説明にあるような)での練習を薦める人もいますが……
練習のひとつの方法ではありますが、ちょっと無駄に近いと思います。それはリズム変奏のようなことは、音階では意外に簡単にできるものだからです。そのような練習に時間をかけるくらいなら、普通に曲を弾いた方が上達には効果的です。
ちょっとした注意点
音階を練習するときに、「音階も音楽的に弾くように」などと指導する人も多くいます。これについては、既に他のページでも述べていますが、あまり意識する必要はないでしょう。音階は音楽を構成する基本的な要素ではありますが、音階練習のみを純粋にする場合は音楽そのものではありません。しかも、音楽的に弾くということは、大げさな抑揚をつけることではないのです。
きちんとひとつひとつの音を耳で確認して弾くということや、レガートやレジェーロなどを意識することは大切です(これを音楽的というなら、言葉の使い方が違うのでは)。速く弾けているようでも、音に気を使っていない練習では意味がありません。
音階はどれくらい練習する?
音階の練習というのは、ピアノを弾くことにどれくらい有効で、またどれくらい練習すると効果的なものなのでしょうか。
これについては、ピアノ指導者やピアニストなどの専門的な人のあいだでも、意見がいろいろあると思います。そして、正解のような結論もないでしょう。
ここでは一般のピアノ愛好家と専門的にピアノを勉強する人にとっての、ひとつの目安を考えてみます。
趣味でピアノを楽しんでいる人は
ピアノ愛好家の人でも音階をスラスラと弾けていることは、曲を弾く上でも大きなプラスですが、実際にはあまりこういった音階練習に時間はかけたくはないでしょう。それに多くの人の目的は「音階を弾くこと」ではなく、目的の曲を弾くことなので、毎日ピアノを弾く人でも5分くらいで終えたいところです。
上手く日常の練習に取り入れるコツとしては、今メインで弾いている曲の調の音階を、指の準備練習も兼ねて弾くことです。曲がト長調ならト長調の音階、ヘ短調ならヘ短調の音階という感じです。
かなりレベルが高い曲を目指しているという人は、一定期間は全調の音階に挑戦してもいいでしょう。ハノンなど楽譜になっているものを使用すると便利ですが、無くても少し考えればわかりますね。
ピアノを専門的にやっている人は
ピアノ専門的に弾く人や、そのレベルに達したいと思っている人にとって、全調(長調も短調も)の音階をミス無く一定の速さで弾けることは当然であり、標準装備的な技術です。ですから、ハノンなどを使って(無くても弾けますが)の音階練習を身につけることが、一定期間必要かもしれません。
ハノンの全調音階例の速さでは、16分音符で60〜120となっていますが、専門的レベルだと最低120でしょうか。少なくても132くらいまでは持っていきたいですが、これも少しずつやっていくうちにそうなると思っていたほうがいいでしょう。
それを一定期間で完全に身に付けたならば、あとは時々思い出した時に弾くくらいで十分のように思います。音階とアルペジオはピアノ技術の基本なので、毎日徹底的に練習するべきというピアノ指導者も多くいて、実際にピアニストでも毎日数時間を音階やアルペジオの練習にあてている人もいますが……無駄とは言いませんが、そんな強迫観念でやらなくても、いいと思います。ピアニストでも音階練習を毎日やるなんてナンセンスはことは一切しないという人もいるくらいです。
それに、曲中で出てくる音階のような音型を弾くことと、音階練習で均一に弾けることとは、全く違うのです。ゴルフの打ちっぱなし練習場でナイスショットを連発しても、コースに出た時に、状況に応じたショットを打つことは異なるようなものです(少し違うかもしれませんが)。
曲中の音階のような箇所も、その曲の流れの中のイメージで弾くもので、突如として練習の音階のように弾いてしまっては、非常に滑稽なピアノ演奏になってしまいます。
何事もそうですが音階の練習もほどほどに、ですね。