ピアノを弾く上で重要である音階について考えてコーナーです。
音階をうまく弾きたい
と思っている方はたくさんいるでしょうが、均一に弾けないなどの問題を抱えている方も多いかと思います。
ここでは、できるだけ無理のない方法を考えてみましょう。
ご注意〜ここではわかりやすいように、白鍵のみで弾けるハ長調の音階の、主に1オクターブを例に説明していきます。また使う頻度の多い右手を例に説明しています。
- 音階の奏法について
- このコーナーの音階の奏法に関しても数種類あるうちの一つを紹介しているのであり、正しい方法というわけではありません。他の方法で上手く弾けているならば、わざわざ直す必要はありません。
- 練習について
- 説明でわかりやすいように、白鍵のみで弾けるハ長調音階を例にしていますが、実際にはハ長調は音階を弾くのが難しい調なので、慣れないうちは♯4個のホ長調や♯5個のロ長調などの方が簡単です。
また、左手の練習をするときは、右手と同じようになっているかを確かめやすいように、鏡に映ったように弾く(右手がドレミのとき、左手はドシラ)方が、はじめのうちはいいでしょう。
親指はどのように動くのか
音階を弾くときに問題となる事と言えば、まず思い浮かべるのが親指についてです。右手を例に、白鍵のみで弾くハ長調音階を弾くとすると、下降系は難しくなくても上昇系は少し技術が必要です。上昇系音階では、ドレミファソラシド の中で、親指はドとファと弾きます。
そこでよく言われるのが、「親指はドを弾いた後に、人差し指と中指の下をくぐって横に移動し、ファを弾く準備を早めにしなければならない」ということだと思います。
具体的に親指の早めに準備とは、
人差し指がレを弾いた時に、親指はくぐりを開始して横移動し、中指がミを弾く頃にはファの鍵盤上で待っている状態ということです(写真-親指くぐり音階)
某ピアニストさん提供の写真では少し分かりにくいかもしれませんが、親指は既にファの鍵盤に到達しています。
この方法は確かに音階を途切れなく弾くことを上手く説明できていて、ある程度訓練すれば実際にも可能なので、長い間多くの人によって教えられてきました。
また、ピアニストでもこの方法のみで音階を弾いている人もいますし、この親指くぐり横移動のみを教えているピアニストやピアノ指導者も多くいます。
しかし、ご存知の方も多いでしょうが、この親指が下をくぐって横移動する方法には様々な問題点があるのです。それを具体的にみていきましょう。
極端な親指くぐりはどこが問題?
よく言われている上記の方法は、どこに欠点があるのでしょうか。
親指の横移動が難しい
親指を中指よりも小指側に持っていくのは、かなり難しい動作です。親指付け根の関節と筋肉に、かなりの柔軟性を求められます。人間は日常の「物をつかむ・握る」などの動作では、親指の先が中指に届く程度にしか動かないものです。
習得に時間がかかる
人差し指がレを弾いた時に親指は移動を開始するのですが、これを習得するのは意外に期間が必要です。「レを弾く」と「親指の移動」という質の異なった動作を同時にするのは、難しい作業だからです。
他の指に負担がかかりやすい
この方法は人差し指と中指の下に、親指が移動できる十分なスペースを確保する必要があります。それ自体はさほど難しくないのですが、スペース確保のために人差し指と中指は丸めの形を維持している必要があります。
そのため、この2本の指に維持のための力が入りやすく、ピアノ奏法上では必要のない力です。
肘がバタつきやすい
親指くぐりを一生懸命にやろうとしても出来ない場合、どうしても肘が内外へ大きくバタバタと動く現象が起こりがちです。特に親指が他の指をくぐるときに、肘は外側へ動いてしまいがちで、演奏を不安定にさせます。
というような欠点があるでしょう。
「いや、それはどれもいっぱい練習すれば克服できることだ」とおっしゃる方もいるでしょうが、できることなら幾分効率よく習得できて、もう少し楽な状態で音階を弾きたいものです。
無理なく音階を弾くために、続きは音階を弾く2手首の移動をご覧ください。