ピアノ上達のためには、曲の難易度を時にはあげてみたり、また時には少し簡単にしてみたりと、調節するのがコツです。
既に練習メニューを考えるで触れているように、ピアノ上達のためには1曲に集中して取り組むよりも、常に複数の曲を持って練習するのが基本です。
その時のメインの曲のレベルを上手く調節できると、ピアノがもっと楽しくなり上達にも効果的です。
メイン曲を調節でレベルアップ
ピアノを始めた頃には、教則本の番号が進んでいくのに比例して、どんどん上達していくのを実感する人も多いでしょう。しかし、次第に上達のスピードはゆっくりとなり、やがて長期間ピアノを弾いていると、上手くなっているかよく分からなくなることも(練習しているのに、ヘタになったと思ってしまうことも)あると思います。
そんな時にこそ、メイン曲の難易度調節です。
みなさんは、メインに弾く曲のレベルをどのように判断しているでしょうか。習っている先生に任せている人・先生と相談して決める人・楽譜の難易度表を参考にする人・自分だけで決める人など、それぞれ違うでしょう。
どのように判断するのかはその人の事情にもよりますが、いつも自分が弾けるギリギリの曲では疲れてしまいますし、だからといって毎回メイン曲を弾くのに余裕がありすぎても、緊張感がなくなってしまいますので、普段は自分が少しがんばって練習すれば弾けるくらいの曲(=だいたい自分のレベルと合った曲)を弾いている人が多いと思います。
ですが、いつも自分のレベルと合った曲を弾くのではなく、
普段はメイン曲と自分のレベルをだいたい一致させ、時には少し難易度が上のものに挑戦。そして、時にはメイン曲の難易度を下げる。
といった具合に調節してみましょう。これによって、どのようにピアノ上達に効果があるのでしょうか?
上の難易度に挑戦しよう
ピアノに限らず、上達するということは、ゆるやかなカーブで上手くなっていくものだと思われがちですが、実はそうとは限らないのです。普段は目に見えないようなゆるやかなカーブかもしれませんが、それを自分自身が感じることは難しく、時には停滞している時期もあるでしょう。
そこで、ある時に難易度の1ランク上のものに挑戦してみると、自分の演奏レベルを認識することに役立ちます。また挑戦して仮に満足に弾けなかったとしても、その挑戦がポンッと数段くらい階段を昇ったようなレベルアップにつながることもあるのです。
簡単なものは演奏を仕上げる
では、逆に普段より少し簡単なものをメイン曲にすることには、何か意味があるでしょうか。
これは曲を完全に仕上げた演奏をする習慣をつけるためです。普段のメイン曲の難易度が自分にあっていると思ってピアノを弾いている人でも、人前で発表できるような演奏までは到達していない人も多くいます。趣味で楽しむならそれでもいいのですが、仕上げた演奏ができると、ピアノの楽しさは違ってくるものです。
ですから、人前で気軽に発表できることを意識して、少々簡単に思える曲をCDの演奏のように仕上げるのです(プロの真似をするという意味ではありませんよ。念のため)。
このようなメイン曲の難易度を時々変えることはピアノの上達にプラスになるでしょう。また長期のピアノレッスンにリズムや計画性も出てきます。例えば、発表会には緊張を少しでもやわらげる目的で、実力よりも少し簡単なものを弾くとか、ピアノに集中して時間が取れそうな時には、少し難易度の高いものに挑戦するなどが考えられます。
期待できる効果 | 主な目的 | ポイント | |
---|---|---|---|
難易度が 高めの曲 |
自分のレベルの確認にもなる。上の難易度への挑戦で、モチベーションをアップさせて、さらにワンランクのレベルアップにもなることも。 | ピアノに集中できる時期やレベルアップをしたいとき。 発表会でも挑戦をしたいときに。 |
目指す完成度としては、自分が現実的に想像できる仕上がりの7割くらいでも良しとしましょう。ピアノ曲の長さにもよりますが、2ヶ月弾いても全く形にならないとか、3ヶ月弾いても仕上がりに遠いような曲は、自分にとって難しすぎだと思ってください(これについては、このページの下のほうにある「補足2」をご覧ください 。 |
少し 簡単な曲 |
曲の仕上がった演奏をするため。人前で弾くことを意識した練習をして、余裕を持って弾ける曲の程度を知ることにも。 | いつでも弾けるレパートーづくり 発表会などの人前で余裕を持って弾きたい時に。 |
簡単といっても、初見で難なく弾けてしまうようなものでは、あまり意味はありません。また、ミスをしないということだけではなく、安定した技術をもって表現をしっかりするように心がけます。いつでも披露できるレパートリーにするつもりで仕上げましょう。 |
- 補足1 特にある程度弾ける人に
- このメイン曲の難易度を時々変更することは、特にピアノを始めてしばらく年月が経っている人に有効です。ピアノに限らず、始めた頃には急カーブを描くように上達しても、しばらく続けるその上達カーブはゆるやかになり、次第にわからないほどのゆるやかさになります。そしてもっと続けると、時には調子を落としてヘタになったように感じることもあるでしょう。
そういった長期のマンネリを打破するための方法の一つは、普段は弾かないようなジャンルやタイプの曲を弾いてみることです。クラシック中心だったら、ポピュラーやポップスやジャズ系などを、反対にJ-POPの弾き語りやドラマの主題歌や挿入かの編曲もの中心の人は、クラシックを弾いてみると、かえって新鮮な感じがするかもしれません。こういった変化をつけることは、やっている人も多いのではないでしょうか。
そして、もうひとつの提案が、ここで御紹介したような、時には難しめの曲で時には簡単な曲と、難易度を調節してメリハリをつけることです。難易度が高いものに挑戦したときは、完全に弾けなくてもいいのです。上記で触れたように、それによって1ランクくらいレベルアップするときもありますし、それがなくても、そうやって曲の難易度を変えながら弾き続けているうちに、振り返って以前に弾いたものをふたたび弾いてみると、自分がレベルアップしたのを感じることもあります。
- 補足2 上の難易度への挑戦はどこまで?
- レッスンで習ったりせずに独学でピアノを弾いている人の中に、実力よりもはるかに上の曲に、半年や1年、またはそれ以上の期間をかけて挑戦する人を時々見かけます。例えば初級のピアノ教則本レヴェルなのに、ベートーベンの「ピアノソナタ第8番悲愴」の1楽章や、ショパンの「ワルツ第1番」、ドビュッシーの「2つのアラベスク」などを、長期間をかけてでも弾けるようになろうとやっていくやり方です。
こういった方法は、独りで好きでやっていくのですから、全くの無謀というわけでもありません。事実、1曲集中で半年や1年をかければ、初級くらいの実力でも、まずまず弾けるようになった人もいるくらいです。そして、このコーナーのテーマでもあるレベルアップの効果も、多少は期待できるでしょう。
しかし、こういったはるか上のレベル曲への挑戦は、あまりに効率が悪すぎます。半年や1年があれば、実力に見合った曲を沢山弾いて、もっと確実にレベルアップをすることができるからです。そして、レベルアップした時点で目標だった難しい曲に挑戦すれば、以前は半年かかった曲も、2ヶ月や3ヶ月で仕上がることが出来るでしょう。
もちろん、どのような難易度の曲を弾いて上達を目指すのかは、最終的にはピアノを弾く自分次第ですが。
理想的には、ピアノ指導者が普段のレッスンの様子から、生徒の上達度合い・モチベーション・技術力などを考慮して、曲の難易度をうまく調節した提案をしてくれれば良いのですが……
現実には指導者が生徒のひとりひとりにそこまで気遣いをしていたり、お互いにコミュニケーションがとれている例は、少ないかもしれませんね。
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