ピアノレッスンのヒント集

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ピアノ関係の作曲家の「ピアノ豆知識」シリーズ

今年2010年はショパンの生誕200年の記念イヤーです。
「ピアノと言えばショパン」というほど、ショパンは良く知られています。ピアニスト、一般の愛好家のどちらにもショパンのピアノ曲は演奏される機会が多いでしょう。

ショパンについての生涯や作品などの詳しい話については、研究家の方にお任せするとして、ここでは主要ピアノ作品や一般のピアノ愛好者が実際に弾ける作品について考えてみます。
ショパンの楽譜選び方については、ショパンの版選びでも解説していますので、あわせてご覧ください。


ショパン  Flyderyk Franciszek Chopin

略歴

1810年3月1日ジェラゾヴァ ヴォラ生まれ〜1849年10月17日パリで没。母と姉にピアノを習ったあとは、ほとんど独学でピアノを学んだと言われる。メンデルスゾーンやシューマンやリストなどが、ほぼ同年代の作曲家。2010年は生誕200年の記念年です。

ピアノ音楽を極めた詩人

ショパンの顔

同時代のシューマンやリストがピアノ曲以外のオーケストラ曲なども多数作曲していたのにたいし、ショパンは少しの室内楽とピアノ協奏曲という作品はありますが、ほぼピアノ作品のみをつくり続けたことが、大きな特徴でしょう。

ショパンを形容する言葉として「ピアノの詩人」というものがあります。この時代は楽器も進化して、多く作曲家やピアニストによってピアノの奏法が研究されていた時代でしたが、ショパン自身も独自の奏法を研究し続けたピアニストでもあり、そのショパンにしかできない独特のピアニズムから生み出された繊細で華麗な数々のピアノ曲は、ピアノという楽器の持つ表現力を最大限に生かすように作曲されています。
ショパンのピアノ作品は、一流のピアニストの手によって演奏されると、まるでピアノが自在に歌っているかのような魅力を存分に発揮します。

作品について

作曲活動がほぼピアノ曲に限定されていたショパンの音楽は、当時としてはおそらく斬新な作風だったと思われます。自国ポーランドの音楽に独自のセンスを加え、指の使い方なども独自のものがあり、ピアノを歌わせることを追求したショパンのみの世界観をつくりあげました。

現代でも演奏会でショパンの作品が取り上げられる機会は非常に多く、人気があります。2曲の「ピアノ協奏曲」や「ピアノソナタ」などの大きい曲のほか、「エチュード(練習曲)」や「ポロネーズ」、「プレリュード」などもよく演奏されます。


ピアノ曲を弾いてみよう

一般のピアノ愛好者でも弾ける曲は?

ショパンのピアノ曲は、初級者でも弾けるようなものから、演奏会で弾かれるものまで作品数も多数です。

一般的にピアノ学習者に人気なのは「ノクターン」と「ワルツ」でしょうか。ピアノの発表会や各地のコンクール等ではこれらのほか、「プレリュード」や「エチュード」の一部なども演奏される機会が多いでしょう。
そこで、趣味のピアノ愛好者でもある程度のピアノ経験があり、「エリーゼのために」やブルクミュラー25番練習曲などのピアノ曲を弾ける程度の人が挑戦できそうなショパンのピアノ曲を、いくつか曲目解説をしていきましょう。難易度はショパン「ワルツ19番 イ短調(遺作)」が★★だとして、★1個から7個でつけていますが、あくまで目安です。

標準版ピアノ楽譜 ショパン ワルツ集 New Edition 解説付
標準版ピアノ楽譜 ショパン ワルツ集 New Edition 解説付

踊りのためのウイーン風ワルツとは質が少々異なる点が、ショパンのワルツの特徴でしょう。ショパンの作品の中ではもっともフランス風などと言われることもありますが、随所にショパンらしさがある秀作ばかりです。どの曲も演奏効果が高いので、発表会などでもよく演奏されます。

ワルツ第1番 変ホ長調 Op.18 華麗なる大円舞曲
ショパンのワルツの中でも、演奏される機会が多い有名なワルツです。
同音の連打と曲の長さということがポイントになると思いますが、曲の技術的な難易度としてはそれほど難しいわけではないので、少し大きめの曲の挑戦してみようと思う方にはお薦めのワルツです。★★★★(3.5としておきましょうか)
ワルツ第3番 イ短調 op.34-2 華麗なる円舞曲
演奏される機会が多くはありませんが、ショパンらしさのある曲です。
仄かな暗さのような独特の雰囲気でゆっくりと演奏される曲なので、各声部の意識をしっかりと保って弾くことができれば、演奏しやすい曲でしょう。★★★(2.6くらい)
ワルツ第5番 変イ長調 op.42 大円舞曲
この5番くらいになると、演奏効果のある華やかなワルツです。
出だしのトリル後から、右手メロディと左手の4分音符の拍感に注意が必要ですが、ゆっくりと弾いて慣れてしまえば大丈夫でしょう。右手の動きが活発になる場面では、左手の伴奏も音を外さないようにしたいものです。テンポも幾分速めにしないと、曲の感じを引き出せないでしょう。★★★★(4は多いかな、3.6くらい)
ワルツ第6番 変ニ長調 op.64-1 小犬
ピアノ学習者に演奏される機会が多いショパンの曲ナンバー1ではないでしょうか。
フラット5個で一瞬弾くことをためらう人もいるかもしれませんが、超高速で弾くので無ければとても弾きやすい曲でショパンのワルツもこの曲から弾いたという人もいるでしょう。ただし、装飾音のタイミングには注意して転ばないように。また、あまりに遅いテンポでは聴きばえがしません。★★★(3.0くらい)
ワルツ第7番 嬰ハ短調 op.64-2
中級くらいの実力の方には、最も人気のあるワルツでしょうか。ショパンの曲を並べたピアノリサイタルでも組み込まれる機会も多い曲です。
33小節目からの右手の旋律に苦労する人もいますが、手首に余計な力を入れずに楽にして弾きましょう。全体にペダルの入れ方にも工夫が必要です。2拍目や3拍目のどの位置でペダルの踏み代えやペダル無しにするのかを、ご自分の演奏スタイルもふまえた上で十分に検討して弾きたいものです。このワルツくらいが弾けると、とてもかっこいいいですね。★★★(3.4くらい)
ワルツ第9番 変イ長調 op.69-1 別れ
ショパンをこのワルツから弾きはじめた人も多いでしょう。とても弾きやすい曲なので、初級者にも人気です。
ただし、ロマン的な表情をつけて弾こうとしすぎて、だらだらとした演奏にならないようにしたいものです。アクセントがついている音は、幾分押し気味にしっかりと弾き、リズム感も崩れないように保ちましょう。半音階で上昇していく連符は、もつれてしまうくらいなら多少はゆっくりと弾いても大丈夫です。★★(2.4にしておきましょう)
ワルツ第10番 ロ短調 op.69-2
9番と同じ程度の難易度で、こちらも弾きやすいワルツです。
少し暗いメロディーは、とても入り込みやすい曲ではありますが、アクセントのついた音をしっかりと感じながら弾きましょう。左右のバランスにも配慮が必要で、左手も少々主張があるくらいの方が、充実した演奏になるかもしれません。従来のパデレフスキ版と最近の楽譜では音が異なる箇所が多い曲の1つです。★★(2.3くらいで)
ワルツ第13番 変ニ長調 op.70-3
派手さはありませんが、優美なワルツです。
雰囲気としてはノクターンに近いような印象で、それほど豪華ではありませんが素直に心地よさを感じる人も多いでしょう。常に複数の旋律の流れになっているところがポイントですので、各声部をよく聴いて弾きたい曲です。★★★
ワルツ第14番 ホ短調(遺作)
速いテンポで華やかさもあり、とても人気のあるワルツです。
広い音域やメロディーの表情が変わるなど演奏効果も高い作品ですが、それだけに少し難しさもあるでしょう。右手の動きばかりに気をとられると、左手の1拍目をミスタッチする人も多いので注意が必要です。終結部も豪華に弾いて終わりたい曲です。★★★★(3.6くらい)
尚、こちらの実践編曲目解説で「ワルツ14番(遺作)」のポイント解説をしています。
ワルツ第19番 イ短調(遺作)
ショパンの入門としておなじみの短いワルツです。
素直で親しみやすい旋律と、シンプルな左手の伴奏系といったスタイルで弾きやすい曲なので、ショパンを弾いたことがない人も、ぜひ挑戦してみてください。
(この曲の解説はサイト内楽曲解説実践編 ショパン「ワルツ」に掲載しています)★★(2.0)

ウィーン原典版(65) ショパン ノクターン集
ウィーン原典版(65) ショパン ノクターン集

ノクターン2番(9-2)に代表されるような甘美なメロディーでショパンらしさのある作品も多く、一般のピアノ愛好家には人気がありますが、右手の連符が多めなことと譜読みで少し苦労する場合もあるようです。また、曲によってはショパンエチュード並みの難しい曲もあります。

ノクターン第1番 変ロ短調 Op.9-1
感傷的な旋律が印象的なノクターンです。
ただし、感傷的になりすぎたような弾きかたをすると、特に中間部がだらだらとした演奏になりがちですので配慮が必要でしょう。右手の動きに気を使う箇所がありますが、左手の流れも大切に。★★★(3つはないかな、2.8くらいで)
ノクターン第2番 変ホ長調 Op.9-2
ショパンの全作品の中でも最も有名な曲のひとつでしょう。
品のある優雅な右手メロディーと、左手の和声進行の工夫が一体となっているのが特徴の作品で、初中級者の多くの方が弾きたい曲でしょうが、多少読譜みに時間がかかる場合もあるようです。弾くこと自体は難しくないので、ぜひレパートリーに加えてみましょう。フィギュアスケートの浅田真央選手が06〜07シーズンのショートプログラムで使用していることでも知られています。★★★(3.2くらい)
ノクターン第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2
こちらも有名なノクターンです。
おだやかな感じのメロディーの中に、連符の少し変わった表情が入っているのが特徴です。難しくはない作品ですが、少々楽譜が込み入っている印象を受ける人はいるでしょう。細かい装飾音符も、あせらずに弾ければそれほど問題ないと思います。★★★(3.3)
ノクターン第8番 変ニ長調 Op.27-2
こちらも有名なノクターンで、少し規模の大きな作品です。
ゆったりとしたメロディーから盛り上がりの箇所まで幅広い表現力が求められる作品で、これくらいになると小品という域を抜け出して中規模適度のピアノ曲と言えるでしょう。細かい連符は指によく馴染ませてから弾くように、最大の聴かせどころの3連符の連続も慌てないように弾きましょう。★★★★(3.7)
ノクターン第9番 ロ長調 Op.32-1
譜読みがしやすいノクターンです。
メロディーも甘く優雅なだけではなく少しの切なさも含まれているような印象で、感情移入しやすい作品でしょうか。終わりの部分に曲を締めくくる強い箇所があるのが特徴的な作品です。★★★(2.8)
ノクターン第13番 ハ短調 Op.48-1
この曲は少し難しいノクターンで、中上級者以上の方向けです。
きれいなメロディーから入りますが、この曲の聴かせどころは中間部の左手にメロディーが表れて激しく動くところです。この部分は右手も難しいのでよく練習する必要がありますが、演奏効果が高い作品ですから発表会などにも向いている曲でしょう。後半のアルペジオの連続も腕に余計な力を入れないように。★★★★★(4.5)
ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作)
切ないメロディーのこの曲も映画などにも使われる有名なノクターンです。
トリルや連符はありますが、それ以外には細かい音符があまりないので楽譜は読みやすく、弾きやすいノクターンだと思います。ただ、終盤の連符が続く箇所で、少しとまどいを感じる人もいるでしょうか。右手の連符と左手のどの音をあわせるのかを、だいたい決めてみるとわかりやすいでしょう。★★★(3.3くらい)
ノクターン第21番 ハ短調(遺作)
シンプルでありながらもショパンらしいメロディーラインの曲です。
左手を右手メロディーとのブレンド感に気をつけて、単なる伴奏にしないようにしましょう。後半の右手の連符は左手の8分音符と合わせにくいかもしれませんが、どこかで合わせてゆっくり練習してみると弾きやすいでしょう。短いですが、演奏効果もあるノクターンです。★★★(3.2)

ウィーン原典版(58) ショパン 即興曲集
ウィーン原典版(58) ショパン 即興曲集

4つの即興曲はどれもショパンらしさのある曲です。ワルツの少し難しい曲を弾ける方くらいの実力で挑戦できると思います。

即興曲第1番 変イ長調 Op.29
発表会などでも演奏される機会も多く学習者にも人気の曲です。少し速めのテンポで演奏しないと即興曲の雰囲気にはならないので、それなりの難しさはあるでしょう。中間部はたっぷりと歌って前後の速い部分との対比を明確に。★★★★
幻想即興曲(即興曲第4番) 嬰ハ短調 Op.66
ショパンの即興曲で最も有名なのは、ショパンの生前には発表されなかった幻想即興曲でしょう。指の動きがある程度スムーズな方にとっては弾きやすい曲なので中級者くらいの方におすすめです。ただし、左右の3つと4つのリズムは正確にしっかり把握する必要があり、何となく流れてしまってリズム感のない演奏にならないように。★★★★(4もないかな、3.8くらい)

標準版ピアノ楽譜 New Edition ショパン エチュード集
標準版ピアノ楽譜 New Edition ショパン エチュード集

ショパンのエチュードははテクニックと音楽表現ということを、見事に兼ね備えている芸術作品として仕上がっています。
残念ながら簡単に弾ける曲は少ないのですが、「12のエチュード 作品10」と「12のエチュード 作品25」から、中級者くらいでも弾きやすい曲や有名曲をいくつかご紹介してみましょう。

エチュード第1番 ハ長調 Op.10-1
右手が広い音域にまたがるアルペジオが連続するエチュードで、決して簡単ではありません。
指使いを確実にして、手の柔らかい使い方を意識して根気よく練習する必要がある曲ですが、しっかりと弾くことができればかなりのテクニックを持っているということでもあります。煌びやかな曲なので、十分に弾けるならば人前での演奏にも効果的でしょう。★★★★★(5.2)
エチュード第3番 ホ長調 Op.10-3 別れの曲
冒頭からの有名なメロディーが、昔ドラマで印象的に使われたせいか、ショパンのエチュードの中でも最も有名な1曲となっています。
しかし、そのメロディーから雰囲気が変わった直後からが、エチュードらしい動きが多く入っていて、ここから先はあきらめてしまう方もいるようです。短い曲ですが、挑戦する場合はある程度技術力を蓄えてからの方が良いでしょう。★★★★★
エチュード第4番 嬰ハ短調 Op.10-4
左右の手ともに非常に高速なパッセージで、一気に弾けるとカッコイイ曲です。
多くのフォルテの表記がある作品として有名ですが、練習段階では確実に弾くことを意識して、次第にダイナミックに弾けるようにしていくのもいいでしょう。ところどころかなり難しい箇所が連続しますが、この曲までに多くの練習曲をしっかりとした練習を積んで弾いてきた人にとっては、弾ける曲だと思います。★★★★★
エチュード第5番 変ト長調 Op.10-5 黒鍵
右手が黒鍵を弾く有名なエチュードです。
作品10の指定テンポが速めのエチュードの中では最も弾きやすいので、ショパンのエチュードにこの曲から挑戦する人も多いと思います。輝かしく指定テンポで弾くにはそれなりに練習が必要ですが、一般のピアノ愛好家の中級程度の実力の方でも、ほどよく仕上がる可能性が大きい曲で、同じく有名な「革命」や「別れの曲」と比較すると弾きやすいでしょう。★★★★
エチュード第6番 変ホ短調 Op.10-6
作品10のエチュードでは、唯一ゆっくりな曲です。
このエチュードの目的は、当然のように指を速く動かすことではありません。メロディーと内声の動きに注意して、いかに音楽的表現ができるかのエチュードです。音大の入試ではショパンのエチュードを指定していても、この曲を除外しているところがほとんどだと思いますが、一般の愛好家には最も弾けるチャンスがあるエチュードです。★★★
エチュード第9番 ヘ短調  Op.10-9
左手のアルペジオ練習非常に効果的なエチュードです。
左右の5個と6個、また5個と4個の音符は、練習のはじめの段階ではしっかりとごまかすことなく弾きましょう。右手のフレーズ感にも注意が必要です。左手は当然のように柔軟に使いながら弾きます。一応形になる程度に弾くなら、この曲も中程度の実力で挑戦できます。★★★★(4.4)
エチュード第12番 ハ短調 Op.10-12 革命
「別れの曲」や「黒鍵」と並んで有名なエチュードです。
左手の速いパッセージの連続は、ところどころ難しい箇所があるので、柔軟なアルペジオ奏法が求められます。余計な力が入っていると対応できません。また左手が注目されがちですが右手の和音メロディーも重要で、和音をしっかりととらえて弾きましょう。曲調が変わる終盤もだらだらと弾かずに、水面下での緊張感を保つように弾くと、最後の締めくくりが生きてきます。★★★★★
エチュード第2番 ヘ短調 Op.25-2
作品25のエチュードの中では、比較的弾きやすく人気があり、即興曲のような印象もある作品です。
ショパンのエチュードをこの曲からという人もいるでしょう。しかし、レガートで常にピアノ(弱め)を保って指定テンポで弾くには、それなりの技術力が必要です。途中の数箇所で乱れないように、指使いはしっかり決めて弾くように。中級くらいの実力の方でも挑戦できるでしょう。★★★★(4もないかな、3.8くらい)
エチュード第7番 嬰ハ短調 Op.25-7
多声音楽な横の旋律の流れが特徴で、非常に美しい曲です。
作品25のエチュードの中で、唯一テンポがゆっくりな曲ですが、このテンポの中でも左手に急速な半音階的パッセージが数箇所あるので、そこで乱れないような配慮が必要になります。中級くらいの実力で弾ける曲ですが、バランスに気を使う必要がある曲です。★★★★(3.7くらい)

ウィーン原典版(100) ショパン バラード集
ウィーン原典版(100) ショパン バラード集

ショパン独特のピアノ音楽のジャンルとも言えるバラードは、「物語」という意味であり詩を元にしたとも言われるストーリー性のある音楽で、ショパンのピアノ作品の中でも特に注目される曲達です。
4つあるバラードはどれもそれなりの難しさを持っていますが、1曲大きな曲に挑戦という方はぜひ弾いてみるといいでしょう。

バラード1番 ト短調 Op.23
バラードの中では最も有名な曲でコンサートでも弾かれる機会の多い曲です。しっかりとした仕上げのレヴェルで弾くためにはテクニック的にも難しい曲ですが、それなりにまとめるのであれば中級以上のピアノ愛好者でもなんとか形にすることはできる曲ですのでショパンの大曲に挑戦したみたい方は時間をかけて取り組んでもいいでしょう。★★★★★(5.3くらい)
バラード2番 ヘ長調 Op.38
高速の部分を練習してしっかりと手に馴染ませることができるならば、中上級以上の方には現実的に挑戦できる曲です。短めなのでバラードを弾く時にはこの2番からという方もいると思います。 ★★★★★(4.6)
バラード3番 変イ長調 Op.47
ショパンのバラードの中では弾きやすい方ですが、やはり相応のテクニックは必要となります。人によっては2番よりも幾分挑戦しやすいと思うかもしれません。 ★★★★★(4.5)
バラード4番 ヘ短調 Op.52
最も難しいバラードはやはり4番でしょう。それは中盤や終盤にテクニック的な難所が多いというだけではなく、冒頭からの繰り替えされる歌の聴かせ方や演奏の構成力や音色の使い方など、ショパンのピアノ演奏の総合力が問われるような作品だからです。 ★★★★★★

こんな感じでいかがでしょう。ショパンのピアノ曲はピアノ初級者から上級者まで弾ける曲が揃っていますので、自分のレベルに合わせた選曲をして楽しむといいと思います。


ピアノ選曲と演奏のポイント

どの曲を弾くときにも共通することですが、メロディーの歌い方や響きのバランスに配慮して演奏したいものです。

譜読みと弾きやすさ、演奏効果の両方を合わせて考えると、一般のピアノ愛好家にはワルツがおすすめです。動きもほどほどにあり曲想も親しみやすく、練習の効果を得やすいように思います。
最もシンプルな「ワルツ19番(遺作)」が短くて取り組みやすく、他にも「ワルツ9番」や「ワルツ10番」などが初級者から初中級者がショパンを弾くきっかけになりやすい作品でしょう。
その次くらいの難易度として、「ワルツ3番」や「ワルツ6番小犬」あたりが弾きやすいと思います。ここまで弾ければあとはどんどん挑戦していけそうですが、テンポには少し注意が必要です。どのワルツも比較的弾きやすいとは思いますが、プロのピアニストのようなテンポを目指して滑ったように弾いていては、ワルツ本来の良さを発揮できません。自分で確実に弾けるテンポで表現することが大切です。
ワルツのリズムも最初のうちは正確に。プロの演奏を参考に躍動感をいろいろと試してみるのもいいでしょう。

ノクターンは譜読みに時間がかかる人もいますが、どの曲も基本的にはゆったりとしたテンポでもあり一部の曲を除いてはテクニック的に難しい曲は少ないでしょう。有名な2番から弾いてみて、あとは好みだと思います。
メロディーと伴奏系のバランスでかなり表情も変わるので、いろいろと試してみるといいと思います。どの曲も左手の和声進行の変化を感じ取りながら、右手との融合を楽しんで弾けると良い仕上がりになるでしょう。ノクターン特有の長い連符は正確に弾くことよりも、きれいに収まることを考えた方が楽しんで弾けると思います。

ショパンのエチュードを十分なテクニックで弾くには、本来は少し長い年月をかけてそれなりの勉強をしてから取り組む必要があります。ツェルニーの練習曲集のほか、クラーマー=ビューローの60番、モシュコフスキーの20番とさらに上の難易度の15番、ヘラーの練習曲、モシェレスの24番などを、他にもバッハやロマン派のピアノ曲を良い指導者の下でしっかりと取り組むのが一般的でしょう。
しかし、ピアノ愛好家が楽しむ目的でショパンエチュードに挑戦するのも良いと思います。ゆっくりな曲なら10-6を、エチュードらしく高速系が好みなら25-2などから弾いてみると良いでしょう。
どのエチュードを弾くにもゆっくりと確実に練習することが、最終的に良く弾ける近道です。指使いの確認作業も大切で、もしショパン自身の指使いでどうしても弾きにくい箇所があるなら、楽譜校訂者の指使いなども参考にしてみるといいでしょう。

ショパン独自のピアノ曲ジャンルでもある4つのバラードは、どれも内容的にもテクニック的にも難しい作品でショパンの作曲方法と心が凝縮されたような曲です。ワルツやノクターン、エチュード、マズルカ、プレリュード、ポロネーズなどの他の作品に触れてから弾く方がより理解しやすいように思います。
バラードでは1番が最も有名ですが、ピアニストに弾かれる機会は1番と4番も多いと思います。一般的に取り組みやすいのは2番か3番でしょう。


鑑賞に、参考に聴く

人気のショパンは当然のように多くの録音があり、またピアニストによってかなりの違いがあります。
誰の演奏が良いのかというと、それは最後は好みですから、なんとも言えませんが、数枚の名盤をあげてみると。

ショパン:ノクターン&プレリュード集
ショパン:ノクターン&プレリュード集
模範的な演奏というよりもフランソワ独自のショパンの世界。既に亡くなってから30年以上が経ちますが、一般にも専門家にも多くのファンがいるピアニストでしょう。
フランソワの演奏は絶妙なタイミングや息遣いの丁寧な表現と、ところどころの危うさがショパンのピアノ音楽の素晴らしさを伝えてくれます。ピアノ学習者のお手本に聴くというよりも、フランソワを聴きたいという人に向いているといった演奏でしょうか。
ショパン:ワルツ全集
ショパン:ワルツ全集
このアラウのワルツは全曲を通してゆったりとしたテンポで、味わい深い演奏です。
もっとリズム感が軽快で、スピード感あふれるワルツの演奏が一般的には好まれると思いますが、こういったじっくりと弾かれたショパンのワルツも良いでしょう。また、学習者にはこのゆったりとしたテンポは目標にしやすく、表現の深さも学ぶことがあるかと思います。
ショパン:12の練習曲
ショパン:12の練習曲
ポリーニはエチュードで完成度の高い演奏を披露しています。
一般的に難所と思われる箇所も、素晴らしいテクニックで迫力がある余裕の演奏です。もちろん細部のバランスにも配慮が十分にされていて、聴きごたえがあります。
ショパンなのでエチュードにも少しロマンチックな香りが欲しいという人には少しイメージが違うようにも聴こえるかもしれませんが、エチュード学習者にはひとつの目標にもなってきた演奏でしょう。
ショパン:バラード集&スケルツォ集
ショパン:バラード集&スケルツォ集
バラードやスケルツォの録音はこれまでにも多くの名ピアニストが素晴らしい演奏を残しているので1枚を選ぶことは非常に困難ですが、その中でも録音がそれほど古くなく現代のショパン演奏らしいものを選ぶとなると、このシプリアン・カツァリスの名盤が挙げられるでしょう。
余裕のあるテクニックで閃きを感じさせるように弾かれるショパンは、バラードやスケルツォに取り組まれる方々にぜひ聴いていただきたい演奏です。

ショパンに対する素朴な疑問

よく言われていることに関して、ちょっと考えてみましょう。

繊細なピアノの詩人なの?

ショパンの顔2

日本では絶大な人気を誇るショパンのピアノ音楽。繊細さ、優雅さと情熱も併せ持った数々のピアノ曲は、多くのピアノ愛好者のあこがれのようです。ショパン独特にピアニズムから生まれた作品達は、現在でも非常に高く評価されていて、ピアノ音楽の歴史で最も重要な作曲家のひとりといえます。

しかし、もう少し広い音楽という意味から考えた場合に、ショパンに対する専門家の評価は、必ずしも高いものではありません。生涯の作曲活動がほとんどピアノ曲に限定されているというのが、特徴でもあり弱い点だとも考えられているからでしょうか。
実際にショパンを弾かないピアニストもいます。音楽の評価としてもショパンのピアノの世界をどのように考えるかによって、評価が少し違ってくるものなのかもしれません。

また、日本ではショパンというと、「繊細な」とか「優美な」、他にも「少しなよなよしている」など、繊細で弱々しくて青白い顔というイメージを持っている方も多いようです。これらは昔のショパン映画や伝記物の影響のほか、ショパン自身が華奢な体格(現代の人間から見ると)をしていたところから、そういったイメージが特に日本では定着しているのでしょうか。

ところが、ショパンの祖国ポーランドではもちろんのこと、他の国々でもショパンの音楽は「繊細ながらもしっかりとしている」、「英雄ポロネーズに代表されるように、ショパンは雄大な作曲家である」とか「深い呼吸で歌うオペラ歌手のような演奏が好ましい」などの言われ方もあります。ポーランドから当時の音楽の都であるパリへ行き華々しく活躍したショパンは、そんなにやわな優男でもなかったという考え方もあるようですし、エチュードやスケルツォやバラードなどの難しい作品の数々を弾いてみると、そうしたことも納得できるような気がします。

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