メンデルスゾーンの無言歌集から、初中級者の学習に適している「ベニスの舟歌」(ゴンドラの歌30-6)を取り上げてみます。
ベニスの舟歌 Venitianisches Gondellied op 30-6 メンデルスゾーン Mendelssohn
複数収録されているベニスの舟歌の中でも、この曲は最も短く簡単なものですが、教則本の練習曲のようなものではなく、しっかりとしたピアノ作品です。メロディーを聴かせるように弾きましょう。
冒頭は左手から入ります(譜例1)。8分の6の伴奏のこの形は曲全体を通して続くので、最初から雰囲気を出して弾きたいものです。イメージは舟こぎのようでもあり、河の漣のようでもありますが、それは各自の想像で。
右手は#ミから入りますが、音の大きさに注意しましょう。フォルテだから強いのですが、どのくらいで弾くかのバランスに気をつけます。
ここから右手で主題のメロディーが始まります(譜例2)。何度も出てくるこのメロディーを、毎回同じように弾くか、それとも少しニュアンスを変えて弾くのかは奏者の自由ですが、どちらにしてもただ単調に弾くような音楽ではありせん。
歌詞がついていないだけで、歌のようなメロディーですから、適度な抑揚が必要です。例えば、ドが3回続くので、3回目のドの前に少し間をつくって弾く歌い方や、逆にドを弾くたびにほんの僅かに間を詰めるような歌い方など、好きな歌い方を見つけてください。音の大きさで変化をつけてもいいでしょう。
曲の最も大きな盛り上がり(譜例3)で、フォルテからフォルティシモから、さらにという感じです。これはこのとおり大きくしていくのですが、注意したいのはテンポが速くなってしまう人がいることです。
こういった曲では速くしていっても盛り上がった感じがでないことがあります。かえって忙しく聴こえてしまうことも。
ですので、逆に遅くしていくつもりでもいいくらいです。その方がグーンと雄大な感じに聴こえます。
曲の締めくくり(譜例4)は、どのように終えるといいでしょうか。右手はフェルマータで音を伸ばしていますが、左手は音符にはありません。
このとおり左手を普通に弾き終えて、右手を伸ばしてもいいですし、左手の最後の音を少し長めにしても良さそうです。また、フェルマータはただの曲の終わりと意味として、左右同時に音を消してもいいでしょう。
ここは舟(ゴンドラ)が遠くへいってしまうようにも思えますが、これもお好きなイメージでどうぞ。
ワンポイント
メンデルスゾーンの無言歌集は旋律と支える伴奏という様式で弾き易さがある反面、音楽として良い表現をすることが大切です。
またペダルの使い方を工夫してみてください。一般的な版のペダル指定よりも、箇所によってはもう少し細かく踏み替えをした方がより良い演奏ができるようにも思うので、響きを確かめて試してみてください。
いかがでしょうか。こういった曲で歌って弾くことを意識すると、一段上のレベルにいけるかもしれません。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。