ピアノレッスンのヒント集

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豆知識-Bach バッハ

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ピアノ関係の作曲家の「ピアノ豆知識」。

今回はバッハを大幅に改訂して(2012年4月)、「インヴェンションとシンフォニア」の全曲に簡易解説をつけました。

もっとも偉大な作曲家として、バッハをあげる人も多いでしょう。そして「難しい音楽」というイメージを持っている人もいると思います。
バッハについての生涯や作品などの詳しい話については、専門家の方にお任せするとして、ここでは一般のピアノ愛好者やピアノ学習者が弾く機会の多い作品について考えてみます。(インヴェンションとシンフォニア全30曲について簡単に解説しています)。

バッハの楽譜選び方については、バッハの版選びで解説していますので、あわせてご覧ください。


バッハ Johann Sebastian Bach

略歴

1685年3月21日アイゼナッハ生まれ〜1750年7月28日ライプティッヒで没。父や兄達も音楽に携わっていた「音楽一家」。この時代にしては長生きしたといえそうです。
同年生まれの大作曲家に、ヘンデルやスカルラッティがいます。

史上最高の大作曲家なの?

バッハの顔

現代の作曲家や演奏家、音楽史の専門家などに、「もっとも偉大な作曲家を一人だけあげなさい」という質問をすると、モーツァアルトやベートーベンよりも、バッハの名前をあげる人は多いでしょう。
それほどバッハの音楽は現代でも非常に重要視されている作曲家で、音楽史などの研究家や作曲家にも、モーツァルトやベートーベンよりも、研究されているかもしれません。
古典以前のバロック期作曲家(バッハの音楽を「バロック」を呼ぶことには異論もあるとは思いますが)は、バッハの他にも多くの人がいたにもかかわらず、今日ではその多くが忘れられている現状では、バッハの存在感は他を圧倒しています。バッハの息子達も作曲であったため、現在では「大バッハ」という言い方をして、区別することもあります。

音楽的には、その作曲技法は非常に高度で他の追随を許さず、特にフーガの作曲では右に出るものはいないと言われています。その後に表れたベートーベンやショパン、シューマン、そして近現代の作曲家など多くの音楽家に多大な影響を与えた作品という意味でも、やはりクラシック音楽では最高峰に位置する作曲家でしょう。

作品について

バッハはかなりの数の作品を残しています。その分野も多彩でオペラ以外のほとんどの分野の音楽を残しているようです。

鍵盤作品では、やはり2冊の「平均律クラヴィーア曲集」が金字塔でしょう。他にも「ゴールドベルク変奏曲」や「半音階的幻想曲とフーガ」などが、ピアニストにも演奏される機会が多い人気曲です。小品のメヌエットなども学習者に簡単な曲として親しまれています。
ピアノ学習者には30曲からなる「インベンションとシンフォニア」がお馴染みで、2声と3声からなるこの曲集をしっかりと仕上げてから、バッハの他の鍵盤作品を取り組むのが一般的でしょう。


ピアノで曲を弾いてみよう

バッハの鍵盤作品はかなりの数がありますが、難易度もさまざまです。かっこいい平均律のプレリュードやフーガを弾きたい人も多いかもしれませんが、やはり少し簡単なものから挑戦していきましょう。
そこで、趣味のピアノ愛好者でもある程度のピアノ経験がある方用に、「インベンションとシンフォニア」を中心に難易度をつけて曲の紹介をしてみましょう。
難易度は「インベンション 1番」が★★だとして、★1個から7個でつけていますが、あくまで目安です。

アンナマグダレーナバッハのクラヴィーア小曲集

ウィーン原典版(150) アンナマグダレーナバッハのクラヴィーア小曲集 (ウィーン原典版 (150))
ウィーン原典版(150) アンナマグダレーナバッハのクラヴィーア小曲集 (ウィーン原典版 (150))

バッハが2番目の妻、ソプラノ歌手のアンナ・マグダレーナのクラヴィーア(この時代の鍵盤楽器の総称)の練習のために作曲された曲集です。バッハを中心として、その子供や他の作曲家の作品も収録されている「バッハ編纂の曲集」のような感じで、よく弾かれているメヌエットBWV.Anh.114は現在でペツォルト(Christian Petzold)の作曲であると言われいます。
簡単に弾けるものから、インヴェンションと同程度のものまであり、バッハのような多声音楽の入門として最適です。曲想も親しみやすい作品が多く、子供も大人も楽しめます。
「BWV」は、シュミーダーによるバッハ作品の整理番号で、後につく「Anh」は追加番号を表しています。

メヌエット ヘ長調 BWV.Anh.113(作曲者不詳)
弾きやすいメヌエットです。
後半は前半よりもポリフォニー的になっているので両方のメロディーをよく聴いて弾くようにしましょう。 ★(1.2くらい)
メヌエット ト長調 BWV.Anh.114(ペツォルト作)
おそらく一度は聴いたことがある方も多い、おなじみのメロディーです。
初級教則本を弾いている段階でも弾ける曲ですが、実は25小節目からの部分的に3声になっているところがポイントです。 ★(1.2くらい)
メヌエット ト短調 BWV.Anh.115(ペツォルト作)
こちらも入っていきやすいメロディーの短調のメヌエットです。
シンプルなつくりの曲ですので、横のラインがスムーズに聴こえるように弾きましょう。 ★(1.2くらい)
メヌエット ト長調 BWV.Anh.116(作曲者不詳)
上の2つのメヌエットよりも、少し動きが多いメヌエットです。
特に左手に多声音楽らしい動きがたくさん出てきて、左右の掛け合いを素直を感じることができるでしょう。初級の方の練習に最適な、元気良く弾ける1曲です。 ★★(1.5くらい)
ポロネーズ ト短調 BWV.Anh.119(作曲者不詳)
短い曲ですが多声(ポリフォニー)的です。
右手が主役のメロディーラインですが左手の動きも横の流れを意識して弾きましょう。 ★★(1.5)
メヌエット イ短調 BWV.Anh.120(作曲者不詳)
少し難易度を感じる人もいるメヌエットです。
小節線を越えるタイの旋律で成り立っていて、左右の手の独立している感じでなので、インヴェンションなどの雰囲気に近い印象を持つ人もいるでしょう。後半の付点4分音符のトリルは、1拍に6連符くらいで入れると弾きやすいでしょう。 ★★(1.6くらい)
マーチ ニ長調 BWV.Anh.122(カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ)
明るい雰囲気をもつ曲です。
シンプルではありますが左右の動きの質の違いを把握して、右が動いていない時に左が動いているところなどを上手に活かして弾きましょう。 ★★(1.5)
ポロネーズ ト短調 BWV.Anh.125(カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ)
この曲集の曲の中では難しい部類に入ります。
それまでのシンプルな2声の曲などと違い、細かい音符や部分的に3声になっているなどのポリフォニー的な要素も多く難易度は高めですが、演奏効果も高い作品なので発表会などにもいいでしょう。 ★★(1.8)
ミュゼット ニ長調 BWV.Anh.126(作曲者不詳)
活発な感じの小曲です。
左手がほぼ一定のリズムなので崩れないように弾き、右手のメロディーラインで上手に音楽を表現しましょう。 ★★(1.5)
メヌエット ニ短調 BWV.Anh.132(作曲者不詳)
雰囲気のあるメヌエットです。
短くて音符も少ないのですが、手の移動幅がある曲なので、最初は弾きにくいと思う人もいるかもしれません。ゆっくり弾くことから始めると難しくないのでうまく対応してみましょう。 ★(1.3くらい)

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小プレリュードと小フーガ

J.S.バッハ小プレリュードと小フーガ  全音ピアノライブラリー
J.S.バッハ小プレリュードと小フーガ 全音ピアノライブラリー

バッハの小さなプレリュードとフーガといった小作品がたくさん収録されているこの1冊は、難易度としてはインヴェンションの手前くらいからシンフォニアくらいまでと幅広く、拍子や曲想も様々です。
インヴェンションに入る前や同時進行で、いくつか弾いてみるといいでしょう。

「初心者のための12の小さな前奏曲または練習曲」は、短めで弾きやすい曲から、3声の少し込み入った曲までが揃っています。

小プレリュード ハ長調 BWV.924
1ページの弾きやすいプレリュードです。このように取り組みやすい曲で、装飾音符のタイミングや、指の運び方などをしっかり確認して弾くことができると、バッハが弾きやすい身近な存在になってくるでしょう。
★★(1.5くらい)
小プレリュード ハ長調 BWV.939
レガートでしっかりとたっぷりと弾きます。非常に短い曲なので、納得いく仕上がりになるまで弾いてみましょう。
★(1.3くらい)
小プレリュード 二短調 BWV.940
4声の曲ですが、3声部の箇所も多く短い曲であり、またそれほど複雑ではないので、4声入門にお薦めの曲です。各指がどの声部を担当しているのか、楽譜と耳でよく把握しながら弾いてみましょう。
★★(2.1くらい)
小プレリュード へ長調 BWV.927
活発な動きが続きますが、弾きやすい曲です。リズムを大切に楽しく弾きましょう。
★★(1.5くらい)

「初心者のための6つの小さな前奏曲」は、どの曲もインヴェンションと同等かそれ以上の難易度の曲で、少し本格的なバッハだと感じる曲も多いでしょう。

小プレリュード ニ短調 BWV.935
バッハの雰囲気がたっぷりの短調の曲です。この曲くらいがスムーズに弾けるようになってくると、インヴェンションも良い感じで弾けると思います。
★★(1.5くらい)
小プレリュード ニ長調 BWV.936
基本的には3声の曲ですが、実質2声部の箇所も多いので弾きやすく、3声入門にも適した1曲です。2分音符の音を保持する時に、必要以上に力が入らないように注意してみるといいでしょう。
★★(2.1くらい)
小プレリュード ホ短調 BWV.938
左手の動きも適度にある曲で、メロディーのラインをきれいに弾いてみましょう。装飾音符のタイミングにも気を配りたい曲です。
★★(1.6くらい)

小さなフーガは、フーガの入門に弾きやすい曲です。3声の曲もあるので、シンフォニアを弾く前に挑戦してみるといいでしょう。

小フーガ ハ短調 BWV.961
この流れるような2声フーガをきれいに仕上げることは、とても良い練習になるでしょう。譜も読みやすいので、はじめてのフーガにもぴったりの1曲です。
★★(1.6くらい)
小フーガ ハ長調 BWV.952
この3声フーガくらいになると、やはり2声フーガよりも難易度が上がった印象を受けるでしょう。慣れるまでは左右の手で別々に練習してしっかりと声部を確認します。声部が複雑に絡み合っているわけではないので、3声入門にも最適です。
★★(2.4くらい)

インヴェンションとシンフォニア

インヴェンションとシンフォニア ウィーン原典版 42
インヴェンションとシンフォニア ウィーン原典版 42

インヴェンション(Inventio)とシンフォニア(Sinfonia)は、バッハを弾くための学習段階として必須の30曲で、1曲にたくさんの要素が入っています。多声音楽(ポリフォニー)の基本を身に付けるのに重要ですから、2声のインヴェンションからしっかりと弾きたいものです。中から弾きやすく親しみやすい数曲を見ていきましょう。(以下は「BWV」の作品番号は無くてもわかりやすいので省略しています)
2声のインヴェンションの全15曲は、どの曲もそれほど難易度は変わりませんが、参考までに★などで示しています。楽譜については、バッハの版選びで解説していますので、あわせてご覧ください。

インヴェンション 1番 ハ長調
はじめてのバッハが、この曲だという人もいると思います。装飾音符の入れ方や、掛け合い、流れのつかみ方など、バッハを弾くためのいろいろな要素が、たくさん学べる曲です。
意外にも簡単ではないので、中間部で乱れてしまわないように、テンポを守って弾きましょう。 ★★(2.1)
インヴェンション 2番 ハ短調
この曲集30曲の中で、唯一つのオクターブ違いで追いかける形式のカノンです。手に馴染み易い曲なので弾きやすいと思いますが、装飾音符が入れにくい箇所は注意。
左手の練習にも効果的です。 ★★(2.2くらいだが、本当にきれいに弾こうと思うと2.5くらい)
インヴェンション 3番 ニ長調
シンプルで簡素な曲なので、学習者でも初めの頃に弾く方も多いでしょう。
大きな抑揚のある曲ではありませんせが、あまりに平坦になり過ぎないように出していく音とそうでない音の弾き分けに注意しましょう。 ★★(1.7)
インヴェンション 4番 ニ短調
2声のインヴェンションでは最も簡単だと言われるのが4番なので、これから始める人も多いと思います。
特に困難な箇所もありませんが、トリルの箇所は速くなることなく入れていきましょう。 ★★(1.7)
インヴェンション 5番 変ホ長調
特別に難しい動きがあるわけでもないのに、意外に苦戦する方が多いのがこの5番かもしれません。
16分音符の連続した動きは左右の両方に出てくるので、この流れをしっかりつかんで弾くように心がけましょう。テーマと16分音符の対比を効果的に聴かせるとよくまとまると思います。また、装飾音符が入る時に入っていない方の声部のリズムが崩れないように。 ★★(2.2)
インヴェンション 6番 ホ長調
他の2声の曲とは少し異なる印象を持つ曲で、リピート記号もあるのが特徴です。
リズム良く弾きたい曲ですが、あまりテンポを速くすると細かい音符の入れ方が思うようにいかない場合もあるので気をつけてみましょう。 ★★(2.1)
インヴェンション 7番 ホ短調
2声インヴェンションの中では、最も高貴な様相がある曲の一つです。
他の曲そうですが、この曲は装飾音符が版によってかなり異なる曲で、入れ方次第で難易度も多少変わるでしょう。バッハの他の大きな曲にも通じるような雰囲気のある曲なので、そうした曲想をよく感じて弾きましょう。 ★★(2.1)
インヴェンション 8番 ヘ長調
活発でトッカータのような曲だと言われる8番は、4番などと共にインベンションを学習する始めのうちに弾くことが多いようです。
仕上げの段階では速めのテンポまでもっていきたいのですが、16分音符を乱れなく演奏できるようにしましょう。 ★★(1.8くらいだが、高速テンポで弾くなら2.5くらい)
インヴェンション 9番 ヘ短調
しっとりとした感じの曲で、多くの人がイメージする「バッハらしさ」が、あるようにも思えます。
タイがついている4分音符が、短くなりすぎないように注意しましょう。 ★★(2.2)
インヴェンション 10番 ト長調
これもトッカータ風の活発な曲ですが、8番とは異なる性格を持っている曲です。
8分音符の流れは弾きやすいのですが、音をはずしやすい箇所もあるので、練習ではレガートで弾いてみるなど、工夫をしてみましょう。 ★★(2.1)
インヴェンション 11番 ト短調
少し悲しみのある雰囲気で流れる曲です。
あまり速く必要はない曲なのですが流れは大切に。8分音符にニュアンスを持って弾き、また4分音符を幾分強調するように弾くと全体のまとまり感が良くなるでしょう。 ★★(2.2)
インヴェンション 12番 イ長調
活発に躍動するので雰囲気はつかみやすい曲です。
テンポは幾分速めに仕上がることがこの12番には合っているように思いますが、少し難しい動きもあるので高速で弾くことは容易ではありません。指使いはよく研究して、確実に鍵盤をとらえることができてから少しずつテンポアップしていきましょう。 ★★(2.2くらいだが活発に高速で弾くなら2.5)
インヴェンション 13番 イ短調
15曲の2声の中でも、曲調の親しみやすさからか人気のある曲です。
分析を細かくしなくても、曲の流れのみで感じをつかみやすいのですが、9小節目の左右の流れの交差など、14小節目からの雰囲気などポイントしっかりと確認しましょう。 ★★(2.3)
インヴェンション 14番 変ロ長調
曲の最初から最後まで、ターンの連続のような曲です。
左右がバラつかずに弾くことができれば、比較的簡単な方に入るように思いますので、挑戦しやすい曲でしょう。 ★★(1.8)
インヴェンション 15番 ロ短調
楽譜は見やすい曲ですが、意外に弾きにくいと感じる人が多い曲です。
特に左手のテーマの装飾音符をきれいに入れるのが簡単ではないので、右手を一緒にゆっくりと確認して弾きましょう。 ★★(2.2)

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後半の15曲はシンフォニアと呼ばれる3声のインヴェンションです。2声と比較すると3本のメロディーを2本の手で弾き分けすることになるので難易度は一気に★1.5くらいプラスと、やはり高くなりますが、学習者や趣味でも中上級以上を目指す方は15曲全てを弾くことをおすすめします。
弾きやすい曲からやっていくといいので、まずは15番を。それから6番、1番をやってみるといいでしょう。

シンフォニア 1番 ハ長調
1番から順番に弾きたいところですが、この1番があまりやさしくはありません。
2分音符を保持しながらの16分音符や、テーマとその他の声部のバランスなど、3声ならではのバッハの弾きかたを体験するには丁度良い曲ではあります。読譜には時間がかからないので挑戦はしやすいでしょう。 ★★★★(3.6)
シンフォニア 2番 ハ短調
少々切ないような曲調の2番は人気のある曲でしょう。
いろんな弾きかたができる曲ですが、まずは読譜のミスなく一定のテンポで弾くことを目指してみましょう。そこからさらに曲の雰囲気を表現できるといいでしょう。(仕上げに少しだけペダルを入れてもいいでしょう。) ★★★★(3.7)
シンフォニア 3番 ニ長調
明るくて軽快な感じの3番は弾きやすさもある曲です。
ただし右手の2声は指使いに工夫する必要性があるので、研究しながら弾いてみましょう。テーマのアーティキュレーションが大事な曲です。 ★★★★(3.5)
シンフォニア 4番 ニ短調
きれいに弾きたい曲です。
声部の弾き分けが少し難しい曲ですので楽譜をしっかり読むことが大事です。特に小節線を越えて伸びている音の音価を正しく弾くように心がけてみましょう(仕上げに少しだけペダルを入れてもいいでしょう。) ★★★★(3.6)
シンフォニア 5番 変ホ長調
装飾音符が非常に多いシンフォニアです。
他の曲とは少し異なる雰囲気と、非常の多い装飾音符なので戸惑いを感じる方もいると思いますが、慣れてしまうとそれほど難しい曲ではありません。ただし装飾音符をどのように弾くのかは、まずは原則どおりに弾くようにして、事前にしっかりと具体的決めたほうが弾きやすいでしょう。(5番は装飾音符に無いバージョンもあり、そちらで弾くとより簡単です) ★★★(3.3)
シンフォニア 6番 ホ長調
15番に続いて学習されることも多いシンフォニア入門とも言える曲です。
細かい音符が少ないので楽譜の見た目はシンプルなので、この曲で3声をしっかりと個別に意識して弾けるように、それぞれの音符の音価(音の長さ)を正しく、声部が混乱して音が途中で無くなったり、または必要以上に弾きつづけてしまって伸びていたりしないように、充分に練習してみましょう。 ★★★(3.2)
シンフォニア 7番 ホ短調
オルガンを思わせるような曲です。
ゆったり気味のテンポで演奏される曲なので指を素早く必要はありませんが、オルガン奏法のような感じでレガートで弾くことを意識すると非常に難しい曲です。どうしても音が途切れがちになってしまいますが、指かえを多用してみるのも1つの方法です。(仕上げに少しだけペダルを入れてもいいでしょう。) ★★★★(3.7)
シンフォニア 8番 ヘ長調
明るくとらえやすい曲想なので早い段階で弾ける曲です。
各声部の流れが比較的わかりやすいのですが、装飾音符を入れるタイミングは注意しましょう。曲調で親しみやすいのも特徴です。 ★★★(3.4)
シンフォニア 9番 ヘ短調
3声のシンフォニアの中で最も名曲だと言われることも多い曲です。
テンポはゆっくりに弾いても良い曲なので、聴いた感じではそれほど難しくないと思われるかもしれませんが、曲の性質を最大限に表現するのは容易ではありません。スケールの大きな演奏を目指してみましょう。(仕上げに少しだけペダルを入れてもいいでしょう。) ★★★★(3.5)
シンフォニア 10番 ト長調
活発な雰囲気の曲です。
内声部を右手と左手で受け渡すように弾く箇所がいくつかありますが、それをスムーズにできるように練習できればどちらかというと弾きやすい曲に入ると思います。 ★★★(3.4)
シンフォニア 11番 ト短調
15曲中で最もロマン的な香りがするのがこの11番でしょう。
全体的には弾きやすさもありますが当然のことながら声部が混乱してしまわないように、よく聴き分けする耳を持って弾きます。遅めでも少々速めのテンポでも流れとまとまりが良い曲なので、好きなテンポ設定で弾きましょう。(仕上げに少しだけペダルを入れてもいいでしょう。) ★★★★(3.5)
シンフォニア 12番 イ長調
細かい動きが多く活動的な曲です。
結果的に弾けてしまえば意外にもシンフォニアですが、楽譜をしっかりと読んで弾けるようになるまでに時間がかかるタイプの曲のようにも思います。例えば3小節目から左手で2声を受け持ちますが、休符をしっかり意識する必要があります。 ★★★★(3.6)
シンフォニア 13番 イ短調
静かな雰囲気を持っている曲です。
3声部を聴き取りやすい曲なので弾いていて混乱することはないと思いますが、指使いでは右手で上昇系の動きに、5指の次に4指という指使いを多用する必要があるので慣れないうちは少々弾きにくさを感じるかもしれません。(仕上げに少しだけペダルを入れてもいいでしょう。) ★★★★(3.5)
シンフォニア 14番 変ロ長調
平均律クラヴィーア曲集へとつながるような曲です。
テーマの音楽的な雰囲気とフーガらしく次々とメロディーが重なって奏されるなど、次の段階の平均律のフーガのような曲ですが、後半が難しさに対して前半から中盤までは比較的弾きやすいと思います。 ★★★★(3.6)
シンフォニア 15番 ロ短調
最も弾きやすいという人も多く、シンフォニアの入り口となることも多いのが15番でしょう。
困難な箇所は余り無いのですが、指使いはしっかりと確認して決めてから弾くのがコツです。少し早めのテンポで弾くことができると曲の感じが一層表しやすいでしょう。 ★★★(3.0)

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バッハ 平均律クラヴィーア曲集1 (市田編) (Zen−on piano library)
バッハ 平均律クラヴィーア曲集1 (市田編)

平均律クラヴィーア曲集は、通常は上にあげたインヴェンションとシンフォニアの30曲をきっちりと仕上げてから臨むのが良いとされていますが、趣味で弾く方はそれほど順序にこだわらなくても、弾きやすいくて良いと思うものから弾いてもいいでしょう。ここでは第1巻を取り上げます。
通常はプレリュードとフーガの両方で1曲という扱いになりますが、どちらか単独で弾いても楽しめます。一般的にプレリュードが弾きやすいでしょう。原典版1冊で学習するのは難しいので、できれば校訂者によるスラーやペダルが書き込まれている版や、1曲につき丁寧な解説などがついている版などと見比べるといいでしょう。(以下は「BWV」の作品番号は無くてもわかりやすいので省略しています)

第1番 プレリュード ハ長調
平均律クラヴィーア曲集の名前を知らない人でも、この1番のプレリュードは一度は聴いたことがあるでしょう。グノーが後にこのプレリュードを伴奏として、その上にメロディーをつけた「アベ マリア」を作曲して、そちらの方が有名でしょうか。
最後の3小節以外は、同じような音型の繰り返しになるので、譜読みをしやすいと思います。和声の変化を感じて気持ちよく弾きたい曲です。 ★★
第1番 フーガ ハ長調
プレリュードの弾きやすさと異なり、1番のフーガは4声なので、ちょっと抵抗感がある人も多いでしょう。
しかし、4声のフーガを勉強するのは、とても適した曲であり、それほど複雑でもないので、3声をしっかりと弾きこなせる人であれば、時間をかけて問題なく弾けると思います。テーマが埋もれないように弾きましょう。★★★★(3.4)
第2番 プレリュード ハ短調
現代の人の感覚に非常に合っているとされるプレリュードです。
速く弾いても遅く弾いても、それなりに聴こえる曲ですが、できれば少し軽快なテンポをとった方が、引き締まった演奏になりやすいように思います。指の練習にもなる曲です。 ★★★(2.6くらい)
第2番 フーガ ハ短調
平均律の3声フーガの中でも弾きやすく、シンフォニアを数曲弾いたことがあれば、問題なく弾ける曲です。
ただ、15小節目あたりから整理がつかなく弾いてしまう人もいるので、各声部の横の流れをしっかりとつかんで弾きましょう。 ★★★(3.4くらい)
第6番 プレリュード ニ短調
人気曲の6番が初めての平均律という人もいると思います。
このプレリュードはそれほど難しくはないのですが、曲の構成をしっかりと把握しないと、途中であいまいな演奏になってしまうので、気をつけたいところです。かっこいい曲なのでおすすめです。 ★★(2.3くらい)
第6番 フーガ ニ短調
3声フーガですが、多少難しい箇所があります。
中声部を左右のどちらの手で弾くのか迷うところがありますが、楽譜の版によって異なるので、いろいろと指使いを確認しながら弾いてみるなど、工夫してみましょう。 ★★★★(3.5くらい)
第10番 プレリュード ホ短調
10番はフーガよりもプレリュードの方が難しいという人もいます。
4声プレリュードですが、部分的には2声ですから、それほど困難でもないでしょう。ただしある程度の速さは必要です。 ★★★
第10番 フーガ ホ短調
珍しく2声フーガなので、このフーガなら弾けるという人も多いでしょう。
プレリュードと同様に、こちらもテンポは少し速めの方が弾き栄えがします。2声ですからとても簡単というわけでもありませんが、軽快に弾けるように練習してみましょう。 ★★★
第21番 プレリュード 変ロ長調
軽快なプレリュードです。
指をコロコロと動かして高速に弾くことができると、曲の感じを出しやすいでしょう。後半の和音は適度にアルペジオを取り入れて演奏すると、即興風のプレリュードの演奏になります。 ★★(2.2くらい)
第21番 フーガ 変ロ長調
3声フーガでは弾きやすい方に入るでしょう。
縦の線が揃っているので譜読みがしやすく、それほど複雑でもありませんが、テーマの弾きかたが崩れないように配慮が必要です。 ★★★★(3.5くらい)

こんな感じでいかがでしょう。難易度は様々ですが選曲の基準としては、弾きやすいものを優先しているつもりです(当然、個人によって感じ方は異なるとは思いますが)。

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選曲と演奏のポイント

バッハを始めるにあたっては、インヴェンションからバッハを始めるのか、それとも難易度的に少し前段階のメヌエットや小プレリュード達から弾き始めるのかは、これまでのピアノ経験や実力、好みによっても異なると思います。
バッハのような多声音楽をあまり弾いたことがないならば、簡単なメヌエットや小プレリュードを数曲弾いてからインヴェンションへ、初中級くらいの実力の方でも、さまざまな教本などで多声音楽を弾いてきた人はインヴェンションからでも良さそうです。

インヴェンションは最も弾きやすい4番から始める人が多いようです。そのあとは1番や8番といったところが弾きやすく、それから2番、3番、13番、14番、15番などを弾いていき、後は少ない番号から順次弾いていくといったパターンが、難易度を重視した進行としては取り組みやすいパターンの一つでしょうか。
これも考え方ですから、1番から順番に弾いていくのも良いでしょう。

ピアノをある程度は専門的に学習していこうと考えている人にとっては、インヴェンションとシンフォニアの30曲をしっかりと仕上げることは必須のように言われていますが、趣味のピアノでバッハを楽しんで弾こうと思う場合にはこだわる必要もないでしょう。例えば平均律第1巻の1番ハ長調のプレリュードなどは、初級教則本くらいの方でも弾いて楽しむことは十分に可能です。
ただし、2声の曲をしっかりと弾けたあとの、3声への挑戦というのがひとつのポイントにはなるので、他の作曲家に比べると、ある程度の段階を着実に昇っていくことが推奨されますし、中級以上のピアノ曲を目指す人にとっては30曲は全て弾きたいものです。

バッハの作品をピアノで弾くことについては、いろんな考えや議論もあるところだと思います。よく、「あの時代はチェンバロで弾いていて強弱はつけられないから、ピアノで弾いてもできるだけ強弱をつけない方が良いしテンポもメトロノームのように一定なのが良い。主観の入る余地はない」という人もいます。
それも1つの解釈でしょうが、バッハが音は非常に小さくても強弱の表現ができるクラヴィコードを好んでいたのはよく知られてます。またこの時代は作曲者=演奏者ということも多く、そのときどきによって装飾音を変えたり即興を入れたりと、かなり自由に演奏していたという解釈もありますから、まずは楽譜をしっかりと読んでみて、それから感じたように弾いてみましょう。

「バッハ自身が現代の表現力豊かなピアノで演奏したならば・・・」という想像を膨らませてみるのも良いと思います。


鑑賞に、参考に聴く

バッハの鍵盤作品をピアノ演奏で録音しているピアニストは、一般にも人気のモーツァルトやショパンなどに比較するとそれほど多いわけではありませんが、逆にバッハ演奏に自信がある人が録音しているとも言えそうです。
誰の演奏が良いのかというと、それは最後は好みですからなんとも言えませんが、数枚の名盤をあげてみます。
愛好者や学習者によく弾かれるインヴェンションの他にも、演奏会で弾かれる機会の多くを「ゴールドベルク変奏曲」を1枚あげておきます。

バッハ:インヴェンションとシンフォニア
バッハ:インヴェンションとシンフォニア
日本でバッハ弾きとして知られているシフやグールドほどの知名度はありませんが、以前からインヴェンションとシンフォニアが好きな愛好家やピアニスト、ピアノ指導者などの専門家の中でも評価が高いのが、このアマデウス・ウェーヴァージンケの弾くバッハです。
適度なフレーズの歌い方によってピアノで弾いていることの必然性さえ感じさせるような演奏で、特にシンフォニアの演奏は他の追随を許さないほどの出来と言ってもいいでしょう。
学習者はもちろんのこと、指導者にもぜひ聴いて欲しい1枚です。
バッハ:インヴェンションとシンフォニア
バッハ:インヴェンションとシンフォニア
現代のバッハ弾きとして日本で最も有名なのはシフではないでしょうか。バッハの多くの鍵盤作品を録音していて、そのどれもが高い評価を得ています。
このインヴェンションの録音はシフが若い頃に来日した時のもの。フレーズを大切にしながらの微妙な表現にも気を配っていて好感の持てる演奏ですので、インヴェンションのCDをどれか1枚と考えている方にも良い1枚と言えるでしょう。
バッハ:ゴールドベルク変奏曲
バッハ:ゴールドベルク変奏曲
シュタットフェルト
バッハ演奏で非常に注目されている若手ピアニストのマルティン・シュタットフェルトです。
日本に来日したリサイタルでも話題になったシュタットフェルトの「ゴールドベルク」は、オクターブを変えて演奏するなど随所に彼独自の工夫と、活き活きとした演奏が特色です。バッハの音楽が現代にも生きているということを教えてくれるような快演に感じます。
グールド神話に対抗できる久々のバッハ弾きとの評価もあるでしょう。

バッハに対する素朴な疑問

よく言われていることに関して、ちょっと考えてみましょう。

やっぱり史上最高の作曲家?

バッハの顔2

現代の研究では、ますますその作品価値が高められていく巨匠バッハですが、やはり史上最大の作曲家なのでしょうか。
バッハは、生前から名を知られていた作曲家で鍵盤楽器奏者でしたが、大作曲家という地位では無かったことは有名です。当時のドイツではバッハよりも巨匠とされる作曲家が複数いました。
また、バッハの作品は全く独自の世界で、他の作曲家とは全く異なるという専門家もたくさんいますが、バッハも若い頃は他人の影響を多く受けており、中でもブクステフーデの影響がかなり強いとされているのは有名です。西洋の音楽史はバッハから始まったように語られることも多いようですが、何もないところにバッハが突然表れたわけではなく、当然のように先人はたくさんいました。

また、後世の作曲家に多くの影響を与えたものの、その作品はバッハの死後しばらくは、演奏機会があまり多くは無く、メンデルスゾーンが自国の大作曲家として大々的に取り上げ始めたことは、よく知られています。

曲について

バッハがクラシック音楽の中でも最も重要な作曲家のひとりであること疑いのないことだとは思いますが、現在でも人気があるのかということではどうでしょうか。

バッハの代表的な鍵盤音楽作品の「平均律クラヴィーア曲集」は、時には「旧約聖書」と呼ばれるほどの偉大な作品ですが、実際の録音数やリサイタルなどの演奏会での登場回数は、必ずしも多くはありません。ロマン派以降のピアノを鳴らす華やかな作品が無数にある現在では、それと比較すると複雑で地味にも聴こえるバッハは、必ずしも人気があるとは言えない状況です。

そして、バッハの音楽はどうしても「難しい」というイメージが先行してしまいがちです。研究が盛んであり、インベンションのような短い曲にも解釈的な説明が多いという印象ばかりが先行してしまっていることが、バッハを一般の聴衆から近くないものにしている原因かもしれません。
また、フーガやプレリュードといった特定の様式の作品を多数残したせいもあり、少し聴いただけではどの作品も似たような印象を受けてしまうことは否めません。

しかし、最近の古楽器を使った演奏の普及や、若手ピアニストがバッハを弾く機会などの増加により、新鮮味のある演奏も増えています。モーツァルトほどではないものの、脚光を浴びつつあるのも確かです。

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