中級程度の人が挑戦するのにちょうどいい、ロマン派の人気曲といえば、このチャイコフスキーの舟歌ではないでしょうか。
歌心とテクニックの両方が必要なので、ちょっと難しいかもしれませんが、弾けたら間違いなくかっこいい!です。
四季より6月「舟歌」 June Barcarolle チャイコフスキー Tschaikowsky
全体は大まかに3つの部分から構成されています。技術的に少し大変と感じるのは、2つ目の部分でしょうが、そのほかにもチェックしたいポイントがありそうです。
初めから何度も出てくる主題(譜例1)ですが、普通の楽譜には結構細かくクレッシェンドとでデクレッシェンドがついています。メロディーに表情をつけるためですが、この大きくなる、小さくなるというのを、どのくらいやるかは、奏者にまかされています。
ほとんど表情をつけないで、通り過ぎるように弾いているピアニストもいますが、それではちょっと味気ないですね。でも、指定どおりの表情をやりすぎても、洗練さが無くなってしまうので、ほどほどが大事です。
この曲は左手にも対旋律のような箇所が多く、重要な役割をしています。
この譜例2のように、右と左の指が交差する箇所で、上段と下段を無視して、右と左の一部分を取り替えて弾く人がいますが、楽譜どおりに上段は右手で下段は左手で弾いた方が、横の流れを意識できます。
耳で4声の横の流れを感じ取って、意識できるようにしましょう。
譜例3のあたりから、曲が展開していきますね。
ここでは、右と左が交互に弾くような感じの和音です。特に難所でもないようですが、ペダルの踏み方にはコツがありますよ。
ここでは、左手の和音が変化するときに、ペダルを踏み換えましょう。音が濁らないように注意して踏めば、楽譜に指定されている箇所よりも、多くの箇所でペダルを入れてもいいです。
そして、4分の3になったところの譜例4からが、華麗なひとつの見せ場です。
特別難しいこともありませんが、テンポが幾分速くなるので、しっかりと和音をつかんで、音を外さないように弾きたいものです。
また、スタッカートがついていますが、あまり短く切ってしまうと、音楽の勢いが失われてしまうので、「パッ・ザッ」といった感じで、余韻ありのスタッカートにすると、良い感じだと思います。
華麗に盛り上がるいう点では、譜例5のこの箇所が、一番の見せ場です。
プロの演奏をCDなどで聴いて「こんな風には弾けないよ〜」なんて思うかもしれませんが、実は意外と簡単ですから、そんなに恐れる必要もありません。
基本的には、同じ和音の転回系ですから、覚えるのはすぐにできますね。
下の音からの分散ですが、弾くときのコツは、一番下の音(左手の小指)か、一番上の音(右手の小指)の、どちらかにアクセントをつけるようにすることです。そして、流れが途切れないように、一気に上り詰めましょう!
このあとは、初めに出てきた主題がまたでてきますね。
ん?でも、ちょっと違います。譜例6のように、左手に今度は対旋律のようなものが、多くでてきます。これをどんな感じで弾くかが、演奏者の力量が見えるところ。
情感たっぷりに弾いてもいいのですが、おだやかな語りかけのように弾いても、効果はありますよ。いろいろと左手の表情につけ方を、試してみてください。
いかがでしょうか。ロマン的なチャイコフスキーを「さすが!」って感じで弾いているピアニストって、意外にも少ないんですよね。名演奏に出会ったらラッキーですよ。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。