ベートーベンのピアノソナタを学ぶのに最適な1曲。ソナチネアルバムから数曲を弾いている方くらいから弾けるので、ぜひ挑戦してみましょう。
ピアノソナタ5番より1楽章 Sonate Op.10 No.1 (1mov) ベートーベン Beethoven
特に難しいテクニックが必要な曲ではありませんが、仕上げ段階までにはいくつかチェックしておきたい箇所がありそうです。
● 譜例の青い数字は「小節」を、紫と濃緑の数字は参考指使いを示しています。
冒頭から出現するテーマは、何度も形を変えて出てきます(譜例01)。
和音の同時性と付点のリズムを大切に弾きましょう。最初の厚みのある和音は、低音や中低音をしっかりと出した和音バランスでも良いものですから、その後へのつながりも考えて好みでいろいろな和音バランスを試してみましょう。
ffが連続した後に1小節の休符があり、32小節目に入りますが(譜例02)、テンポはそれまでと同じですから、極端に遅くならないように注意。
また、4声になっているので、横のラインを意識して声部をしっかりと耳で聴いて弾きましょう。
テーマが形と雰囲気を変えて出現する56小節目以降(譜例03)に気をつけたいのは、左手の形です。
青い丸をつけた音の流れを意識して弾くと、1指で弾く音が強くなってしまうのを防ぐことができるので、3拍子を感じを出しやすいでしょう。
展開部に入ってからの118小節目から(譜例04)、右手はオクターブのメロディーが出現します。
このようなオクターブのメロディーでも、上の音を意識して少し大きめの弾くと聴こえ方も良くなります。
手の大きさにもよりますが、弾きやすくするための指使いを検討してみましょう。
上音を全てを5指で弾くことも出来ますが、よくある標準版楽譜では紫色の数字のような指使い「5・4・5」も見られます。
これを好みで、「5・5・4」としてもいいでしょう。
再現部に入ってこの233小節目からが盛り上がるところですから、迫力ある演奏を目指します。ですが、オクターブの右手に必要以上の力を入れると、打鍵スピードが鈍って逆効果ですので注意です。
曲全体でペダルは使いますが、強調する1拍目の和音のペダルやレガートのためのペダルなどを工夫してみましょう。
ベートーベンのピアノソナタ
基本的な曲の構成として、メロディーと伴奏という単純な形ではなく、4声部になっていることが多いのがベートーベンのピアノソナタで、弦楽四重奏を意識したようなつくりになっています。
複雑に声部が入り組んでいるようなことにはなっていないのですが、箇所によっては4声のきれいなハーモニーをしっかりと感じならが弾くことによって、一層充実した演奏になるでしょう。
いかがでしょうか。中級以上のピアノソナタを弾こうと思っている方には、6ページほどのこの5番の1楽章で腕試しにもなりますし、ソナタ形式を勉強にも役立ちます。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。