ピアノレッスンのヒント集

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上達のヒント  音階を弾く〜手首の移動

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親指ではなく、手首を移動

前ページ音階を弾くの例のように、親指をくぐらせて音階を弾いている人も多いでしょうが、
親指を極端にくぐらせなくても、音階は弾けるのです。

親指くぐらせ音階

またここで、某ピアニストさん提供の写真で比べてみましょう。(写真-小「親指くぐらせ音階と」と、写真-大「手首を移動音階」)

上昇系音階を弾くときに、
小さい方の写真の「親指くぐらせ音階」の写真では、親指でファを弾こうとする時点でミとファのところに手首がありますが、
もうひとつの写真をご覧いただくと、違いがあるのがお分かりだと思います。

手首を移動音階

こちらの「手首移動音階写真」では手首がかなり移動しているのが(もちろん腕も移動していますが)わかります。
ミを弾いている時点では、手首は既にラのあたりまで移動しています(人によって多少違いはあるでしょう)。

そして、手の甲が先ほどとは違い、小指側に傾いています。親指は少し横に移動しますが、他の指の下のくぐらせるという意識ではなく、手首の移動に導かれて軽くファの鍵盤上に動いただけで、大きく横移動はしていません。

このようにすると、親指を極端にくぐらせて横移動させないので、窮屈な感じはあまりしないと思います。動作としても難しくなく、親指のくぐらせるスペースを維持する必要がないので、他の指に負担はありません。また、肘がバタつくことも少ないでしょう。

このように、音階を弾くときには親指を人差し指や中指の下のスペースに、がんばってくぐらせるような親指の横移動ではなく、

手の甲を小指側に傾けるようにして、手首を移動して親指を導くようにして弾く

といった感じで弾いてみましょう。レを弾いている時から、親指をがんばってくぐらせるような意識は必要はありません。手首に適度な柔軟性をもつことは大事です。


音階の弾き方についての注意点

このサイトでは、このように手首の移動を使っての音階の弾き方をご紹介しました。この方が手の甲を水平に保ったまま、親指を下にがんばってくぐらせるような音階の弾きかたよりも、現実的であり効率的です。

手首を移動させるように音階を弾いた方が少しは楽だということは、実際にピアノの鍵盤上で試していただければお分かりだと思います。そして、曲が速い本格的なものほど、親指を極端にくぐらせるような音階の弾きかたで対処するのは難しく、手首を移動させて弾くのが普通だと思われます。

しかし、中には親指を徹底的にがんばってくぐらせるのが正しいと教えている方もいるでしょうし、他にもちょっとした注意点はあるのでまとめてみましょう。

使い分けをするの?

速く弾くときは手首の移動で、遅く弾くときは親指をしっかりとくぐらせてという具合に、使い分けをする必要があるでしょうか。
そんなことなありません。弾く曲が遅くても速くても、手首を移動させるようにして音階を弾いて大丈夫です。その方が鍵盤の力のコントロールのうえでも、良い結果のように思います。

ピアニストはどうしているの?

ピアニストやピアノの指導者は、実際には音階をどのように弾いているのでしょう。
ピアニストは人によって様々ですが、演奏会で独奏するようなレベルの曲を、親指のくぐらせのみで弾いている人は、実際にはほとんどいないでしょう。現実にはかなり困難だからです。親指くぐらせを全否定しているピアニストもたくさんいます。
ピアニストの中には、手の甲を少々傾けて手首の移動(腕の移動)どころか、ハ長調上昇音階でいうと、ミとファの間を手の甲を傾けない手首の移動で弾いていて、厳密に言うとつながっていない人もいるくらいです。ですが、これもかなり速いパッセージだと、ほとんど気にならないくらいです。

ところが、親指くぐらせを十代の頃に徹底されたであろうピアニストの中には、極度に鍛えられた親指くぐらせ音階奏法で難曲も弾いている人はいます。当然のように、肘がバタついていて、音のコントロールにも問題があるように思うのですが……そのような状態もアリなのでしょう。恐ろしいほどの親指くぐりを練習したせいか、一応は弾けているようです。

ピアノ指導の現場では

では、実際のピアノ教育現場ではどうなのでしょうか。
年齢が低い生徒には、親指をくぐらせる動作をしっかりと教えることが多いように思います。これは間違いではなく、親指の関節の柔軟性や筋力をつけていく意味でも悪くないでしょう。また、それほど速い曲に出会わないうちは、それでも音階は弾けるのも事実です。(小学校などで鍵盤ハーモニカの授業でも、ファを弾くのに親指をしっかりくぐらせると教えているようです。)

しかし、ある程度ピアノが弾けるようになり、さらに少し専門的にツェルニー30番などの練習曲を指定テンポでバンバン弾くようになると、親指くぐらせ音階では弾けない人が必ず出てきます。
このときに、指導者が「親指をくぐらせるだけでは弾けないので、手首も移動して手の甲も少し小指側に傾けるように」との助言があればいいのですが、それが無いこともあり、生徒は親指のくぐらせが足りないと思って、さらにがんばってみるのですが、それでもうまく音階が弾けないことになります。

もうひとつ困ると感じるのは、ピアニスト本人は手首の移動を使って音階を弾いているのに、生徒に教えるときは人差し指でレを弾いている段階で親指をくぐらせるという指導をしていることです。要するに、自分自身が実際にはどのように音階を弾いているか、認識していないのかもしれません。

補足-手の写真について
某ピアニストさんから提供されている上記の手首を移動する音階の弾き方の写真は、実際に高速で音階を弾いている状態を撮影したものではなく、弾き方の例として撮影したものなので、普段の曲や音階演奏時の手の形とは、多少の違いがあるかもしれないとのことです。しかし、親指を極端にくぐらせないで、手首の移動をして弾くという説明を理解してもらうためには十分なものであるとのことです。
補足-教則本などについて
初歩教材や教則本で、音階についての詳しい弾き方が掲載されているものは、少ないようです。普及しているバイエルやハノンにも、音階の番号のみが書いてあり、実際の手については触れられていません。ですが、ハノンの親指を動かす練習曲やコルトーなどのメトードを見ても、親指を早めにくぐらせるトレーニングになっているようです。これらは全く無駄ではありませんが、やり方を間違えると良い練習にはならないでしょう。

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