保育園児や幼稚園児で既にピアノを始めていたり、小学校の入学を期にピアノを習い始めるお子さんも多いでしょう。
よいピアノの先生を見つけるには1の1と2では、主に小学生以上から大人の方についてのピアノの先生選びについて述べてきましたが、ここでは小学校入学くらいまでの子どもための先生や教室選びのポイントをみていきましょう。
慣れ親しみが大切〜保護者の意識も
「幼稚園生くらいだから、すぐピアノ教室へ」ということではなく、ピアノ教室や音楽教室で子どもが習う前や習うときには、保護者もちょっとした心構えが必要です。それはピアノなどの音楽を始めるときに最も重要なのは、やはり慣れ親しむことなのです。
世の中には数多くの習い事があって、最近では英会話などを早くから始めるお子さんもいるでしょうが、共通することは慣れることだと思います。英語も幼い子供に対して、いきなり難しい分を読ませたり、文法の勉強はしませんよね。
それと同じで、ピアノを始めるといっても、最初は「ピアノの鍵盤に触れて音が鳴ることが楽しくて、少しずつ基本を習得してくれれば良い」といったある意味気楽な気持ちを保護者が持つ必要があるでしょう。
ですから、テレビから流れる曲にあわせて歌ったり、体を動かしたり、家のピアノを適当にバンバン弾いてみたりといったことを見守りましょう。こういったことこそが、リズム感や音感の基礎になるものです。「静かに!」などといって、せっかくの子供の才能を止めるのは、もったいないことです。(静かにする必要がある時も教えるのは当然ですが)
そうやって音楽やピアノへの興味があるのなら、子供を教えているピアノ教室や音楽教室などへ行って、楽しく学ぶのもいいでしょう。
教室や先生を選ぶときに
お子さんがピアノや音楽に興味を持ったようでしたら、教室や先生選びということになりますが、何か注意しておくことはあるでしょうか。よいピアノの先生を見つけるには1のコーナーでも先生選びのポイントをご紹介していますが、ここでは小さなお子さんに限定で、個人レッスンとグループレッスンについて考えてみましょう。
個人レッスン系
幼いうちから個人レッスンの音楽指導を選択すると、普通のピアノ教室が多いでしょう。
幼児への対応状況はそれぞれの指導者によって大きく異なると思います。大学や専門学校でリトミックや幼児への音楽教育を専門的に勉強してきた人や、独自に幼児への音楽教育法を勉強して実践している人がいる一方で、幼児は全くレッスンしないという人もいます。
これはもう、習おうとするピアノ教室の指導者に聞いてみるしか方法がないのですが、やはりお子さんと一緒に保護者が直接会ってみて、対応の仕方や子どもへの声のかけかたなどを、チェックした方が良さそうです。
もちろん、子どもへの接し方が良さそうな人が、そのまま幼児への音楽教育でも質の良い人ではないと思います。しかし、この時期の音楽教育の質によって、後で決定的な差になることはないので、子どもが楽しく安心して習える指導者であることが最優先事項だと思っていたほうが正解でしょう。要するに、テレビの歌のおにいさんやおねえさんのような感じで接してくれる人でもいいと思います。
また、教室が遠いなら、小さい子がひとりで通うことに不安な保護者もいるでしょう。教室へ通うための保護者の送迎もかなりの負担ですから、少なくても小学校の低学年くらいまでは、自宅に出張レッスンで来てもらえるかも重要なポイントです。子どもがどんな感じでピアノを習っているかを保護者も知ることができるので、この点でも安心です。
個人レッスンだと内容も指導者によって様々でしょうが、鍵盤に触れさせたり歌などの他にも、3歳くらいならワークブックのようなものや、音符のカード、初歩のとても簡単な教則本を使って音符(楽譜)の読み方や書き方を少しずつ学んでもらうという指導も多いと思います。
3歳くらいから使える音符の読み用のワークブックのようなものも最近は各出版社のものが充実しているので、子供も楽しく学べるようですし、3歳でもこうした教本やワークブックを使いながら、少しずつでも音譜を読めるようになります。早い段階から音符を少しずつでも読めるようにして親しむことは大事で、後の譜読みの基礎力につながりますので、こうした基礎を重視のレッスンを就学前からやってもらうことは重要です。
また、グループレッスンとの決定的な違いは、最初からピアノというアコースティックな楽器に触れて、自分の動きで生の音を出せるということです。
ピアノ演奏にとって最も重要な耳を育てるためにも、本来は小さな子供にこそ生音が必要だと思いますので、それを大事に考えるなら3歳〜5歳でも個人のピアノ教室へ通われた方が良いと思います。
グループレッスン系
例えば、2歳や3歳から小学校入学前くらいまでの幼児音楽教育というと、ヤマハやカワイなど楽器大手の音楽教室のグループレッスンがあげられます。また音楽大学の付属音楽教室なども、幼児教育に力を入れているところもあるようです。
- 歌いながら体を動かしたりリズムを手で叩いてみたり、タンバリンなどの簡単な楽器を使ってみるなどの、音楽の入り口のようなレッスン内容のほか、音感を身に付けるようなレッスンもやっているでしょう。リトミックなどを取り入れているところもあるようです。ワークブックのようなものを使いながら、少しずつ音符に親しむ内容もあるでしょう。
音楽の基本的な要素が身につくことのほかにも、多くのお友達と音楽ができるという喜びもプラスだと思います。保護者子で参加できるプランもあるようです。 - 教材や指導方法にも長年の工夫と経験の蓄積からの指導体系があるので、全国どこの教室でも一定の水準を保っているのも魅力です。ほとんどの場合、レッスンを見学できたり、体験レッスンもあるようですので、お近くの音楽教室に問い合わせてみるといいでしょう。
- ただ、保育園や幼稚園で既に似たようなことをやっているようでしたら、グループで歌のレッスンなどがお子さんにとって新鮮さに乏しいかもしれませんので、必要性が少ないのかもしれません。そういった時は最初から個人指導でピアノを習うのも選択肢です。
- 大手音楽教室や音大付属教室のレッスン代をどう思うかは個人によって違うでしょうが、格安とは言えないかもしれません。月々のレッスン代のほかにも、入会金や教材費、その他の費用がかかる場合もあるので、事前にパンフレットや入会申し込み時の書類で、きちんと確認した方が良さそうです。
こういったグループのレッスンで音楽に親しんでから、ピアノを始めるという方向性は1つの方法だと思います。いきなり3歳からピアノを弾き始めるよりは、リズムや音に親しむことから始めるので流れもスムーズである可能性もありますし、リトミックの研究などはかなり進んでいるようです。
ただし、本物のピアノに触れる機会はグループレッスンのみでは少ない(または全く無い)傾向にありますから、最初からピアノに触れさせたいと考えているならば、個人レッスンを選択された方が良いでしょう。
でも3歳からがいいの?
幼い頃からピアノを始める子の保護者の中には、「3・4歳くらいから始めないと専門の道にはいけない」とか、「音感が身につかない」と思っている人も未だにいるようですが、そんなことはありません。
早い時期にそういった音楽の基礎教育を受けることは、確かにリズム感や音感が身につきやすいという利点はあるかもしれませんが、早くから始めたからといって、特別有利ということはないような気がしますので、あせる必要はないのです。
しかし、就学前にピアノを始めるのであれば、筆者の意見としては、3歳〜5歳くらいでもグループレッスンのようなものよりも、最初からピアノの個人レッスンの方を推奨します。アコースティックのピアノを実際に弾いて感覚を養いながら、音符読みの基礎も習得する方が良いと考えるからで、これが後に活きてくるからです。
そして、もし、保護者が子どもにある程度音楽専門の道を考えているなら、早い時期に始めることもある程度は重要ですが、長く続けられるような環境整備を目指した方が良いことではないかと思います。このページの冒頭で示したように、歌ったりピアノを弾いたりを可能な限り注意しないで見守ることもそうですし、一緒にやるのもいいのです。そして、ピアノのレッスンに通うようになったら、基本をしっかりとやってもらい、それを継続していくことが重要でしょう。
そして教本やピアノ曲を弾くようになったら、幼児には毎日、小学生は週に1回でもいいですから、じっくりと子どもが弾くピアノを保護者が聴く機会をつくるといいでしょう。聴き終えたら感想を一言。ここで無理に褒める必要もないと思いますが、「この前よりもずっと良くなったよ」とか「いい曲だからもう少しがんばってみよう」などと、上手に子どものやる気を引き出せたら最高です。そうして、子供がピアノを弾く習慣をつくってあげましょう(当然ですが、教室へ行くだけでは上達はしません)。
そのためには、子どもの演奏をしっかり聴くことが大事です。聴いているフリやただ聴き流しているようでは、子どもはすぐにわかってしまいます。逆に保護者の子どもピアノに対する過剰な期待も、子どもは敏感に感じるものですし、保護者の方がストレスになっても面白くありません。
また、子どものピアノ指導者とのコミュニケーションも必要です。指導者がどんなに子どものピアノ教育に慣れている人であっても、週に1回30分くらい接する程度では、その子の個性や趣向はなかなかつかめないものです。
ですから、ピアノの先生に、子どもは家ではどんな風にピアノを弾いているのか伝えたり、どんな練習をしたらいいのか、練習の時間はどれくらい確保するといいのかなど、よく話しあってみましょう。