よいピアノの先生を見つけるには1を見ていただければ、よく言われているようなことが、あまりあてにならないことがおわかりだと思います。
生徒さんがピアノをはじめようとするときは、ピアノを習う前にポイントを整理しておくことが大事です。
習う側の要求をまとめておく
自分の要求や許容範囲を決めておくことが大事だと思います。
例えば、少し大きな買い物をするとき(電化製品など)、「最低限の機能・あった方がいい機能・スペース・予算の上限」など、細かく決めていなくてもなんとなく頭の中にあると思います。
ピアノをいう習い事に関しても、同じようにまとめてみるとわかりやすいでしょうし、習う前でも指導者にどんどん質問することが大事です。生徒側は客なのですから堂々としましょう。例えばこんな感じです。
- レッスンの代金(月謝)
- 最も大事だと思います。普通に習うので月に10,000円までとか12,000円まで、または少々専門的に習うので月に20,000円〜30,000円くらいまでならなど、自分でだいたいの目安をつくっておきます。
ただ注意して欲しいのは、その地域の相場とかレッスンの内容や質(音楽大学を目指すような専門的なものなのか、趣味なのか、レッスンは定期が不定期なのか)や、時間や生徒の年齢によって、決め方はいくらでもあるということです。音楽大学の先生などでは、1レッスンが1万以上というピアノ指導者も多くいますが、良いと評判のピアノの先生だとしても、ご自分のお財布と相談してあまりに高いのなら考えものです。
支払い方法にも注意が必要です。1ヶ月のレッスン代なのか、それとも1回分なのか。休んだときはどうなるのか。
幼い子供にレッスン代袋に入れた現金を持たせることに不安な親もいるでしょう。そういう時に親が持っていくのか、銀行振り込みができるのかを確認しましょう。
また、現金の場合は今月分のレッスン代を「払ったはず」、「いや、もらっていない」などというトラブルが、絶対に無いとは言い切れません。ですから、月謝袋にスタンプや領収証の発行をしている人のほうが、できれば望ましいでしょう。
夏なら冷房費、冬なら暖房費などの他、施設維持費などが別途かかるピアノ教室もありますので、事前に確認したほうがいいでしょう。
個人教室でも、月謝の額やレッスン回数などに関しては、最初にきちんと書面で提示してくれる教室が望ましいと思います。 - 家からの距離や出張レッスンの有無
- これはレッスン代と同じくらい大切です。どんなにいいピアノの先生をみつけたとしても、家から歩いて通える距離か電車やバスなどの公共機関を使って無理なく通える距離までが理想です。習うのが子供の場合、親の送迎が必要になる場合もあるでしょうが、週のスケジュールを考えて通える範囲なのか確認しましょう。
また自宅に出張でレッスンをしてくれる場合は、その範囲と交通費が別途必要になるのかを、事前にきちんと確認した方がいいでしょう。 - 教材費に関して
- これは見過ごしがちな点です。ピアノを習うことになると教則本や曲集など、ある程度の楽譜代がかかるのは当然ですが、それ以外の費用がかかる教室もあります。
例えば演奏を録音再生するシステムの機械を、生徒には必ず購入してもらうというピアノ教室もあるようです(この機械を使っているところは最近は少ないでしょうが)。それが有効と生徒が感じるなら良いのですが、値段や効果などをピアノの指導者に確認しましょう。 - 音楽的傾向をみる
- 自分が習いたいことを教えてくれるのか、率直に聞いて確認した方がいいでしょう。特にポピュラー系やジャズピアノを習いたいなら、それを教えられる指導者なのか確かめた方がいいです。
クラシックのピアノでもレッスン内容は千差万別です。古典とバッハと練習曲のみという人もいれば、ほとんど何でも教えている人もいます。これは習ってみないと把握できないこともあるので難しいですが、できるだけ聞いておきましょう。ドイツ系のバッハやベートーベンについて教えていないという人は日本ではいないでしょうが、スペインものやフランスものを全くレッスンしないという人は、少ないとはいえないでしょう。
希望曲をレッスンに取り入れてくれるのかも重要なことです。(もちろんある程度弾けないと希望曲というわけにはいかないでしょうが)
特に上級者で特定分野の音楽(スペイン系やフランス系、南米系、その他の近現代やあまり有名ではないロマン派の作曲家、バッハ以前のバロックなど)を学びたい方は、そういった分野が得意な先生を選ぶ必要があります。 - 実際にピアノを実演してくれるか
- ピアノの指導者は必ずしもピアノの名手である必要はないでしょうが、初心者から中級くらいまでの人にとっては、実際に同じ曲を弾いてくれる指導者の方が、よりわかりやすいレッスンになると思います。技術的なことや音楽的なことを、言葉のみで言われてもなかなか把握できないものですが、ピアノで弾いてくれれば音楽と手の使い方と両方で生徒に伝わります。
理想的には弾いたことがない曲もどんどん譜読みして演奏で披露してくれる指導者が望ましいですが、少なくとも曲の重要箇所くらいは実演してくれるとうれしいですね。 - 楽器に関して
- ピアノといっても、習い始めの方や趣味の方などは、現在は電子ピアノの方が多くになってきていることは間違いありません。普通のピアノの先生は、生徒が家での練習で電子ピアノでもOKというところがほとんどでしょうが、中には電子ピアノで練習する生徒はお断りという人もいます。特に音楽大学などを受験する人を専門に教えているピアノ指導者には多いかもしれません。
電子ピアノの生徒お断りの先生が悪いということではなく、生徒側が気持ちよくレッスンを受けるためにも、これも事前に確認をとった方がいいでしょう。 - コミュニケーション力をみる
- 最終的にはその指導者の人間性が、習う側に合っているかが問題でしょう。子供が通うなら子供好きな人なのか、大人が習うにしても楽しいピアノレッスンがいいに決まっています。特に子供がピアノを習う場合は、重要な要素の一つといえます。
中には「ピアノを指導さえしてくれれば、どんな人間性でもかまわない」という人もいるかもしれませんが、1対1の場において、コミュニケーションがうまくとれないのであれば、窮屈さを感じると思うのです。 - マナーにうるさくないか
- 上のコミュニケーションとも関係がありますが、中にはマナー・礼儀作法といったことに、とても固執するピアノ指導者もいます。例えば「月謝袋の出し方」・「挨拶の仕方」などに関して、指導者がやり方を生徒に半ば強制するようなことで、中には口で言わなくても「ピン札で月謝を持ってくるのが当たり前」などと思っている人もいるくらいです。
一般的なマナーの範囲内なら、それほど気にする必要もないのでしょうが、中には季節の節目に「品」(要するにお中元やお歳暮)などを求める(口で言わなくても)ピアノ指導者もいて、一般社会のから見れば明らかに非常識だと言えます。
「ちょっと品物を」と生徒側が思うならまだいいのですが、そういった付き合いやマナー徹底が嫌なら、他の指導者にした方が良いでしょう。 - コンクールや発表会などに関して
- 発表の場があることは大事なことですが、強制されたり回数が多いと生徒側の大きな負担になっても苦しいものです。
発表会は年に1回なのか1年半から2年に1回くらいのところが多いかもしれませんが、出演する生徒は会場費や写真代、録音録画の代金等もかかるものです。こうしたことら、発表会を全くやらない教室もあるでしょう。
また、コンペティションやオーディション等の各種のピアノコンクールに積極的な先生、そうでもない先生などいろいろだと思います。
そうした発表会やコンクール等には、どんな雰囲気の発表会なのか、絶対出場なのか、希望者のみなのか、あるいは全く出場機会は設定してくれないものなのか、確認してみるといいと思います。 - 教室のピアノの状態を確認
- ピアノ教室のピアノが高級ピアノであるかということではなく、年に1回でも2回でも調律師さんに依頼してしっかりと手入れをされているのかが重要です。
これが意外にもおろそかになっていて、生徒に酷い状態のピアノを弾かせてしまっている指導者というのも結構いるものです(指導者本人も気がついていないのか、またはピアノの良い状態というのを知らないのか・・)。
だいたい重要なポイントはこれくらいだと思います。あとはピアノを習おうと考えている生徒さんの事情に合わせて、さらにチェックポイントを増やせばいいでしょう。
他に考えられるものとしては、
教室でのレッスンピアノはグランドピアノを絶対に希望(普通はグランドが多いので、あまりいないでしょうが)とか、パソコンを使ったレッスンがあるか(DTMなど)や、ソルフェージュ(聴音や新曲視唱など)の有無だと思います。
特に専門分野に進もうと考えている人は、ソルフェージュについては確認した方がいいでしょう。ピアノ教えている人は、必ずしもソルフェージュのスペシャリストであるとは限らないのです。聴音や新曲視唱を体系的に教えられないピアノの先生も多いので、注意が必要です。(これについては、いずれ別ページで述べたいと思います)
どこかで妥協は必要かも
しかし、現実には専門的にピアノを教えることができる先生が、近くに少ないなどの地域的な事情から、自分とあまり相性のよくない(人間的に、または音楽的に)先生につくこともあるかもしれません。
そんな時の対処方法として、割り切りがあると思います。
割りきりとは、指導者の指導の自分に有益であると感じるものだけを吸収して、あとはさらりと流すようにレッスンを受けるという方法です。要するに、先生の主観を客観的に聞くという作業です。
少し難しいことかもしれませんが、こんな風に考えてみてください。「ピアノの先生は技術を教えてくれる人」という感じで割り切るのです。
技術的な指の使い方やペダルの入れ方などの、自分の上達の後押しをしてくれる指導は聞くようにして、ピアノでの音楽表現の部分は、自分の演奏を通すのです。
そういう感じでやっていけそうなら、その先生は少しはあなたのためになるでしょう。ただ、ピアノの技術的な部分でも、理にかなっていない方法を教えている人もいるので、そういう人を生徒側が見極めるのは難しいかもしれません。
また、すでに述べたようにピアノの個人レッスンというのは、指導者側の主観が大きな場です。そこが集団で授業を受けるような学校や塾とは大きく異なる点でもあります。個人レッスンは生徒の上達には効果があると思われる一方で、先生の主観の影響をかなり受ける場でもあるのです。
それを認識してある程度の割り切りをしないと、ピアノや音楽を習っているのに、他の部分でも受けたくない影響を受けることになりかねません。これは事前によく認識しておいた方がいいでしょう。
これら方法をとっても、まだ相性の問題があるなら、残念ですが他の人を探した方が良さそうです。
- 自分の演奏を聴いてくれる最初の他人です
- これはよく言われる言葉です。結局のところ、ピアノの先生というのは、自分の演奏を聴いてくれる最初の他人であって、感想を言ってくれるだけであるということです。
これは結構当たっているかもしれません。もちろん、初心者にとっては違うかもしれませんが、上達するほどこの聴いてくれる第三者の役割である傾向は強くなるでしょう。ですから、既にある程度ピアノの実力がある人は、どんなピアノ指導者についたとしても、週に1回くらいの定期的レッスンという聴衆がいれば、それなりの効果があるのかもしれません。
当然のことながら、ただの聴き手ではなく、さらに上達に導いてくれる指導者の方が良いに決まってはいますが。
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