難曲でも楽譜を見ると同時にスラスラを弾けてしまう…それはピアノ初見演奏の理想の姿ではありますが、あまりに遠くて、何だか違う次元の話のような気がします。
でも、それほどはできなくても、自分の実力よりも少し簡単なくらいの曲なら、初見で弾けるかも…と思ったら、初見で弾くのは結構できない方も多いのではないでしょうか。
実は初見で演奏する力と、ピアノ演奏自体の実力といのは、異なるものなのです。そのあたりを考えてみましょう。
このコーナーは、鍵盤や指を見ないでもある程度ピアノを弾けることを前提にしています。
いつも鍵盤を見て弾いてしまうという方は、こちらの→1.鍵盤感覚を先にご覧ください。
誰でもやっている初見演奏
初見演奏がある程度できるよういなるには、それなりの練習が必要ですが、実はピアノを弾いている人なら、誰でも初見演奏は普段からやっているのです。
「え〜そんな練習やってないけど」という声があがりそうですが、みなさんやっていることでしょう。
そうです。譜読みのことです。
曲を手と頭に覚えこませて弾けるようになるまでには、何度も楽譜を見て弾くという作業を繰り返すと思います。考えてみると、これは初見演奏の繰り返しのようなものです。
この初見の繰り返しで、少しずつ曲の完成に向かっていくという作業をしている人が、ほとんどだと思います。ですから、初見でピアノを弾くというのは、特別なことではないのです。新しく楽譜から曲にチャレンジするというときは、必ず初見ということになります。
でも、できない初見演奏
では、どうして簡単な曲でも、初見演奏ができないのでしょうか?
理由は様々に考えられますが、問題点は、普段の譜読みでは遅いテンポで弾き始めることや、何度もやり直しをしていることが考えられます。初見をやっているのですが、初見で演奏の段階まではいけていないのです。
テンポについて考えてみます。
初見で演奏するということは、最初からその曲のテンポで弾くということです。ゆっくりな曲ならいいですが、速い曲なら速いテンポで弾かなければいけません。
しかし、普段の譜読みでは速い曲も、覚えるためにゆっくりと弾くことが多いので、楽譜を見ていきなりそのテンポで弾くということに、脳や指が反応できないのです。
つぎに、やり直しについて考えてみます。
普段の譜読みでは、違う音を弾いてしまうミスをしたり、うまく弾けない箇所があったら、弾きなおしをしていると思います。これを繰り返すことによって、だんだん曲の完成に近づいていくのですが、初見ではそうはいきません。
初見で演奏するということは、最初からある程度完成した演奏をしなければいけないので、ミスをしたらかといって、弾きなおしをしてはいけません。でも、普段は「ミス=訂正する」という構図が脳と指にしみこんでいるので、どうしても弾きなおすクセが抜けないのです。
初見演奏に挑戦
ここまでで、もうおわかりいただけたと思いますが、要するに上記の二つの問題点「その曲のテンポで」と「ミスしても弾き直しをしない」をクリアすることが、初見演奏への第一歩です。
では、具体的に練習方法を見ていきましょう。
ここからは、曲のテンポで弾くことと弾き直しをしないが原則です。
まず、何でもいいので一度も聴いたことが無く、弾いたこともない楽譜を用意します。
適当なものが見当たらない方は、仮に私作の簡単なこの課題をどうぞ(初見課題01)テンポは4分音符が120で。
何でもといっても、自分が初見で弾けないことが明らかな難しい曲ではダメです。自分の初見力がわからない場合は、比較的簡単なものから挑戦です。8〜16小節くらいの教材のようなものでもOKです。
次に、曲全体をよく眺めます。8〜16小節くらいの短い曲なら、30秒くらいです。鍵盤に手は置かないこと。
ただぼーっと見ていてはいけません。拍子と調整を確認。どの音から始まるので手の位置はどこから始まるか、難しそうな動きはあるのか、臨時記号は、などの部分とサラっと全体の流れを見渡します。
だいたい確認したら、いよいよ曲を弾いてみます。何度も言いますが、テンポを一定に保って弾きなおさずに最後まで弾きましょう。止まってはいけません。
とにかく止まらずに弾くのですから、指使いなんて気にしないで、どんなにメチャメチャになっても、最後まで弾き通します。
どうでしょうか?初見演奏に慣れていない人でしたら、思ったよりも苦労したかもしれません。もし、全くダメだったら、それは用意した曲が初見には難しかったことになり、もう少し簡単な曲からはじめましょう。
間違えながらも、何とか弾き切ったようでしたら、それがあなたの初見レベルです。その程度の曲から初めて、少しずつレベルを上げていってください。
普段の初見練習のコツなど続きは、3.初見で弾こう2