ピアノ教室運営コツ2として、おろそかになりがちな知識編です。
ピアノ教室をやっている先生にとって、生徒を確実の増やして維持していくためには、やはり口コミによる生徒紹介がもっとも確実であり多いと思います。
口コミによる人紹介というのは、本来それほど信頼性の高い情報ではないかもしれませんが、現実には人の紹介で生徒が集まるケースが多いでしょう。
口コミをしてもらえるようになるには、日頃のレッスンの内容を充実させ生徒の信頼を得ることが最も大事ですが、ここでは知識を蓄えることや親からの信頼について。
音楽以外の知識を充実させる
ピアノの先生というのは、音楽の知識と経験、指導のやり方のレベルなどが充実して、習いに来る生徒に対して質の良いレッスンが出来ていれば、その他のことについては無頓着でも悪くはないと思います。
しかし、現実を考えるとなかなかそうはいきません。ピアノの先生は芸術家という位置づけとは違い、音楽教育というサービス業です。基本的な礼儀作法を身に付けていることは当然ですが、生徒とは音楽以外の話をしてコミュニケーションをとることも大事ですし、大人の生徒とは特に最近のニュース的な話題になることも多いものです。
また、小学生や中学生の生徒の親と会う機会は、最初の1回くらいかもしれませんが(お家に出張レッスンだと毎回ですが)、そこでも話が音楽のこと意外に移ったときに、ある程度知識の余裕はあったほうが「物事を知っているピアノの先生」ということになります。
これは非常に大事なことです。生徒の親が自分よりも年上のことは多いですし、年配の生徒の場合はたくさんのニュースを話題にしてきます。そういったことに余裕で対処できる先生でなければ、大人の目から見て「良い先生」には見えないものです。
別に難しく考える必要はありません。日頃から大きなニュースをチェックして、毎日の新聞をさらと読んでおくだけでもいいのです。もちろん、そういったニュースに対して考える力を養う必要はあります。
そして出来れば、音楽以外に自分にとって詳しいジャンルが、もうひとつふたつあるといいでしょう。何でもいいのです。本を沢山読んでいるとか、スポーツの特定分野でもいいですし、他に趣味として絵を描いているとか何かの資格を持っているでもいいのです。そういったちょっとしたスキルが、自分を高めて自信にもなります。
それに、世界のニュースや基礎知識というものは、結局は音楽にもつながっているのです。モーツァルトやベートーベンのピアノ曲が、楽譜として単独に存在しているのではありません。あの時代のオーストリアやドイツと現在の事情。歴史なども全て点ではなく網目のようなものだと思って、日頃から知を蓄えて思考することは重要です。
また、小学生の会話に無理についていく必要がないでしょうが、最近のアニメやゲーム、ドラマなど話題も一応頭の片隅くらいに入っていると、会話の弾み方が全く違います。
社会的な常識を身に付ける
音楽を専門にやってきて、音楽大学や大学の音楽科などを卒業して、すぐに自宅のレッスンや何処かの音楽教室で教えることになると、それが体験する世の中の全てになりがちです。
要するに、ピアノの指導者というのは、社会の一般の常識からかけはなれている人が、非常の多いのが実情です。それが一流の芸術家、演奏家なら特に問題もないのでしょうが、ピアノのレッスンを仕事とするのなら、一般的な良識を持った方が何かと良いでしょう。
例えば、名刺はつくって常に持っていますか?初対面の相手に対し、名刺を出して挨拶するのは、少なくても日本では常識ですから、常に準備しておきましょう。初回のレッスン時には、必ず差し出します。名刺はひとりに1枚を渡すのですから、生徒が子供の場合でも、子供と保護者ひとりひとりに渡しましょう。
金銭のトラブルが無い様に心がけて、レッスンの料金は明確にしましょう。月謝袋を使用なら必ず判を、使わないなら領収証を発行します。間違ってもレッスンの料金を多く請求するようなことがあってはいけません。
生徒の内情に介入しすぎないことは大事です。相談事を持ちかけられて話を聞くことは大事ですが、家庭の内情などを細かく聞き出すようなことは、やらない方が無難です。また、生徒に関して知った情報を、他の生徒などに話してはいきません。守秘義務とまではいかなくても、生徒と指導者の個と個の関係を、勝手に他人に話すのはマナー違反です。
音楽的知識をもっと充実させる
生徒や世間から見れば、ピアノの先生というだけで音楽についてよく知っている人と思われると、ちょっと大変なことがあります。一般にピアノの指導者でも、それほど音楽について詳しい人はあまりいないのが現状だと思います。
クラシックのピアノということに限定をしても、自分自身が習ってきたバッハやモーツァルト・ベートーベンに、ロマン派のショパンやシューマンといった人たちのピアノ曲については知識があっても、それ以外のピアノ音楽についてはほとんど知らないという指導者も、数多く多く存在します。
これは生徒の指導ということでも力量不足の一因ですし、生徒の親から見たら頼りない先生ということになりかねません。
生徒の親や大人の生徒というのがクラシックの愛好家で以前はよくレコードや、今もCDを聴く人だったら尚のことです。趣味の音楽愛好家の方が、音楽について多くを知っているということはよくあることです。そういう人は自らはピアノはほとんど弾けなくても、バッハ以前のバードやギボンズから、近現代のスクリャービンやメシアンにいたるまで、知識を網羅している人さえいます。
ピアノを専門に、しかも小さな範囲で習ってしまったピアノの先生は、どうしてもその知識のみになりがちなので、全く対抗できません。これではピアノ専門家という立場が危うくなってしまいます。
そうならないためにも、より多くの音楽を聴いて知っておくことが望ましいでしょう。本来はたくさんのピアノ曲を実際に弾いて知っていると良いのですが、それには大変な労力と膨大な時間が必要ですので、現実には困難です。
CDやDVDを聴くことはもちろんですが、テレビの音楽番組やラジオのFM放送などをチェックする、音楽雑誌などで最新の音楽事情を得ておくことも必要です。もちろんネットも重要な情報源です。
これら全てをやるのは大変に感じるかもしれませんが、日常の仕事や生活に上手に組み込めば、習慣になってしまうので、決して苦労なことではありません。
ただ同時に大切はことは、音楽に関して自分が知らない事を生徒やその親に聞かれたときは、はっきりとわからないと言うことです。知っているふりをして後で恥をかくよりも、知らない分野や事項もあるということも、生徒にわかってもらいましょう。
ピアノ音楽の中でも専門分野を持つ
上の項では幅広い知識を身に付けることの意義を述べましたが、専門の分野をひとつ作っておくことも重要なことでお薦めしたいスキルアップです。自分が絶対的に得意とする専門があることで、自信も深まりますしレッスンも充実します。
どういったことでもいいのですが、専門の作曲家をひとつ絞るのが早くて効果的です。
「ショパンが得意」とか「ベートーベンについてはよく知っている」という具合にです。別に弾いたことがあるかどうかではありません。ショパンの練習曲で弾けないものあっても、ベートーベンのピアノソナタ32曲にうち半分くらいしか弾いたことが無くてもいいのです。それについての研究して、作品についてより親しみを持つことができればいいでしょう。
弾かなくても聴くことは重要です。本来は複数のピアニストのCD全集ものをそばに置いておきたいところですが、ラベルのように曲数が少ない作曲家ならともかく、曲数が多い作曲家だと全集をひとつが普通ですね。でもピアニストによって比べられるように、好きな曲はさらに複数のピアニストで揃えておきたいものです。
さらに楽譜も重要です。専門とする作曲家の楽譜も、理想的には複数の原典版と複数の校訂版を揃えておきたいものですが……現実にはそんなにいっぱい持っている人も少ないでしょう。
ヘンレとペータースと日本の全音と音楽の友社とたくさん揃えるのは大変ですので、原典と校訂の2種があればとりあえずはいいでしょう。
楽譜の研究は必須です。2種であればフレージングの違いや音の違いがあって面白いですし、生徒が持っている楽譜と比べることもできます。こだわりすぎる必要もないでしょうが、特に昔の曲は版によってそれぞれ編集の方針に違いがあるということを、生徒に伝えることも重要なピアノ教育です。
ちなみに生徒には安い日本版でいいと思います。そのあと専門的な道に進むことになったとしても、日本の校訂版を持っていることは、決して無駄なことではありません。