ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜教則本考察 ブルクミュラー18の練習曲

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ブルクミュラー 12の練習曲: New Edition 解説付 (標準版ピアノ楽譜)
ブルクミュラー 12の練習曲: New Edition 解説付 (標準版ピアノ楽譜)

中級手前くらいまでの練習曲集である「ブルクミュラー18の練習曲(Op.109)」についてみていきましょう。

ブルクミュラーと言うと、やはりブルクミュラー25の練習曲が定番としてよく使われていて、日本では単にブルクミュラーというと「25練習曲」のことをさす場合も多いのですが、その25の練習曲よりも幾分難易度が上にあたるのが、今回ご紹介する「18の練習曲」です。


ブルクミュラー18の練習曲の内容

概要

前述のように、有名なブルクミュラー25練習曲よりも幾分難易度としては上なので、中級手前から中級程度の方が使用できる練習曲集(エチュード)となっています。
エチュードと言ってもスケールとアルペジオ練習を徹底して曲数を弾くようなタイプではなく、実際の演奏上のテクニックで表現するような曲集と言っていいでしょう。

25練習曲よりも曲想ももう幾分ロマン的になっており、1オクターブも頻繁に登場もして(25練習曲には1オクターブの和音は無い)、素早い音階やアルペジオも登場するなど、少し本格的なロマン派の曲を弾く準備段階のエチュードとして位置づけられると思います。

曲の長さと特徴

中級手前程度の練習曲集という性格なので、曲の全てが2ページと短めになっています。18曲という曲数も、全てを弾き終えることが現実的に可能な曲数なので使いやすいでしょう。
ここで、ピアノの上達に効果的な曲を、いくつか個別に見て行きましょう。

1. 打ち明け話
3連符の流れの中で4分音符のメロディーを聴かすといった、よくあるパターンの曲です。分散和音(アルペジオ)の練習になっていますので、指使いはしっかり守ってスムーズな流れで弾きましょう。
2. 真珠
曲全体が、ほとんど音階(スケール)の上昇系と下降系から成り立っている単純な曲ですが、音階もレジェーロの軽いタッチ感とペダルを使って弾くと真珠のような輝きのある音楽になる良い例です。それほど素早いスピードで弾く必要は無く、安定した動きとレジャーロの軽めのタッチ感を目指しましょう。
3. 羊飼いの家路
この18の練習曲集の中では比較的簡単な曲ですが、右手スタッカートと左手の跳躍という種類の異なる動きをしっかり弾くことが課題です。右手の3度もきれいに弾きましょう。
4. ジプシーたち(ボヘミアン)
楽譜を見ただけで、明らかにシューマンを意識しているのがわかるような曲で、フレーズ感とデュナーミクが非常に大切です。オクターブの和音が連続する時に腕が硬くならないように弾きましょう。上手に弾けると演奏効果も抜群です。
5. 泉
32分音符のアルペジオの中で、8分音符のメロディーを美しく弾きましょう。PP(ピアニシモ)で弾くのは大変難しいですが、響きとメロディーの流れをよく聴きましょう。きれいに弾くことができると泉が湧き出てくるような音楽になります。
6. おてんば
右手のテクニック的な動きの練習ですが、これがそのままメロディーのラインになっているのが特徴です。意外と弾きにくいので何度も練習する必要がありますが、手に余計な力が入って硬くならないように。
7. ベルスース(子守歌)
メロディーラインの流れとアルペジオの流れの両方を意識して弾く必要がある曲です。楽譜の見た目はシンプルですが、それほど簡単ではありません。最初はゆっくりと確実に弾いて、動きに慣れるようにしましょう。
8. アジタート
文字通りに激しさを表現する曲です。16分音符の繰り返される動きはロマン派のピアノ曲にもよく登場するような形ですので、よく練習して習得しましょう。ある程度のスピード感で弾かないと、曲の表現ができませんが、弾いていて崩れてしまうようなテンポではなく、しっかりと弾けるテンポで弾きましょう。
10. すばやい指さばき
この練習曲集の中では最もエチュード的に指を高速で動かして弾くタイプの曲です。それほど難しい動きは入っていないので、テンポを上げることは比較的容易ですが、指のスムーズな動きを意識して弾きましょう。
11. セレナード
メンデルスゾーンの無言歌集「春の歌」を意識したかのような装飾音符が豊富な曲です。メロディーの音とそうではない音の区別をしっかりすることと、装飾音符が入るたびにリズムが崩れないことが大事です。
13.嵐(雷雨)
題名の「嵐」のとおり、ピアニシモからフォルティシモまでのデュナーミクの幅が広い曲です。右手の動きは手首などに余計な力が入らないように弾きます。この曲もテンポアップが必須ですが、筋肉を硬くしないようにゆったりとしたテンポで慣れてから速度を上げていきましょう。
14.ゴンドリエの歌
この題名にすぐに思い浮かぶのは、メンデルスゾーン「無言歌集」の「ベニスの舟歌」ですが、ブルクミュラーのこの作品も8分の6拍子などの共通点はありますが、メロディーは哀愁のあるような感じではなく、幾分明るめの曲調です。細かいクレッシェンドやディミヌエンドをしっかりと意識して、あとは流れに乗って弾けることが肝心です。26小節からが何と言っても聴かせどころでしょう。
16.別れ
「別れ」というのはクラシック音楽では定番のテーマですが、この曲は別れの切なさや寂しさを暗い旋律で表したような曲調というよりも、何か過去を思い出すようなそんな雰囲気なのかもしれません。テクニック的には和音の練習に適した曲で、左手のオクターブを弾く練習にもなるので、丁寧に弾いてから少し激しさを内在したように弾いてみましょう。
17.マーチ
マーチは行進曲で、行進のためにブラスバンドなどが演奏する華やかな曲ですが、ピアノ曲やオーケストラのための行進曲もあります。この曲も華やかな雰囲気ですが、ピアノ曲ですから多少の揺れがあっても良さそうです。25小節目からは行進曲によくあるトリオTrioを呼ばれる穏やかな雰囲気の箇所ですから、そうした曲調を感じて弾きましょう。
18.紡ぎ歌
この「紡ぎ歌」もクラシック音楽に定番ともいえる題材で、ピアノ学習者にはエルメンライヒ作曲の紡ぎ歌が有名だと思いますが、糸を紡ぐ糸車の回転を思わせるような細かい音符の動きが連続する曲です。両手で譜読みをした後は、右手の動きをゆっくりと確認しながら練習してみましょう。軽やかさも大事です。

特徴と有効性

ブルクミュラー18の練習曲は、ショパンやシューマンなどのロマン派の小品を弾く前段階の練習曲集として有効です。以下に特徴と有効性をあげてみましょう。

譜読みがしやすく、1曲が短い
同じブルクミュラーの25練習曲と比較すると内容的に少し上の程度ですが、譜読みは比較的やりやすい曲が多く、またどの曲も2ページなので他の曲などを複数弾いている場合にも負担になりにくいでしょう。
定番の題材と曲想
「ジプシー」 「子守歌」 「アジタート」 「セレナード」 「森」 「嵐」 「別れ」 「紡ぎ歌」など、クラシック音楽には定番とも言える題材を学べるので、本格的なピアノ曲を弾く前の準備段階として適している曲集となっています。特にシューマンを弾けるようになることを意識している曲が多いように思われ、中にはメンデルスゾーンらしい曲もあるなど、当時の大家のピアノ曲を取り組む前段階のエチュードということを特に意識したつくりになっているので、学習者もそのあたりを十分に意識して勉強すると非常に効果的です。
幅広いテクニック
単に指を動かすというだけではなく、旋律の歌い方や和音の連続、スケール(音階)、装飾音符など、幅広いテクニックを学ぶことができ、それらを曲のテーマや雰囲気に合わせてどのように弾くのかを、考えながら弾く良い勉強になります。
ペダル
ロマン派のピアノ作品に必要な実践的なペダルを学ぶにも適しています。

このようなところが、ブルクミュラー18の練習曲の特徴でしょうか。単に指を高速で動かすために曲を弾くだけの内容ではなく、総合的にレヴェルアップしていくような内容になっていると言えるでしょう。


少し気をつけたい点

上記のような特徴を持ったブルクミュラー18の練習曲ですが、少し気をつけながら使うことも必要です。以下にポイントをあげてみましょう。

調が少ない
これは25練習曲でも言える事ですが、この18の練習曲もシャープやフラットが多い調が避けられています。既に中級の域に入っている練習曲集としては、少し物足りない印象です。
1曲の密度が薄め
全曲が2ページの曲ということと関係もしていますが、1曲の内容の濃さが少し薄いという点は否めません。弾きやすいエチュードというブルクミュラーの特徴とも言えますが、やはり大作曲家の同じくらいの難易度の作品と比較してしまうと物足りなさはあるでしょう。
左手の活躍が少なめ
左手はオクターブやアルペジオの動きなど、中級以上の曲への準備段階としては適度に使われていますが、エチュード(練習曲)集ということを考えるともう少し左手が活躍する箇所が欲しいように思います。

こんなところに気をつけてみるとよいでしょうか。


効果的に使用するには

ピアノのレッスン現場では、この練習曲集をどのように使っていくと効果的でしょうか。
内容的には既に述べているように、ブルクミュラー25の練習曲よりも一段階上くらいと考えておけばいいので、25番練習曲を継続的に弾いて終えた方が、次の練習曲集としてそのまま18番の入っていくこともできます。1曲1曲をしっかりと取り組んでも18曲ですから、それほど長期間にならずに弾き終えることができるでしょう。

実際にはブルクミュラー25練習曲集を使っていて修了しても、続きはそのままこの18練習曲に素直に進む方は多くはないかもしれません。
指導者側としてもブルクミュラー25の終盤の曲を弾く頃の生徒を指導していると、例えば「やはり、(指廻りという意味での)テクニックをもっと向上させてあげたい」と思うようになり、そうなるとどうしてもこの先がピアノの練習ラジリテなどの純粋テクニック系エチュードに進ませたくなるものです。

しかし、この18練習曲は多彩な内容を含んでいるので、他のテクニック的な練習曲集を既に継続使用している方や、他の大きな曲に取り組んでいる方の場合でも、この18番練習曲からいつくかの曲を抜粋で弾くのも方法の一つです。
特にロマン派の大作曲家の作品への準備のためにも、「3.羊飼いの家路」や「4.ジプシーたち」、「7.ベルスース」、「13.嵐」、「14.ゴンドリエの歌」といった曲を弾いておくことは、大変勉強になるでしょう。

中級、中上級の方には、初見練習としても有効です。2ページの曲ですから、1分〜数分ほど楽譜を良く見てから初見で弾いてみましょう。また、演奏の基本を見直してみたいという中上級者もこの曲集からいくつかを弾いてみるのもいいでしょう。

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