ピアノ部屋の環境を整えてみましょう
一般家庭では、ピアノを置いてある部屋の温度と湿度などを一定に保つことは不可能に近いことですが、それでもできるだけピアノに良好は環境をつくってみましょう。
ここでは、筆者の知り合いの調律師さんの意見などを参考に、一般的な事柄について記述していますが、皆さんも普段ピアノのメンテナンスしてくれる調律師さんと個別によくご相談されながら、ピアノ部屋を整えることをおすすめします。
湿度
ピアノは湿度や温度の変化に敏感だとわかっていても、具体的にどうしたら良いのかわからない方も多いでしょう。
そこで、まずはピアノを置いている室内の湿度と温度を計測しましょう。やることは簡単です。量販店や時計屋さんなどで安く売られている湿度温度計を購入して、部屋に置いてみることが第一歩。
このページ冒頭の写真は、筆者が私室のピアノ室に置いている温度湿度計です。百貨店の時計コーナーで1,000円以下の品ですが、これでも十分機能しています。
最近はデジタル時計に温度と湿度機能がついているものもあるので、いろいろと好みのものを選択してください。
では、ピアノにとって適正な湿度はどれくらいなのでしょうか。一般的に湿度は55%前後(50〜60パーセント)を保っているといいと思われます。意外に「乾燥気味でもないですね」と思われる方もいるかもしれませんね。湿度は季節や天候、時間帯によって変化しますから、ご家庭では気を使いすぎない程度に、55%の前後15%(40〜70%)くらいを目安にされると、現実的でしょう。
湿度に関して「うちのピアノはヨーロッパ製だから、乾燥が好み」などと、湿度を30%台にしている人がいますが、それはちょっと疑問・・というか誤解です。乾いた空気だとピアノが良い音を奏でているように思われるかもしれませんが、ピアノには乾燥に弱い部品もあるので、過度の乾燥も良くありません。ドイツ製やフランス製のピアノでも、湿度は40%を切らない方が状態は良く保てるでしょう。
ただし、この湿度に関しては知り合いの調律師の意見を参考にしていますので、地理的条件や室内の環境によって異なります。皆さんも調律師さんに個別に相談されることをお薦めします。
高湿度対策は?
湿度計を置いてみて、実際に湿度が高め(特に梅雨時期など)がわかったとします。それでは、いったいどうすれば良いのでしょうか。
まず、普段の心がけとしては、ピアノを置いてある部屋だけではなく、家の室内全体の換気が大事です。ピアノの室内だけを換気して湿度を下げても、他の部屋で洗濯物を干していたり、お料理をしていれば、家全体が高湿度になる傾向にあるようです。
そこで、1日に1度以上は室内全体を十分に換気しましょう。これだけで、かなり湿度を下げることができます(ただし、外の天候や時期にもよりますが)。
換気くらいでは湿度が下がらない時期には、多くの方が思いつく方法に、エアコンの除湿機能や夏用の除湿機があると思います。うまく使えば室内の湿度をかなり下げることができるでしょう。
しかし、エアコンの風がピアノに直接当たるような事態は避けたいところです。6畳ほどの室内にピアノを置いていると、エアコンの風を直接当てないのは少し難しいものですが、風量や方向などを適宜調節してみましょう。
他の対策として、ピアノ内部に専用のサビ止め用除湿剤の袋を入れる(置いておく)方法があります。湿度が高い時には吸い、低い時には湿気を出すという調整の機能がある袋ですが、これは基本的に調律師に相談して判断して入れてもらう物ですから、湿度が気になる方は相談してみましょう。
除湿が必要だからといって自己判断で市販の衣類タンスやクローゼット用除湿剤を入れるのは、避けたいところです。これらは水が液体で溜まる仕組みですから、万が一水が漏れた場合にはピアノに大きな損傷を与えることになります。
暖房と乾燥対策は?
冬の寒い時期には、ピアノを置いてある部屋にも暖房は必要だとおもいますが、気をつけたいのは、急激に室内を暖めないことでしょう。
エアコンの温風をピアノに当てるのは、良くないことはおわかりでしょう。エアコンを使うなら、冷房や除湿機能と同じく、温風がピアノに直接当たらないようにし、ゆるやかに温めましょう。
一般的にピアノにやさしい暖房は、じわじわと温まるような電気式のオイルヒーター(イタリアかどこかの有名なブランドがありますよね)だと言われています。温風も出ないですし空気を少しずつ温めるのがピアノに合っているようです。もちろん、ピアノから少し離れた位置で使いましょう。
また、冬は暖房を使うせいもあり、室内が乾燥気味になる場合もあるでしょう。乾燥に対する対策は難しいのですが、ピアノに適した高価な加湿器は、ご家庭で用意するのは難しいと思います。
そこで、ピアノを置いてある部屋とは別の部屋に洗濯物をに干して、その湿度をピアノ部屋にまで誘導してくるような対策が現実的だと思います。また、普通の加湿器を使う場合も、ピアノ部屋ではなく他の部屋や廊下で使うのも一つの方法です。
鉢植えの観葉植物を置くのも冬場の乾燥対策のひとつの方法です。筆者は自宅ピアノ部屋には、手入れに手間のかからないアロエやサボテン系、コーヒーの木を置くこともあります。
振動を防ぐ
ピアノの音は空気で伝わって部屋に置いてある物を振動させます。置物などがカタカタと揺れるような現象や室内の物と共鳴するような変な振動音を体験したことがある方もいるでしょう。
室内の物などが揺れる必要の無い振動は、ピアノを心地良く弾くことの妨げになりますから気をつけたいものです。音で揺れてしまう置物や小物の下に、一枚の布を敷くだけでも防止効果がありますから、気になる方は試してみましょう。
大切なのは調律師との対話
さて、このページにはピアノを置く部屋について湿度や温度調節の事項を書いてみましたが、これれはおすすめの良い方法というわけでもありません。あくまで筆者が普段依頼している調律師の話と、筆者の経験にもとづくものです。
ピアノが置いてある環境は千差万別です。気候、地形、季節、室内の広さなど、多くの要素によって空間の状態は大きく違います。また、持ち主がピアノにしてあげられることと言えば、普段は湿度と温度管理に気をつけることと表面を拭いてあげることくらいで、あとはグランドピアノもアップライトピアノも、時々屋根の蓋をあけて空気を通してあげることくらいです。
ですから、ここをお読みの方も、ピアノ購入時や最初の調律(納入時調律)時に、調律師にピアノをよい状態で使うための湿度管理や冷暖房等のアドヴァイスを受けておくと良いと思います。
また、最低1年に1度は調律師に診てもらいましょう。調律師とのコミュニケーションが、ピアノを良い状態で保つ秘訣でもあります。わからないことは調律師に積極的に質問してみましょう。