中級から中上級くらいのレパートリー曲や発表会曲として人気のリストの「愛の夢 第3番」を取り上げてみましょう。
「愛の夢 第3番」 Liebestraum Nr.3 リスト Liszt
ピアノのレッスンでも定番で耳にする機会も多い曲ですが、ポイントをチェックしていきましょう。
● 譜例の青い数字は「小節」を、紫と濃緑の数字は参考指使いを示しています。
冒頭(譜例01)からのテーマが、後から形を変えて何度も出てきますが、最初がやはり肝心ですから優美に印象深く弾きたいものです。
そのためには、同じ音が3つ続くことの注目(青い丸印)。この音の間のとり方や音の大きさをどのように弾くと、聴いている側に自然に語りかけるような歌い方ができるでしょうか。
1音づつ大きくなるような方法もあるかもしれませんし、3つ目の音をやや抑え気味にするのもいいでしょう。
歌い方としては、2つ目と3つ目の音の間に、幾分ためらいがちな間があるような方法もいいですし、逆に少しだけ速くなるような感じでもいいでしょう。もちろん淡々と弾くのも方法の一つです。
24小節目終わりからの流れで、25小節目から(譜例02)細かい動きでの上昇と下降の形がありますが、ここはそれほど速く弾く必要はありません。
むしろ、この後からが盛り上がる部分ですから、そこへの導入のつもりで優しく弾くくらいでもいいでしょう。フラットの見落としに注意します。
26小節目(譜例03)からは調も変わって少し動きも多くなります。臨時記号のダブルシャープなどに注意して譜読みをしましょう。
8分音符はガチガチと硬くならずに、流れ良く弾いて全体的に前へ進むよう感じで。
さあやってきました。この38小節目(譜例04)からが、この「愛の夢第3番」の一番の盛り上がるところです。
まず左手の下降系アルペジオに注目。これをあまり強く一生懸命に弾くと、マシンガンのようにダダダダダダとした演奏に聴こえるのでここでも流れを重視。
右手は音の数が多い和音が続きますが、腕にガチガチな力が入らないように楽に鍵盤の上に腕をのせてみましょう。
最高潮の後の細かい音符がありますが、ここは前半の終わりとは違って幾分高速に弾くほうが効果があると思います。それほど難しい音形ではないですから、少し速めに弾くことに挑戦してみましょう。
60小節目(譜例05)からは、またゆったりとした雰囲気になりますが、実はここが最大の聴かせどころだともいえます
メロディーをきれいに弾くことはもちろんですが、青い四角で印をつけた2つの和音を心地よい響きで弾くことができれば素晴らしい雰囲気をつくれるでしょう。
75小節目(譜例06)からの締めくくりも大事です。
まるで今までの「愛の夢」の歌を回想するかのような感じで、丁寧に、でも響きを持って弾くと良いと思います。
リストの演奏効果
リストは大曲から小品までたくさんのピアノ曲を残していますが、そのどれもに共通するのはピアノ曲としての演奏効果が非常に高いということでしょう。
一般のピアノ愛好家でも挑戦できる「愛の夢 第3番」も、じっくり仕上げることができればステージでもきっと注目されるので、中級者以上の方はぜひ弾いていただきたいと思います。
いかがでしょうか。この「愛の夢」くらいがしっかり弾けると、上級くらいの曲への挑戦もできるくらいの実力がついてきたと言えるでしょうから、ぜひレパートリーに加えてください。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。