ピアノレッスンのヒント集

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楽曲と教材〜教則本考察 キャサリン・ロリンピアノの叙情詩

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キャサリンロリン ピアノの叙情詩
キャサリンロリン ピアノの叙情詩

美しく親しみやすいメロディーのピアノ曲を多く書いているアメリカのキャサリン・ロリンは、特に大人の初級者〜中級者に人気の作曲家です。

キャサリン・ロリンは初級者や子供向けにも多くの曲集を出版していますが、ここでは子供向けというよりは、むしろ大人が楽しめる曲集の「ピアノの叙情詩(リリック・モーメント)」を取り上げてみます。
尚、ロリンはこちらで紹介している、ギロックとも親交の深い作曲家です。


ピアノの叙情詩(リリック・モーメント)の内容

概要

沢山の作品があるキャサリン・ロリンの中でも、とても親しまれている曲集です。
各曲の豊かな曲想と題名から、いろいろな情景が想像できると思います。

難易度的には初級から初中級のピアノ曲集で、ブルクミュラー25の練習曲くらいと同程度になると思いますが、使われている音域が広くペダルの使い方も要求されるので、小学生の高学年から大人向けといった印象でしょう。特に大人の女性に人気がありますが、もちろん男性にも多くのファンがいます。

曲の長さと特徴

各曲は1ページから4ページで、どれもそれほど長くはありません。2ページか3ページの曲が中心ですが、音符が大きめに印刷されているので、一般の楽譜の同ページ数の曲よりも少し短く感じます。
調号はフラットやシャープが少ない2個までの曲がほとんどで、どの曲も8分音符よりも細かい音符(16分音符など)が少なめなので、楽譜は見た目にすっきりとしていて譜読みがしやすいでしょうか。

各曲を見ていきましょう

全16曲の中から、比較的親しみやすく上達にも効果的で弾き応えのある曲をいくつか見ていきましょう。

心のスペシャル・プレイス
右手の上声部のメロディーを歌うように弾くだけでもそれなりに良く聴こえますが、4声になっていることを意識すると、バランスが大変よく演奏できるでしょう。ペダルの踏み替えもポイントです。この曲集の第1曲ですが少し難しい曲かもしれません。
スウィート・メモリーズ
ロリンらしい甘いメロディーが優しく流れる曲です。右手メロディーは特に4分音符をたっぷり弾くと表情が出やすいでしょう。左手は似たような伴奏形が続くで弾きやすいと思いますが、拍感は常に大事に意識しましょう。
サマーの夢
左手のアルペジオが、常に流れよく演奏したい曲です。右手はたっぷりと呼吸をするかのように歌ってみましょう。
やさしさにつつまれて
この曲集の中では珍しくフラットが5個ですが、手に馴染みが良いので弾きやすい曲でしょう。左手が右手の上を越える冒頭は、鍵盤を探して止まったりしないように気をつけたいところ。9小節目からは気分よく歌うように弾きましょう。
あなたへの歌
少し動きがある印象の曲です。右手で繰り返される音型を、どのように演奏するのか考えてみるといいでしょう。左手のアルペジオは余裕を持って弾けるように。
サマーのノクターン
音階的な要素や16分音符があるので、楽譜の見た目は少し難しそうに見えますが、そんなことはありません。それよりも気をつけたいのは、頻繁な強弱の変化です。単に弱く、強くということではなく、音楽を感じた上での表現にしたいものです。
子もり歌と夢の国
曲名のように、やさしさと、どこか上昇気分にような空気を含んでいる曲です。技術的には難しくないので、和声の変化を感じ取りながら気持ちよく弾いてみましょう。
サマーを思う
この曲集の中では左手に少し大きめの動きがあり練習にもなる曲です。スムーズに弾くことができなければ曲想を十分に表現することはできませんので、ゆっくりと確認しながら弾いてみましょう。cresc.e poco accelがあるところをうまく弾けると表情が非常に豊かになります。
ときめき
各声部に気を遣って弾くことが大切であり、特に20小節目からは初級者くらいの方には少し難しく感じるかもしれませんが、この曲集には珍しくペダルを控えめにする箇所ですから、うまく弾けるように練習してみましょう。
ほんとうの喜び
音階的な動きとアルペジオからなり大変弾きやすい曲ですが、それ以上に大きさを感じる曲想を持っています。手が小さめの方は特に手首は硬くならないように、常に柔軟に使いましょう。演奏効果にある作品ですから、自在に弾けるくらいに練習して人前で発表するにもいいでしょう。
愛のテーマ
この曲集では最も弾きやすい曲の一つです。誰にでも親しみやすいメロディーと流れのある伴奏系なので演奏効果もある作品でしょう。rit. と a tempo の間をうまくつかうと、流れが非常に良く聴こえますので、好みのスタイルを見つけて弾いてください。
悲歌
8分の6拍子の拍感を生かして演奏したい曲です。右手メロディーは常に歌ですから、長い音符でも歌を感じて弾きましょう。左手で音域が広くなるときに、音が不意に大きくなってしまわないように。
大草原のような愛
各声部の横の流れを大切に弾きたい曲です。特に右手は常に2声になっていることを意識して弾けるように、各声部を単独で弾いて確認してみるといいでしょう。このピアノの叙情詩の中では、少し難易度が高めの曲でしょうか。
すてきな気もち
同じようなフレーズが並びますが、弱めのところと少し盛り上げる気持ちのところを、うまく表現してみましょう。シンプルな曲なのですが、ペダルの入れ方には配慮が必要です。
初めての悲しみ
左手は常に4分音符の和音の曲ですが、冒頭の指示に「動きを持って」とあるように少しテンポ変化を入れる感じで演奏すると効果があります。もちろん右手メロディーを際立たせて弾きますが、左手の和音との総合的なバランスを耳でよく確認しながら弾きましょう。

特徴と有効性

初級くらいで弾ける曲集でありながら、広い音域とペダルを効果的に使う曲が多く、演奏効果が高い作品集です。それぞれに題名がついていますが、奏者各自がイメージを膨らませて演奏することによって、ピアノ世界が広がるでしょう。

キャサリン・ロリンのこの曲集は教則本や練習曲集ではないので、有効性や不満点を述べるのは少し違うようにも思いますが、特に大人のピアノ愛好家のために、以下にポイントを簡単に書いておきましょう。

譜読みがしやすい
本来はフラットやシャープが多くなっても譜読みが難しくなるわけではないのですが、ピアノ初級者の方や大人から始めた方などは、やはりフラットやシャープが少ない方が譜読みは楽に感じるしょう。
そういった意味では、このキャサリン・ロリンのピアノの叙情詩は譜読みがしやすく、とても入りやすい曲集です。
親しみやすい曲想
どの曲も表情豊かに歌うロマンティックなメロディーを持っていて、最初に弾いた時から親しみやすさを感じると思います。そして、ある程度広い音域と適度な和声変化もあるので、子ども向けの作品のような感じがしなく、大人の方がピアノの発表会などの人前で弾くこともできる曲集です。
指使い
指使いの指示が多くありますが、左手のアルペジオなどは弾きやすい実用的な指番号が採用されています。右手もメロディーのラインを生かすような指使いですから、最初はこのとおり弾いてみましょう。慣れたら考えた指使いを適度に使用してもいいでしょう。
ペダル
ペダルは、どの曲も基本的にはたっぷりと使うことが多いでしょう。ただし常に耳でよく聴き、豊かなメロディーと響きを濁らせないように気をつけたいものです。慣れてきたら、ペダルの踏み加減もいろいろと試してみましょう。また場合によっては指定よりも細かく踏みかえるなど工夫をしてみるのもいいでしょう。
技術
難しいテクニックを要求されるような箇所は少ないのですが、左手のアルペジオを流れよく弾くことは、どの曲でもポイントになりますから手首を柔軟に、肩にも力を入れないようにしましょう。また、右手メロディーを歌うときに、どのようにタッチの加減が必要なのか、鍵盤と音の感覚をよく把握しながら弾きたいものです。

このようなところが、キャサリン・ロリン「ピアノの叙情詩」の特徴でしょうか。どの曲も親しみやすくて、弾いているうちに無理なく流れのある表現力と技術が身につきます。


演奏で気をつけたい点

キャサリン・ロリンのこの曲集は練習曲ではありませんが、取り組む上での注意事項を少しあげてみましょう。

上記のような特徴を持ったピアノの叙情詩は、ピアノ音楽として楽しんで弾けて、表現力の豊かさが身につきますが、気をつけたいいくつかの点があります。

ただ弾くだけでは
流れるようなメロディーの曲が多いので、ただ弾くだけでもそれなりに聴こえて楽しめてしまいますが、それだけではもったいないですから、1曲としっかり向き合ってみることが大切です。表現を充実させるためには左手の拍子感を大事にそして右手メロディーを歌う意識をしっかり持って弾きましょう。
テンポ設定
どの曲にも、メトロノームのような決められたテンポの指示はありませんから、テンポ設定は演奏者自身が決めることになりますが、発売されている演奏CDのテンポが正しい速さであるなどと思わずに、曲想から判断して自由に弾いてみましょう。いろいろな速さで試して演奏してみると、自分の適正テンポが見えてくると思います。
rit. と a tempo
多くの曲で、rit. と a tempo がの表示が、かなり頻繁に出てきます。これを、どのくらい遅くするのかも、演奏のポイントになります。rit. をそれほど遅くしないで、曲全体をすっきりまとめるのか、それとも思いっきり遅くするのか、これも演奏者の判断です。a tempo も、すぐにテンポに戻す他に、少しの時間をかけてテンポに持っていく方法もあります。
指使いとペダルは指示どおりが基本
これは練習曲集ではありませんが、指使いとペダルの指示は基本的には守って弾きましょう。ただし、手の大きさや感覚的に違和感を感じる場合などは指使いに工夫をしても良いですし、ペダルの入れ方にも演奏者自身の加減があってもいいでしょう。

こんなところに気をつけてみるとよいでしょうか。難しいことを考えなくても、曲集ですからまずは演奏者自身が楽しんで弾くことができればいいでしょう。


効果的に使用するには

この曲集を最初から順番に弾いていくよりは、弾けそうな曲、感じの合いそうな曲を選択して弾くのがお薦めです。
上にあげた曲の中では、2ページで取り組みやすい「愛のテーマ」からを、まず弾いてみるのがいいでしょうか。それから「ほんとうの喜び」なども弾きやすく、他は少しだけ難易度が上がるかもしれませんが、どれも同じくらいの初級から初中級の曲たちです。

弾きやすい曲は仕上がりが速いかもしれませんが、少し弾いて次の曲へ移行するよりは、レパートリーとして発表会などの人前で余裕で弾けるくらいにじっくりと練習してみましょう。ロリンの豊かなピアノの世界を、ぜひ楽しんでみてください。

同程度でこの曲集とは異なるタイプの教則本や曲を弾いている方も、この曲集から数曲を弾くことで叙情的な感覚のさらなる養成に役立つと思いますので、ピアノの指導者も生徒へ適度に使ってみてはいかがでしょうか。

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