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豆知識-Mendelssohn メンデルスゾーン

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ピアノ関係の作曲家の「ピアノ豆知識」。

今回はメンデルスゾーンを取り上げてみましょう。 一般にはバイオリン協奏曲のメロディーが有名で知られているメンデルスゾーンですが、ピアノ作品もかなりの数を残しています。数々のピアノ曲はどれも美しく、学習者にも好まれています。

メンデルスゾーンについての生涯や作品などの詳しい話については、研究家の方にお任せするとして、ここでは主要ピアノ作品や一般のピアノ愛好者が実際に弾ける作品について考えてみます。


メンデルスゾーン  Felix Mendelssohn

略歴

1809年2月3日ハンブルク生まれ〜1847年11月4日ライプチヒで没。姉のファニーとともに、幼い頃からピアノ習い始める。裕福な銀行家の息子だったらしい。

早熟の天才肌のロマン派作曲家

メンデルスゾーンの顔

若い頃から優れた作品を多く発表するなど、実は早熟な天才肌な作曲家として知られています。38年という長くはない人生だったことも、メンデルスゾーンが天才的と言われている要因かも知れません。

メンデルスゾーンは1809年の生まれですから、ショパンとシューマンより1歳、リストより2歳年上で、これらのロマン派の大作曲家とほぼ同年代ということになります。

しかし作品の傾向としては、そういった同時代の作曲家のようなロマンチックな曲や濃厚さがある音楽というよりも、古典的な形式美を備えていて、その上に甘美なメロディーを載せているような作品が多いでしょう。
ですから、いつでも均整がとれていて美しいメロディーの曲が多く、決してガサガサとしたような音楽にはなりません。そうしたことら、初期ロマン派の音楽を知り、ピアノを歌わせる演奏を習得する上で、メンデルスゾーンは非常に適した作曲家だと言えます。

作品について

メンデルスゾーンの全作品中で最も有名な曲はやはりバイオリン協奏曲でしょう。冒頭の切ないメロディーから始まるこの曲は、多くのバイオリン協奏曲の中でも多く演奏される作品であり、メンデルスゾーンの代表曲となっています。また、交響曲第3番「スコットランド」や第4番「イタリア」なども、演奏機会の多い作品です。

ピアノ曲も数も多く、ピアノ学習者にも多く演奏されています。メンデルスゾーンが生涯にわたって作曲を続けた「無言歌集」のほか、「ロンドカプリッチョーソ」や「厳格な変奏曲」などが、有名です。


ピアノを曲を弾いてみよう

一般のピアノ愛好者でも弾ける曲は?

メンデルスゾーンのピアノ曲は、初級者でも弾けるようなものから、演奏会で弾かれるものまで作品数も多数です。

一般的にピアノ学習者に人気なのは「ロンドカプリッチョーソ」でしょう。ピアノの発表会や各地のコンクール等で登場する機会が非常に多い曲です。他にももう少し難易度が簡単で弾きやすい曲もあります。
そこで、趣味のピアノ愛好者でもある程度のピアノ経験があり、「エリーゼのために」やブルクミュラー25番練習曲やクーラウやクレメンティのソナチネなどを弾ける程度の人が挑戦できそうなメンデルスゾーンのピアノ曲をいくつかみていきましょう。難易度は「ベニスのゴンドラの歌(舟歌)Op.30 No.6」が★★だとして、★1個から7個でつけていますが、あくまで目安です。

メンデルスゾーン 無言歌集 解説付 New Edition
メンデルスゾーン 無言歌集 解説付 New Edition

ピアノ学習者の教材にも使用されることが多い無言歌集です。無言歌は、歌詞が無くメロディーのみの歌ということですから、旋律と伴奏というピアノ曲です。難易度も様々な美しい曲が48曲も収録されていますので1冊あると便利です。
作曲者自身による標題は「ベニスの舟歌」の3曲と「二重唱」と「民謡」の5曲のみと言われています。

甘い思い出 Op.19 No.1
3声になっている曲で、メロディーと伴奏のバランスだ大事ですが、アルペジオを左右の手で一つの流れに弾くことが課題となります。和声の変化も十分に感じて弾いてみましょう。★★★(2.5)
狩人の歌 Op.19 No.3
勢いよく和音を弾くところも多く人気曲ですが、和音の響きには注意しながら、ペダルの加減や音のバランスに配慮しましょう。後半に左手低音がメロディーを弾きますが、右手の分散和音の伴奏が崩れないように注意しましょう。★★★
ベニスのゴンドラの歌(ベニスの舟歌) Op.19 No.6
こちらも無言歌集の中では弾きやすい曲です。8分の6の流れに乗って、美しくメロディーを弾いてみましょう。3度や6度といった音をきれいに弾く練習にもなります。★★(2.1)
なぐさめ Op.30 No.3
1ページと短く難易度も低めですが、アルペジオや和音、ペダルの使い方、リズム、デュナーミクの幅など、多くの要素が入っている曲なので、ピアノ学習者には良い課題になる曲です。既に難しい曲を弾ける人でも、こうした曲をしっかりと弾いてみましょう。★★
ベニスのゴンドラの歌(ベニスの舟歌) Op.30 No.6
3曲あるベニスの舟歌の中で最も易しい曲ですが、ピアノの発表会などでも演奏される機会も多く人気曲です。2ページと短いですが単調にならずに十分に旋律を、品良く歌いあげたい曲です。舟歌のリズムの左手伴奏型にも配慮が必要です。★★(この曲の解説はサイト内楽曲解説メンデルスゾーン「ベニスの舟歌」に掲載しています)
他の2曲のべニスの舟歌の難易度は、この曲よりほんの少し高いでしょう。
過ぎ去った幸福 Op.38 No.2
少し悲しい雰囲気で、四声の構成を意識して弾くです。最上声部のメロディーの流れも大切ですが、左手のバス音の流れもよく耳で聴いて弾けると、仕上がりが良くなるでしょう。あまり遅すぎないように弾くこともポイントです。★★★
詩人のハープ Op.38 No.3
常に3声を保って演奏する曲で、中声部の動きを右手と左手で演奏するところが課題になる場合が多いでしょう。プレストアジタートほどの厚みのある曲ではありませんが、非常に美しい曲なので、ハープのような伴奏とメロディーの融合を上手く表現できると、いい演奏になると思います。★★★★(4個では多いかも3.6くらい)
プレストアジタート Op.53 No.3
ある程度のレベルのピアノ学習には、定番ともいえる曲です。左手の分散和音にのって、右手の和音の迫力あるメロディーは、非常に華やかであり弾き栄えがするので、中級者くらいのレパートリーとしてぜひ習得しておきたい曲でしょう。★★★★(4個では多いかも3.6くらい)
悲しい心 Op.53 No.4
和音のバランスに配慮しながらメロディーを美しく、そして曲の雰囲気作りを大切にしたい曲です。指が届かない和音はアルペジオのように弾く方法で対処してみましょう。★★★(2.5)
葬送行進曲 Op.62 No.3
何度も出てくる3連符を含むリズムが、確かに葬送行進曲風です。このリズムの和音をしっかりとつかんでピアノを鳴らし、乱れないように演奏することが必要です。曲が短いので和音の練習にもいいでしょう。★★★(2.5くらいかな)
春の歌 Op.62 No.6
今では編曲されて、バイオリンの独奏として演奏される機会の方が多い曲で、この無言歌集の中では最も有名曲でしょう。装飾音符を弾くことに集中しすぎると、旋律の線が崩れやすいので注意が必要です。★★★
夜曲 Op.85 No.1
一貫して左手が下からのアルペジオの流れが続く曲なので、左手練習にも効果的です。曲自体はメロディーとアルペジオの簡単な構成ですが、強弱をうまくつけた表現でまとめてみましょう。★★★

メンデルスゾーン『ピアノ曲集1』
メンデルスゾーン『ピアノ曲集1』

厳格な変奏曲 ニ短調 Op.54
メンデルスゾーンのピアノ曲というのは、学習者が弾く機会はあってもピアニストのリサイタルなどではプログラムに入っていないものです。少し軽い音楽が多いせいもあると思います。
そんななか、この「厳格な変奏曲」は最もピアニストの演奏会で登場する頻度が多いと思います。メンデルスゾーンの他のピアノ曲と少し異なり、本格的なピアノ作品の雰囲気を持っているせいでしょうか。
技巧的にも少々難しく、内容も暗めの旋律で重さがある曲です。演奏時間も少し長めです(11分〜13分くらいでしょうか)が、変奏曲をしっかり勉強したい学生などは挑戦してみてもいいと思います。最後の聴かせどころまでに息切れしないようにしたいものです。 ★★★★★

メンデルスゾーン:ピアノ曲集 (2)
メンデルスゾーン:ピアノ曲集 (2)

ロンドカプリッチョーソ(ロンドカプリチオーソ) Op.14
メンデルスゾーンのピアノ曲では最も演奏されているでしょう。ゆったり始まって華麗な技巧を聴かせる部分にはいっていくバランスが良いところが、人気の理由でしょうか。
華やかな速いパッセージがあるのですが、実はそれほど難易度は高くなく、多くのピアノ曲を弾いてからこの曲を弾く人には、ある種の弾きやすさもあると思います。そのせいか中学生くらいでも完璧に弾ける人も多く、また、曲には深みがあまりないので、ピアニストのリサイタルの曲目に入っていることはほとんどありません。
ただ、そういった教育的な作品というイメージはあるのもの、弾けるとかっこいい多くの人のあこがれの曲であることは確かだと思いますので、レパートリーとして持っていると良いと思います。★★★★(5は無いでしょうか、4.4くらい)

こんな感じでいかがでしょう。メンデルスゾーンのピアノ曲は、ピアノ初級者から上級者まで弾ける曲が揃っていますので、自分のレベルに合わせた選曲をして楽しむといいと思います。


ピアノ選曲と演奏のポイント

どの曲を弾くときにも共通することですが、美しいメロディーが埋もれないように弾きましょう。

上にあげた中では、初級者の人がまず弾いてみるなら無言歌集の「ベニスの舟歌」の2曲が定番で、あとは「葬送行進曲」や「狩の歌」などが初中級くらいでしょうか。
それらレベルも既に弾けている人は、無言歌集の中でもう少し難易度の高い「プレストアジタート」などに挑戦していけるでしょう。

どの曲もメンデルスゾーンの場合は、困難なピアノ技巧に出会うことは少ないのが特徴です。ですので、古典派のような音階や分散和音が多い曲や、本格的なロマン派のピアノ曲までは弾きこなせないという、一般のピアノ愛好者でも、メンデルスゾーンなら楽しんで弾ける曲が見つかると思います。
ピアノ学習者の位置づけとしては、メンデルスゾーンを長期間弾き続けるということは少ないかもしれませんが、シューベルトやショパン、シューマンなどのピアノ曲を弾く一歩手前の段階の、「初期ロマン派ピアノ曲の練習」という意味でも、重要な作品が多いでしょう。例えばショパンの「ノクターン集」やシューマン「子供の情景」、「幻想小曲集」などを弾く前に弾いておくことがお薦めです。メインに練習している曲が他にあっても、時々練習のメニューにうまく取り入れてみるといいと思います。

右手のメロディーをまず弾いてみると、どんな曲なのか想像がつきやすいと思うので、それから選曲して練習するといいでしょう。和音が厚い曲でも、響きが濁らないようにしたいものです。


鑑賞に、参考に聴く

既に述べたように、メンデルスゾーンのピアノ曲には大曲が少なく、リサイタルで演奏される機会は多くはありません。当然のことながら録音ものも少なめです。
誰の演奏が良いのかというと、それは最後は好みですから、なんとも言えませんが、数枚の名盤をあげてみると。

メンデルスゾーン:ピアノ曲集
メンデルスゾーン:ピアノ曲集
オコーナー
名ピアニストでありながら、比較的地味な選曲を録音することも多いオコーナー。だが、ここでも彼の品の良い演奏が展開されています。
どの曲も良いレベルでまとめられていますが、もう少し表情に豊かさをつけてもらいたいと感じる人もいるかもしれません。
メンデルスゾーン:無言歌集
メンデルスゾーン:無言歌集
田部京子
シューベルトなどにも深い味わいを聴かせる田部京子のメンデルスゾーン。こういった分野も録音しているのが好感が持てますし、格調高い演奏スタイルは大家のような印象さえ受けます。
昔の無言歌集録音の定番だったエッシェンバッハなどの無言歌集よりも、香り高い演奏のように感じます。

メンデルスゾーンに対する素朴な疑問

よく言われていることに関して、ちょっと考えてみましょう。

天才肌でロマン的なのか?

メンデルスゾーンの顔2

以前はメンデルスゾーンは非常にお金持ちのイメージがあったようですが、本当に裕福だったかは、研究者間でも意見が分かれているようです。どちらにせよ、何にも困らずに作曲に専念していたのではないようです。

「天才肌」などと言われることもありますが、作風としては、同年代の作曲家が独自の音楽スタイルを模索して、新しい傾向の作品を発表していたのに対し、メンデルスゾーンはそういった傾向はあまり見られず、むしろ従来の古典派の枠内のような、整った形式の音楽を好み、その中でロマン的な美しい旋律を活かした作品を生み出していたように感じます。

それはピアノ曲に限らず交響曲などにも言えることで、ショパンやシューマン、リストなどと比較してしまうと、どうしても「昔の曲」という印象は否めません。
また、メンデルスゾーンの音楽は浅いという声もあります。早熟型の天才ではあったのですが、年齢を重ねてからの音楽に深みを増したような充実度の高い作品といったものは少なく、ピアノ曲では学習者のための音楽、オーケストラ曲では軽音楽的といった受け止められ方があるのも事実です。

しかし、ピアノ曲は学習者にとって大切な教材とレパートリーとなっていて、本格ロマン派を弾く前段階の勉強に、非常に役立つでしょう。
また、ライプチヒ音楽院の設立や、バッハを広く世の中に紹介し素晴らしさを伝えたなどの功績は、母国のドイツとイギリスなどでは大変高く評価されており、日本では今ひとつメジャーになりきれない作曲家ではあるものの、生誕200年を迎える2009年には、何らかの再発見と特集なども、あるのかもしれません。

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