ドビュッシーを楽しむのに最適な1曲、ベルガマスク組曲より「月の光」を取り上げてみていきましょう。
尚、近代フランス物の版選びでドビュッシーの楽譜の選択にも触れています。
ベルがマスク組曲より「月の光」 Clair de lune ドビュッシー Debussy
響きには常に配慮が必要な曲ですので、ポイントをチェックしていきましょう。
● 譜例の青い数字は「小節」を、紫と濃緑の数字は参考指使いを示しています。
冒頭(譜例01)からppで、con sordnina と書かれているので、シフトペダル(左ペダル、ソフトペダル)を使用して弾きますが、ピアノの個性によって、またピアノの設置場所などの環境そして好みによって、シフトペダルを使用するのかは演奏者の判断ですから、響きを聴いて判断しましょう。
また、ダンパーペダル(右ペダル)の深さにも気をつけます。
8分の9拍子は、1小節を3拍子に感じて弾くのですが、8分音符の2連符があるなどテンポ感が崩れやすいので注意しましょう。
始めの練習段階ではリズムとテンポ感をしっかりと把握するために、8分音符をさらに2つに分けた16分音符を単位に数えて弾くと拍が乱れないので試してみてください。慣れたら1小節を3拍のように感じて弾きます。
15小節目(譜例02)から、tempo rubato の表示がありますから、ある程度揺れた自由なテンポで弾いていきます。
しかし、自由な揺れたテンポというのは、拍を全く無視してしまうことではありませんので、8分の9拍子は感じながらの自由なテンポのことです。
音の数が多い和音を、きれいに響かせることが重要です。低音の付点2分音符に、上の和音がうまくブレンドされたような感じで、そして最上音を少し出すようなバランスにしてみると良いでしょうか。これも最終的には演奏者の耳の判断です。
27小節目(譜例03)から動きが少し多くなりますが、16分音符の流れを大事に。
そして、青い丸印をつけた音の流れも大事に感じて、幾分大きめにするような気持ちで弾くといいでしょう。
41小節目(譜例04)の少し前からは、この曲中一番の輝かしい箇所ですから、輝くような光る音を出すつもりで弾きましょう。
3度の進行は、上の音がより聴こえるように、外側の指に力がかかるような感じで。
51小節目(譜例05)から、tempo Iですから最初と同じテンポです。pppでピアノが3つもあるので、その雰囲気を大切に演奏しますが、だらだらと遅くなってしまっては流れが途切れてしまいます。
テンポはしっかり感じてください。
59小節目(譜例06)に、アクセントがついた音があります(青い丸印)。このアクセントはどのような感じで弾けば良いのでしょうか。
アクセントですが、ppの中でのアクセントですから、他の音よりは幾分強調して、ここから終わりへ向かう導入の役割のように弾いてみてはいかがでしょう。
ピアニストでもこの音をかなり強調している演奏、ほとんど強調していない演奏などいろいろです。
ドビュッシーのペダル
この「月の光」はもちろんですが、ドビュッシーのピアノ曲はどの曲でもペダルの使い方がとても重要です。たくさんの音が同時に鳴っている時でも、ペダルの深さやタイミング、頻度などを変えて、響きをつくりだす作業は難しくもあり楽しさもあります。
まずは、お手持ちの楽譜のペダル指定を参考に、ペダルを踏む深さで調節してみてください。
いかがでしょうか。ドビュッシーは譜読みが大変だという声もあり、この「月の光」も最初はとまどう方もいるかもしれませんが、それほど困難なテクニックはありませんので、ぜひレパートリーに加えてください。
もちろん、これ以外にもチェックポイントはありますし、ここにあげたことが正しいわけではありません。あくまでひとつの例だと思って、活用してください。