ピアノを習おうとしている生徒さんが、できるだけ理想の指導者にめぐり合うためには、どうしたらいいのでしょうか。
確実な方法というのはありませんが、いくつかのポイントを抑えておけば、少なくともおかしなピアノ指導者にめぐり合う確率を下げることはできそうですので、参考にしてみてください。
先生を探しのコツというけど
ピアノのレッスンを受けたいけど、どうやって先生を探していいかわからないという生徒さん(習うのが子供の場合は主に親ですが)も多いと思われます。
ピアノを教えている人は世の中にたくさんいますが、習う側にとって良い先生を見つけ出すことは難しいものです。
大切なのは、生徒には先生を選ぶ権利があるということ(逆は原則的にはないと考えます)。習う側はしっかりと意見を言うことも大事です。
しかし、何となく以下にようにはなっていませんか?参考程度に見てください。
知人の紹介を鵜呑みにしない
ピアノの先生を探すのに最も多い口コミです。
「あの先生は良いみたいだ」、「親戚の子が習っているけど良い先生らしいよ」などの口コミで、ピアノの先生を探すケースは多いと思います。
多くの人が良い先生だと言って信頼しているなら、それは結構確信の持てる情報のような気がしますが……実はあまり参考にならないケースもあります。
ピアノのレッスンというのはマンツーマンでの個人レッスンが普通です。それは教える側の主観がどうしても強くなる傾向があるので、ある人がいい先生と思っていても、それは習っている個人の主観的な判断なのです。
また、何がそのピアノの先生の良いところなのかという口コミの中身が肝心です。人柄のみがよくてピアノを教えることに関しては低レベルだとしたら意味がありません。
口コミは有用な情報源の1つではありますが参考程度にして、もし知人から紹介してもらうときは、できるだけ客観性のある情報のみを、頭に入れておきましょう。
生徒数は関係ない
「多くの生徒を教えている先生=多く人から信頼されている良い先生」という図式は、あてはまらないような気がします。確かに生徒数は一つの目安ではありますが、多いから良い、少ないから悪いというものでもなさそうです。
例えば、あるピアノの先生は一人で生徒を80人近く教えていました。1週間に80人のレッスンですから当然時間は短く一人につき10分のときもありました。もちろん、練習してこなかった生徒さんは5分で切り捨てです。
集団授業ではなく個人レッスンで80人の生徒をきめ細かく把握していることは普通では考えられないですし、生徒が練習をしてこなかったとしても、こういったことはお金をいただいている以上あまり褒められることではないでしょう。無理のない範囲で生徒数を数人で質の高いレッスンをしている先生も結構いるものです。
レッスン代も関係ない
レッスン代とレッスンの中身の関係は、比例でも反比例でもないようです。要するにあまり関係がないといっていいでしょう。ただし、あまりに高い、または逆に激安の場合は注意が必要です。
月謝が高い例では、「レッスン代はおいくらでしょうか?」という問いに「いくらでも結構ですよ」なんて指導者が昔はいました(今でも・・)。
現在ではそういったあいまいなことはピアノのレッスンでは少ないでしょうが、直接聞けない雰囲気のピアノ教室もいまだに存在しているようです(この場合は既にその指導者についている人に、レッスン代の相場を聞いてみたりと苦労があるのです……)。
逆に月謝が安い先生の例もありますが、安い先生がいいわけではありません。
主婦の延長線上にピアノ講師、ピアノ教室をやっていると小学生の生徒1名につき5,000円などの非常に安い月謝の先生はいますが、プロの指導者としての自覚があるのか無いのか逆に不安になりますし、新しいことを勉強していないようなことでは困ります。
レッスン代は最も肝心なことと言っても過言ではないので、初めにしっかり確認することが大事ですが、
意外とあてにならない「先生の紹介」
引越しをするので、いままでの先生に習えなくなるときに、現在の先生の紹介で次の先生を決める人もいるでしょう。でも、これが結構あてにならないのです。
今の先生がいいと思っていても、紹介された先生は、ただの知り合いというだけで、レッスンの方針などが似ているということは、まずありません。ですから、今の先生のレッスンがよくて、次の先生を紹介してもらうなら、知り合いの先生ではなく、レッスンに対する考え方が似ている先生を紹介してもらいましょう(これはおそらく難しいと思われますが)。
経歴はあてにならない
○○音楽大学卒業や○○へ留学・○○コンクール入賞などという経歴は、ピアノレッスンの質とは全く関係ないと言っていいでしょう。そもそも、こういった経歴はピアノ演奏の上手さとさえ関係ないのです。
生徒に教えるということは、指導方法の勉強をして今までのレッスンからさらに良い指導をしようを心がけているかが重要であり、ピアノそのものが上手ければ良い先生であるということではありません。また、卒業や留学といった経歴は音楽の世界ではそれほどの意味はないことであり、音楽大学や総合大学などの音楽系の学科で学んでいなくても、楽しくて質の良いレッスンをする優秀で評判の良いピアノ指導者はたくさんいます。
ただ、音楽大学受験などのために、その受験しようと考えている大学の教授や准教授や講師などにについて勉強する人はいると思います。これも必要不可欠なことだとは思えないのですが、講習会などに参加することは雰囲気を知るうえで有効だと思います。
初心者・初級者にこそ良い指導者が必要
ピアノに限ったことではなく、何事も初めの段階は重要です。
「うちの子は音楽の道に進むわけじゃないから、どんなピアノの先生でも」という考えではなく、出来る限り最初から良い先生を探す努力をした方がよいでしょう。
中級くらいまでは教えられる指導者ではなく、出来れば上級者まで指導しているが初心者や初級者の指導もしている先生を見つけることができるといいと思います。
バイエルや古典派中心のレッスンならちょっと注意
この考えには異論もあるかと思いますが、ピアノレッスンの指導者がバイエルや古典もの中心、今ではあまり使われないような古い教則本中心のレッスンなら、ちょっと注意した方がいいかもしれません。特に初心者に「ではバイエルからはじめましょう」などといって、習いに来た生徒に十分な説明もしないで、バイエルではじめようとするピアノの先生だったら、習うのをやめた方がいいでしょう。
理由はバイエルという、欠点が多く現在では使用が少なくなりつつあるものを、平気で人に薦めていること。そしておそらくそういったことをするのは、先生自身が習ってきたことしか教えられないからだと思うのです。
例えば、スポーツなどで良いフォームや力の使い方・戦術などの試合の勝ち方は、日々進歩していて、数年前とは全く違うといいます。それなのに、ピアノに関しては150年以上も前の教材のみが優れているなんてことはありません。(もちろん、先生自身がしっかりと勉強されて、その結果信念を持ってバイエルを使っている場合もある思いますし、それはそれほど悪いことではありません)
また、古典派をレッスンの中心においていること自体に問題はないと思いますが、「モーツァルトやベートーベンをきちんと弾けないと、先には進めない」といった考え方には要注意。ピアノ初級者にこそ、沢山の時代と沢山の種類の音楽を体験する必要があるので、「古典派が基礎であり他の時代の作品はもっと上達してから」いう考えの先生は、少し頭が固い可能性が大です。ピアノレッスンの世界も日々進歩していますから、古い伝統的なことを大事にしつつも、新しいことをたくさん学んでレッスンに活かしている指導者の方が良いように思います。
こういった点は重要なので、「バイエルから」とか「君は1年間古典のソナチネやソナタを弾きなさい」などと最初に言われたら、「なぜバイエルなんですか?古典派もいいですが他のものは弾かせてもらえないのですか?他にもっといいものはないのですか?」と、その指導者に聞いてみてもいいでしょう(まあ、なかなか質問しにくいとは思いますで、「最近はいろんな教則本があるみたいですね」のように話をしてみる方法も・・)。
この点に関しては、特集バイエルを考える1も合わせてご覧いただければと思います。
いかがでしょうか。これを読んでしまうとピアノ教室を気軽に選べなくなってしまいそうですね。
身近にどんなピアノの先生がいるかわからないときは、口コミに頼らずに電話帳やネットやフリーペーパーなどで探すのもひとつの方法だと思います。
ピアノ教室という仕事に、やる気を持っていてがんばろうと考えている先生というのは、何らかの行動をすると思います。ですから、フリーペーパーの広告やネットで情報を発信しているピアノの先生というのは、ある程度やる気がある人だと思うのです。
もちろん、これはそれほど大きな基準でもないので、一概にはいえません。ただ、例えばピアノの全国組織などに加盟していて、そこを通じて生徒さんを紹介するシステムなどに登録している先生は、生徒を教えるということに、やる気を持っている人であり、指導方法の研究もしている確率が高いと言えます。
そして指導者探しの究極の方法としては、気軽に試せばいいと思います。1ヶ月習ってみて、ダメそうだったらまた探す。
「でもそれもちょっと…」と思われるでしょう、そうですよね。
そこで、習う前に電話や初回の面談で判断できるような原則を考えて見ます。
続きはこちらの→よいピアノの先生を見つけるには2