中級者から中上級のレパートリー曲や発表会曲として人気のシューマン「幻想小曲集」より「飛翔」を取り上げてみましょう。
「飛翔」 Aufschwum シューマン Shumann
ピアノのレッスンでは定番とも言える曲ですが、ポイントをチェックしていきましょう。
この曲は冒頭から出てくるテーマのメロディーを、左右どちらの手が弾くと良いのか迷う方もいるでしょう(譜例01)
市販されている楽譜は版によって「1・1・・」と1指を連続で書いてありますが、それは右手のみで弾くことを意味しています。
しかし、手が大きくないと右手のみで弾くのは現実的に無理がありますので、右手のみで余裕で弾ける人以外は譜例01の濃い桜色の○で囲んだところを左手で弾くといいでしょう。(ソ・ファから右手で弾いてもいいでしょう)
この箇所はわかりやすいとは思いますがメロディーラインの音は四分音符と八分音符になっているので(濃い桜色の箇所)、十六分音符と区別をつけて弾けましょう(譜例02)。
区別すると言っても極端に違いすぎるとメロディーの間に細かい音符が入っているからこその歌心のあるクレッシェンドや一体感のある流れを感じられなくなってしまうので、ほどよいブレンド感は必要です。
左手にメロディーがきています(濃い桜色の箇所)ので、少し浮き立たせるように歌って弾きましょう(譜例03)
しかし、右手にもスタッカートで表されいる音符が内声で少し聴こえて欲しいメロディーのラインをつくっていますので、それも意識できるようになってくるとシューマンの面白さがでてくるでしょう。
このあたりから展開部といった感じでしょう。それまでと異なり少し穏やかな流れになってくるところですから、雰囲気の違いを出していきましょう(譜例04)。
このあたりからシューマンらしさが全開といったとこです(譜例05)。
右手にメロディーラインがある(濃い桜色のところ)のですが、他の声部のスケール状の流れや付点四分音符の横のラインもそれぞれ大事に弾きたいところです。
譜例05のあたりからシューマンらしさが全開ですが、この譜例06のあたりが最もシューマンらしい箇所のように思います。
このパターンが数回連続しますがスタッカートのところの遊び心のような箇所から直後のアルペッジョの下降系につながるところが、シューマンらしい気まぐれな感じ、いたずらっぽいような雰囲気をつくっています。
このあたりの表現を演奏者が感性を持って弾いているどうかが、飛翔の仕上がりの完成度に影響してくるでしょう。
このあたりから再現部といった感じです。
冒頭と同じテーマのメロディーが出てくるので、また左手を使いたいところですが、この箇所は左手も音を弾いているのでこの箇所のみ右手で弾くしか方法がありません(譜例07)。
しかし、右手のみで楽譜に書かれている音全てを弾くことは手が大きくないと無理ですから、届かない場合の方法を考えましょう。
1つはアルペッジョにして書かれている音符を全て弾く方法で、和音として届かない場合に一般的な方法ですがこの箇所の音を全て弾くためにアルペッジョにすることは少し難しく感じるかもしれません。
もう1つは、譜例07の濃い桃色の四角で囲んだ箇所の音符(レ♭)を省略する方法です。
届かない場合にはどの音符を省略するのか迷うかもしれませんが、この場合は内声にあるメロディーラインを音(シ♭・ド)を省略するわけにはいかないので、思い切って最上声部の音を省略する方法をやってみるのも1つの方法で、次の小節の1拍目は届くので弾いて、また届かない音は省略します。
このような箇所の勢いと音量が必要が箇所では一瞬のことなので、演奏者が思っているほど省略は気にならないかもしれません。
華やかに、でも声部も意識して
飛翔はシューマンのピアノ小品の中では外向けの華やかさもあるとても人気のある曲ですので、中級以上の実力がついてきたらぜひとも挑戦したい曲です。
しかしシューマン独特の複数の声部の同時進行や気まぐれさや遊び心的なところなども上手く表現する必要があるので、実は結構難しい曲です。
もし、飛翔を発表会などで弾くことになったのに、それまでシューマンをほとんど弾いたことが無い場合には、シューマンの他のとても短い小品(「子どもの情景」や「森の情景」などから)を数曲弾いてから挑戦してみると、楽譜の読みやすく感覚的にもつかみやすいでしょう。