ショパンに初めて取り組むのにちょうどよいものは数曲ありますが、その中でもこのワルツは特に人気の曲だと思います。
ワルツ19番(遺作) Valse KKIVb Nr.11 ショパン Chopin
全体を見渡してみても、譜読み的には苦労する箇所はないと思いますが、仕上げ段階までにはいくつかチェックしておきたい箇所がありそうです。
曲の始めから何度も出てくるメロディー(譜例1)ですが、この一度聞くと覚えられる簡単なメロディーを生かして弾くためには、左手が非常に重要です。
ワルツですから当然のように3拍子ですが、三角形を描くようなカクカクとした指揮のような3拍子では、ワルツの感じがでません。
ワルツらしく弾く為には、3拍子を円のように感じてください。1小節の3泊を、1拍目に押しがある円を描くようなリズムで弾くと、それらしくなります。2拍目と3拍目を少々弱めにするといいでしょう。ペダルは1拍目のみに入れるくらいで。
繰り返し記号のある場所(譜例2)から、少々変化して展開していくようになります。ここでは右手が活躍です。装飾音符もたくさん出てきます。
この装飾音符を素早くいれようとして、もごもごとしたように弾いている人が時々いますが、それほど急ぐ必要はありません。きちんと音として鳴らすように心がけましょう。もちろん左手の拍子感は崩れないように。
ここに入ったら、ペダルを多めに入れてもいいでしょう。1小節ごとに踏み変えます。
そしてすぐにこのアルペジオの箇所(譜例3)が出てきますね。ここはこの曲のちょっとした見せ場でもあります。
やっていることは別に難しいわけではないのです。要するに「ミ・#ソ・シ」のアルペジオを繰り返して上がっているだけ。でも3連符から5連符へと加速しような感じになるので、少しのクレッシェンドを組み合わせて弾けば、ちょっと華麗に聴こえます。
中にはこういった基本的なアルペジオが少々苦手な人もいるでしょう。でもご安心を。ここはペダルを踏んで音を響かせたまま弾いて、無理して親指を他の指の下からくぐらせるようなことはしません。
シを弾いたら素早く、親指を次のミに移動するのですが、手自体をまるごと横(右)へ移動するように弾きましょう。その方が無理な力を入れずにスムーズに弾けます。
一番かっこいいのは、曲の最後(譜例4)です。ここで決まった!という演奏にしましょう。
このワルツのようにそれほど速くない曲というのは、最後の締めくくりを遅くして静かに終える人もいるでしょうが、それをやらない方がかっこよく弾ける場合も多いのです。
このワルツも、最後の小節まであまりテンポを落とさずに弾きます。トリルの小節で少しだけ緩やかにして、後はそれ以上遅くはしません。最後の小節の左手も普通に弾き、音を伸ばしすぎないように、すっきりと終えます。
このように終えた方が、余韻が残る気分になるのでお試しを。
ショパンのワルツ
ショパンのワルツをもう少しそれらしく弾くには、左手の伴奏を円のような3拍子ではなく、楕円のような3拍子で、しかも2小節がひとまとまりにする方法もあります。
文字で説明すると分かりにくいのですが、1小節目「ブンー・パッ・パッ」2小節目「ブン・パッ・パッッ」のようにです。続けて書くと、
「ブンー・パッ・パッ・ブン・パッ・パッッ」の2小節で一つのまとまりです。
沢山のプロのショパンを聴いて比べていただくと面白いと思います。ワルツのリズムに極端な拍感をつけているピアニストもいれば、全く同じように機械的なワルツの奏者もいます。
様々な研究があるとしても、どれが正しいわけでもありません。いろんなショパンがあっていいのです。
いかがでしょうか。左手の位置が飛ぶので、右手よりも大変かもしれません。ワルツに乗れるかも重要なポイントです。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。