各出版社のソナチネアルバムの中に収録されている有名なクーラウのソナチネの1楽章です。
ソナチネ1番より1楽章 Sonatine Op.20 No.1 (1mov) クーラウ Kuhlau
シンプルな曲ですが、指をある程度は動かす必要がありますし、いくつかのポイントもありそうです。
● 譜例の青い数字は「小節」を、紫と濃緑の数字は参考指使いを示しています。
冒頭からのテーマが重要なのは当然ですが、多くの方の演奏で気になるのは左手の伴奏の型(アルベルティバスと言われる)です(譜例01)。
ここでは、5指のドに比べて、ソ・ミ・ソは弱いのですが、ソが意図しないのに大きくなっている方が多いものです。
それを防いできれいなアルベルティバスにするためにも、1拍目と3拍目の頭の音のドに重心があるようなつもりで、幾分長めに弾くような心がけをしてみます。
8小節目の終わりから(譜例02)は、左手にメロディーが現れますが、これは冒頭のテーマから引き続く要素で重要ですから、右手よりも大きくしっかり弾きましょう。
このソナチネに挑戦するくらいの方にとって、おそらくこの24小節目からの音階系の上昇と下降の連続(譜例03)が一つの難所だと思われます。
指使いは、おそらくどの版でもこのような音階の標準に準じたものになっていて、それが練習のためでもあるので、このとおりにやってみましょう。
fで弾くこの48小節目(譜例04)が、意外に苦労される方が多いようです。
ここでは手首に力を入れずに、上昇と下降の動きに合わせて軽く手首が左右に振れるような感覚で弾くようにすると、無理なく弾けると思いますので練習してみましょう。
また、この時1拍目と3拍目にアクセントをつけるようなつもりで弾くと、fを出しやすいでしょう。
ソナチネ
ソナチネとは、簡単に言うとソナタの簡素なものです。
ソナタはソナタ形式の楽章を含む、多楽章からなる楽曲ですが、それはソナチネも基本的に同じであり、技術的に簡単であるという意味ではありません。
ただし、古典期のクーラウやクレメンティのソナチネは、やはりソナタよりも幾分技術的に簡単なので、現実的にはモーツァルトやハイドン、ベートーベンのソナタを弾く前の段階の学習に用いられていて、それらの数人の作曲家のソナチネを集めて収録したのがソナチネアルバムということになります。
いかがでしょうか。クーラウのソナチネは簡素なつくりですが、技術的に練習になる箇所はたくさんある曲ですから、しっかりと弾くことによってソナタへの準備にもなるでしょう。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。