初中級者のレパートリー曲や発表会曲として人気のランゲ「花の歌」を取り上げてみましょう。
「花の歌」 Flower song ランゲ Lange
ピアノのレッスンでは定番とも言える曲ですが、ポイントをチェックしていきましょう。
● 譜例の青い数字は「小節」を、紫と濃緑の数字は参考指使いを示しています。
冒頭(譜例01)からのテーマを優雅に弾きたいものですが、ポイントは左手の3連符を含む形で繰り返される流れです。
オクターブで和音を弾いてから、すぐに次の音へと移動することがこの「花の歌」を弾くくらいの初中級くらいの実力の方にとっては結構難しいと思います。
あわてて次の音へ行こうと思うとオクターブの和音も浅くなるので、ここはオクターブの音は強拍なので少々長くなっても良いくらいの気持ちで、ゆとりを持って次の音への移動をした方がいいでしょう。
曲想が変わる9小節目(譜例02)からは、少し速めのテンポで弾くくらいが一層感じがでるでしょう。当然ですがメロディーが良く聴こえるように。内声の和音は重たくなりすぎないように弾きます。
また、2小節の中でテンポを少し遅くから速めに揺らすように弾くのも方法の一つですし、rall の後の a temp でも、すぐに元のテンポではなく、徐々に戻すように弾くのもいいでしょう。
12小節目(譜例03)の青い丸印をつけたオクターブで下降音階は、どのように弾くと良いでしょうか。
5つの音符それぞれにペダルを踏み変えて入れてもいいですし、楽譜によってはシまで前の音符からのペダルの続き、「ラソ」・「ファミ」でそれぞれペダルを入れるという表記もあります。
また、このスラーをレガートではなく、まとまりのフレージングを考えて、ペダルなしでパッパッパッパッパッと弾いても曲想に合っているでしょう。
27小節目(譜例04)からはこの曲の盛り上がる聴かせどころですから、たっぷりと歌う気持ちで弾きましょう。
右手オクターブのメロディーは、指を開くことに力を入れすぎると打鍵のスピードまで鈍くなってしまう方もいるので注意したいところです。リラックスした手でしっかりと弾いてみましょう。
途中になる rall では少々遅くしますが、rit よりは遅くしないのが一般的ですし、あまりやりすぎると狙いすぎた演奏のようになってわざとらしくなります。後からもう一度 rall がありますから、ためたような効果で演奏したい方は、後の方の rall でやるといいのではないでしょうか。
42〜43小節目(譜例05)にかけての、連続アルペジオは最大に盛り上がる箇所ですから、一番下の音から豪快なアルペジオで弾きましょう。
dim もありますが、ずっと盛り上がって行ってフェルマータの音で最高潮になっても良いくらいです。
54小節目(譜例06)からのアルペジオは、「ハープのように」との指示があるように、華麗にポロロンとするようなアルペジオで弾きましょう。
手が小さい方は、手首をやわらかくした横への移動を適度に使って弾くと、うまく弾けると思います。
初中級曲でも豪華に
発表会などの曲として、子供から大人まで人気の重要な初中級レパートリーの「花の歌」ですが、録音物のプロのピアニストの演奏では、途中2回あるカデンツァのような細かい音符、rallやritやアルペジオをあっさりと弾いて通り過ぎるような演奏が多いと思います。
しかし、そうしたあっさりとした演奏よりも、表情をしっかりつけるところは豪華に弾いたほうが、この曲らしさは表現できると思います。
いかがでしょうか。この「花の歌」くらいがしっかり弾けると、中級くらいの曲への挑戦もできるくらいの実力がついてきたと言えるでしょうから、ぜひレパートリーに加えてください。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。